164【モフモフ、雪中訓練、ミシン】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
少し長いため、3話ではなく2話連続投稿します(1話目)
翌朝。雪が降っている。本格的な降りではないので、心配ないだろう。
朝食後に《探索の神獣》が、ユキオウたちを見たい、と言ってきた。
これから人間を連れていく、と三匹に念話してから、運動場に。
運動場に入ると、すでに明かりが灯されていた。最近は、ラキエルが魔法で照明を点けたり消したりしてくれている。
《探索の神獣》のみんなが運動場をキョロキョロと見回す。
そんな彼らを鼻先でつつくラキエル。
それに驚いて、ラキエルを見るみんな。
「やぁ、ラキエル。おまえがケルピーだったとは思わなかったよ」とバッケル。
みんながひと言ずつ、ラキエルに言葉をかける。
それで満足するラキエル。
ようやく、ユキオウたちに目を向ける。
二匹は、腰を降ろした状態で、こちらを見ている。
「やはり、デカいな」と三兄弟の誰か。ほかのふたりもうなずく。
「エサは何を?」とバッケル。
「湖で討伐したゴブリン。新鮮なものが欲しい、って言うんでな」
「時間経過なしのマジックバッグか。羨ましいな」
彼らには、アイテムボックスのことを、そう説明している。
「あれのおかげで、いろいろと助かっているよ」
ユキオウがのっそりと動き出す。オレのところに来る。みんなが身構える。
『どうした?』
『オレたちを撫でたいような人間がいる。セツカはダメだが、オレは多少なら構わない』
『そこまでサービスしなくてもいいのに。でもありがとう。聞いてみるよ』
ユキオウの頭を撫でる。目を細くするユキオウ。
「触りたいか? 少しなら触っても大丈夫だそうだ。ただ、セツカはダメ。妊婦だからな」
全員がユキオウを触れていく。怖々と手を伸ばして触れる。魔獣を撫でるなんて、ふつう、ありえないからな。せいぜい討伐し終わったあとを撫でるくらいだろう。それでは生きている躍動感や力強さを感じられない。
それでもさすがに、若者四人のようにモフモフすることはなかった。あれはある意味、異常だ。まぁ、モフりたい気持ちは充分わかるけども。
さっき頭を撫でたときの手触り、滑らかさは例えようがない。本当に虜になりそうだった。一種の麻薬かな?
昼食後にお茶休憩すると、彼らは帰っていった。
雲はあったが、雪はやんでいた。
送っていこうか、と尋ねたが断られた。
いい運動になる、と言われて。
まぁ、慣れているみたいなので、ゴネずに見送った。
そのまま、全員で雪投げ訓練することに。ラキエルに声をかけると、出てきた。なんとユキオウとセツカまで。
『一緒にやるの?』
『たまには外に出たい、と思って』
『そっか。戻りたくなったら、言って。ドアを開けるから』
そう、ドアはラキエルによって、閉じられたのだ。賢い。犬猫だと開けても閉めないからな。躾けができている、とも言う?
ユキオウたちは、オレたちの雪合戦を見てから、道へと向かう。そこで遊びはじめた。雪に突っ込み、転がりまわり、走りまわって。雪の上を走れるのに、そうしない。つまり、遊び。ホント、子どものようにはしゃいでいる。見ていると飽きない。
「サブ! よそ見する余裕、あるのか!?」とダルトン。
いや、避けてますよ。ただホーミング雪玉は、避けるタイミングがなかなかに難しい。オレのホーミング雪玉は緩いカーブしかしないから、全然ホーミングじゃないし。当たらないでいる方がテクニックがいるんだぞ、と。
そんな雪合戦を終えると、ラキエルたちは運動場へ。オレは、当然のようにラキエルに呼び出され、彼らの世話をする。まぁ、そのままだと風邪を引くかもだから、拒んだりしないよ。文句は言うけどね。
リビングでお茶しているみんなと合流。
ヤルダさんがお茶を淹れてくれる。
礼を言って、飲む。
うん、美味い。
見ていると、若者四人がウトウトしている。体力と魔力をたくさん使ったからだろう。
「そのうちに」とランドルフ。「雪中訓練するか」
「雪中訓練?」
「そうだね」とダルトンも。「雪の中の訓練はかなりきついからね。何をするにも体力・魔力・精神力の勝負だからね」
「町の外に?」
「それが一番だな」とランドルフ。「だが、最初は町の広場での訓練にする」
広場というのは、宿屋に泊まれない冒険者のために用意されたエリアである。少し大きめの村や町には用意されている。
この時期は、閉鎖されていて、利用するには申請が必要だ。閉鎖の理由は、凍死の恐れがあるからだ。死ぬなら、町の外で死んで欲しい、とは言わないが、それでも街なかで死んでは欲しくないのだ。手間もかかるし。
「任せるよ」
「サブも参加にき――」
ダルトンを手で制す。
「仲間としては、うれしいんだけどさ、ラキエルたちの世話、誰がするの? それにオレは今、キヨミとマナミから依頼を受けていて、手が離せないんだ」
「「依頼?」」とふたり同時。
「うん。布と布を縫い合わせる機械を作って欲しいって。手で縫うのが大変なものを作るんだって」
「ヌイグルミか?」とランドルフ。
「それも含めて、らしい。詳細は教えてくれなかった」
もちろん、ウソである。だが、ブラジャー作る、なんて男のふたりに言っても意味がわからんだろうしね。
「女の秘密らしいぞ。詮索するのはよした方がいい。飯が食えなくなるだけじゃ済まないかも」
身震いするふたり。マナミを怒らせたら、また重労働が待っている。それを知っているのだ。
「せ、詮索しないよ」「オレも」
良し。
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