表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

170/648

170【ヘッジホッグ】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


少し長いため、3話連続投稿します(1話目)

 さらに翌日。外を確認すると、降ってはいるが、視界は良好だ。

 索敵してみる。詳細情報を見ると、全員、無事だ。

「大丈夫だったみたいだな」

「サブの索敵か。なら今日にでも帰ってくるじゃろう」

「うん」

 これを聞いて、セバスさんとヤルダさんがホッとする。

「動き出したら、知らせるから。そしたら帰宅したときのための準備をしよう」

 その場にいる全員がうなずく。


 一時間ごとに索敵してみる。

 もうすぐお昼というところで、ようやく動きが。でもなんでこんな時間まで、動かなかったんだ?

 あれ? 動いた、と思ったら、止まった? 動かない?

 詳細情報を見る。これはハルキか。ん? 状態異常? 毒!?

 もしかして、と全員の詳細を見る。同じだ。

 まずい。すぐさま行かなきゃ。

「彼らが状態異常になってる」

「何!?」

「とにかく、向かう」

 オレは、防寒着とゴーグルを装着。

 ウーちゃんが服を脱いでいる。

「ウーちゃん?」

「儂も行く。ラキエルも」

 いた方がいいか? オレの逡巡はすぐに決定に変わった。

「よし、行こう。セバスさん、みんなの受け入れ体制をお願いします。なぜか毒にやられているらしい。応急処置はしますが、体調がすぐに戻るとは思えません」

「お任せください」

「頼みます」

 ウーちゃんが通れるように、玄関ドアを開く。

 ウーちゃんが通り抜けざまにケルピー化する。

 外にはすでにラキエルの姿が。

 運動場前には、ユキオウが、いつでも走り出す体制にいた。

『ユキオウは、ここにいて、屋敷を守って』

『わかった』と力を抜くユキオウ。

 ウーちゃんが、乗れ、と言ってくる。

 オレは躊躇(ためら)わずに乗った。浮遊しないと、乗れないんだけどね。

 ウーちゃんの背中に収まると、すぐに身体が吸い付けられた。ケルピーの能力か。

『最短距離で行くぞ。方向を指示するのじゃ』

 最短距離? ありがたいけど。

『どうした? 指示せんか!』

「方向でいいの?」

『そうじゃ』

「なら、あっち」と指差す。

 ウーちゃんが飛び上がる。まるでジェットコースターで登っていくような感じ。慌てて、ゴーグルをして、ウーちゃんにしがみつく。

 ラキエルはどうしただろう、と思ったのは、もう空を走っていたときだった。そう、空中を走っていたのだ。高さ五メートルくらいか。振り返ると、後ろからラキエルが付いてきている。


 しかし、毒にやられたなら、毒消しポーションを使えばいいのに、なぜ使わない?

 しかも、なぜ全員が同じ状態なんだ?

 そういった疑問が頭を走るが、振り払う。今はそれどころじゃない。

 毒消しポーションは、オレもアイテムボックスに入れてある。大量に作って、みんなにも渡している。それなのに……

 もしかして魔獣か?

 オレはすぐさま、条件を変更して、索敵開始。反応あり。みんなの近くだ。

 魔獣の詳細情報を出す。

『ウーちゃん、“パラリシスポイズンヘッジホッグ”って知ってる?』

『アレにやられたのか?』

『みたい』

『アレの近くに寄ると、針が飛んでくる。アレの針に刺されると、身体が麻痺する毒が入ってくる。多くの魔獣が身動きできなくされてきた。だが、アレ自体は身を守るために針を使うだけじゃ。それでもかなりの時間、動けなくなる。だから、そのあいだに、ほかの魔獣にやられてしまうのじゃ。では、もう逃げたあとか?』

