168【ジャイアントディアーの買い取り】
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少し長いため、3話ではなく2話連続投稿します(1話目)
翌日。いつものように、運動場のようすを見ると、ニオイが……
ユキオウたちのところには、ジャイアントディアーの残骸が放置されている。主に内臓を食べただけのようだ。
『これは食べるの?』
『オレたちはすでに食べた。それはいらない』
エエエッ、せっかくのお肉を食べないの?
『肉だって、食べられるでしょ?』
『肉は、スジが多いのよ』とあまりよく思っていないセツカ。
『そう? ラキエル、おまえは?』
『新鮮なものなら食べる』
『食べないのね。はいはい』
オレは収納した。
『また狩るのか?』
『欲しいが、我慢する。ひと冬に一度だけと決められている』
『へぇ、そんな決まり事があるんだ』
『大事なことだ。毎年食べたいならば、と教えられた』
『そうか。それだけ個体数が少ないんだろうな』
『うむ。少ない。だから、母親と子どもは襲わない食べない。これは大事』
『そうだな。大事だ』
しかし、このジャイアントディアー、どうしようか? 冒険者ギルドに持っていってみるか。
「ちょっと買い取り可能か、見てもらえませんか?」と女性スタッフさんに相談。
「また狩りに?」
「いえ、昨日のジャイアントディアーなんですけどね。ウチの従魔、内臓だけ食べて、肉には手をつけなかったんですよ」
「あぁ、一番美味しいところだけ食べたのですね」と笑み。
「はい。それでも大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だと思います。解体が雑な冒険者よりはきれいだと思いますので。もちろん、見てみませんと、程度がわかりませんけど」
で、解体場で解体スタッフに見てもらったところ……
「おう、きれいなもんだ。爪痕が小さな穴になってるが、冒険者よりは程度がいい。鮮度も上々。頭なんか剥製にしてハンティングトロフィーにすれば、貴族が結構いい値段で買ってくれるさ。肉だって、喰えねぇもんでもねぇ。まぁ、スジが多いのは確かだがな。査定には時間をくれ。それともすぐに金が必要か?」
ハンティングトロフィーというのは、お金持ちの屋敷にあるような動物の頭だけの剥製のことだ。狩猟を趣味とする人が自分の狩った動物の頭をトロフィーのように飾るので、こういう名前になった。これを目的にする狩猟をトロフィーハンティングという。
オレ的には、好きではあるが、わざわざこれのために狩りをする気にはならない。また、これを購入するのもヤダ。購入すれば、売れると考えて、狩り尽くす勢いで狩りをする者も出てくるからだ。そうして、絶滅させるのだ。基本、狩りは食べるため、生き残るため、だ。
「いえ。査定したらそのまま買い取りでお願いします。いくらでも構わないので。口座に入金してもらえれば、いいです」
「わかりました」
女性スタッフさんが、預かりの手続きをしてくれる。
帰りに商業ギルドに寄る。口座の確認だ。
帰ろうとすると、声をかけられた。ギルマスがお呼び、とか。
ギルマス執務室へ。
「何か、ご用で?」
「まぁ、お座りください」
お互いにソファーに座る。
「昨日の話は伺いました。アーマードベアとジャイアントディアーを狩られた、とか」
「ええ。アーマードベアは昨日、冒険者ギルドに出しました。ジャイアントディアーもさきほど、食べ残しですが、出しました」
「まぁ、ジャイアントディアーまで」と驚いている。
「査定が終わったら、そのまま買い取りをお願いしました」
「状態はどうだと?」
「いいみたいですよ。ハンティングトロフィーを作ったら、貴族に売れるだろう、と」
「それを購入しても構いませんか?」
「どうぞ。冒険者ギルドと折衝してもらえれば、オレは構いませんよ」
「ありがとうございます」
彼女は、スタッフを呼んで指示を出す。
「実は以前から、欲しがっていた方がおりまして」
「なるほど。構いませんよ。毛皮で敷物ですか? それとも革鎧にでも?」
「さすがに用途までは。ですが、トロフィーにはしないと思います」
「まぁ、いいです。人に迷惑をかけるものでなければ」
「その点は大丈夫かと。その方は、薬師様ですので」
「薬師? そんなに儲かる仕事なんですか?」
「一般の薬師ですと、それほどは。ですが、こちらの薬師様ですと、上位冒険者から特別注文を受けたりしていますので、それなりに稼いでおられます」
「そんな人がいるんですね。了解です」
あといくつかの質問を受けて、お暇した。
帰りは、せっかくだ、と思って、雪歩きを実践して帰った。
帰り着いたときには、ヘトヘトだった。でもそのおかげで、雪歩きを覚えられた。あとは何度もやって慣れるだけだ。
すぐにお風呂に入り、汗を流す。
お遊びで、湯船の湯面に立ってみる。立てた。バランスに注意が必要だが。
ちゃんと湯船に浸かる。
フウッと力が抜けていく。
このお湯、本当に効能ないのかな?
まぁ、リラックス効果はあるな。
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