『いや、まだ、そばにいる』

『いかんな。近くに寄れば、今度はこちらがやられるぞ』

『大丈夫。なんとかする』


 広場上空に到着。

 白い雪の中に、ポツンと黒いものが見えた。索敵の位置からして、ダルトンたちのキャンプ地だ。外にひとり倒れている。ハルキだ。なんとかそこまで逃げたのだろう。

 パラリシスポイズンヘッジホッグらしき姿はない。索敵によると、どうやらキャンプに潜り込んでいるようだ。

 まず、ハルキのそばに降りる。浮遊しながらハルキのそばに行く。

 毒で倒れているのが、わかっているので、仰向けにして起こし、毒消しポーションを口に含ませる。ハルキのノドがゴクリッと音を立てた。

 まぶたを開くハルキ。

「サブ、さん」

「もう大丈夫だ」

「ハリ、ネズミ」

「ヘッジホッグだから、そんなヤツか。わかった。大きさは?」

「バス、ケット、ボール」

「そんなには大きくはないか。わかった。休んでろ」

 毛布を出して、巻いてやり、雪の上に横たえる。

 念のために、結界を張る。


 問題は、どうするか、だ。

 生け捕るか、殺すか、で方法が変わる。

 だが、状況的に雷爆弾・静は難しい。ヘタをすると、まわりのみんなを巻き込んでしまう。

 とりあえず、みんなの救出か。

 魔導具をひとつ、手にする。

 キャンプの中に入ると、倒れている五人の姿を確認。

 撤退前の慌ただしさの中を襲われたらしい。荷物の片付けが中途半端だ。

 いた。

 こちらに黒い背中を見せている。

 モゴモゴしていることから考えて、何かを食べているらしい。

 魔導具の設定を半径一メートルにして、短時間で起動するようにスイッチを押す。それからヘッジホッグのそばに落とす。

 すぐに反応するヘッジホッグ。

 だが、そこで魔導具が機能を発揮する。

 と同時にヘッジホッグが針を打ち出した。

 しかし、半径一メートルのところで、跳ね返される針。

 そう、この魔導具は、獲物を内側に閉じ込める結界を張るものだ。

 もともとヘッジホッグは、防御のために針を持っているが、動作が緩慢なために逃げ出すのが難しい。だから、相手に針を打ち込み、相手が麻痺しているあいだに、逃げるのだ。


 何を食べていたのかと覗いてみたら、携帯用固形糧食だった。木の実や乾燥果物を蜜なんかで固めたものだ。マナミが作っていた。


 ヘッジホッグは放っておき、五人のところへ。

 ウーちゃんが入ってきた。

「どうじゃ?」

「捕まえた。ウーちゃん、裸じゃない。寒いでしょ。はい、防寒着。ちょっと手伝って」

 オレがアイテムボックスから出した防寒着を着込むウーちゃん。それからオレの指示で、キヨミとマナミの手当てをする。

 オレもダルトンとランドルフとエイジの手当て。

 まぁ、手当てといっても、毒消しポーションを飲ませて、毛布を巻くだけだ。身体が少し動けるようになったら、そこで栄養ポーションを飲ませるつもり。これは一種のスープだ。少なくとも飲んだ感じは。

『ラキエル、ハルキはどうだ?』

『モゾモゾしてる』

『わかった』「ウーちゃん、そっちはどう?」

「片言で言葉を発する程度には回復しておる」

「ハルキを見てくる」

 ハルキのところへ行くと、毛布から出て、上半身を持ち上げていた。

「どうだ、ハルキ?」

「気持ち悪いです」

 栄養ポーションを飲ませる。

「吐くなよ」

「大丈夫、です」我慢している。

「おまえが動いてくれてよかったよ。動かなかったら、もう一日は気付かなかった」

「それを聞いて、安心しました。みんなは?」

「大丈夫。まだ片言だが、話し出しているから」

「よかった」ホッとしている。

「もう少し大人しくな。あっちを見てくるから」

「はい」

 オレはスタスタとキャンプに向かう。

「サブさん!」

 ハルキの叫びに振り返る。

「どうして、雪の上を歩けるんですか?」

 ん? あぁ、無意識に雪歩きしてたわ。

「ユキオウに教えてもらったんだ。その話はあとでな」

 笑んで手を振ると、キャンプへと向かう。


※パラリシスポイズンヘッジホッグ

  独自魔獣。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価をお願いします。励みになりますので(汗)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