163【子犬騒ぎとユキオウの苦手と女性たちの相談事】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
少し長いため、3話ではなく2話連続投稿します(2話目)
エイジは、夕食間近に帰宅した。
「あれは」と興奮している。「ヤバい!」
「何、そんなに興奮しているんだよ、エイジ」とハルキが首を傾げる。普段にない興奮のし方だ。
「赤ちゃん、見せてもらったんだ」
「赤ちゃん? あぁ、《人狼亭》の?」
「仔犬だよ、仔犬。クゥゥンクゥゥンって鳴いてさ。可愛かったぁ」
「あぁ、エイジの犬好きが出た」とハルキが呆れている。
「エイジさん」とキヨミ。身を乗り出している。「どんな仔犬でした? 犬種は?」
「あっ、こっちもか」
「そうだな」と考え込むエイジ。「毛並みは焦げ茶で、顔付きはウルフというよりも柴犬だな。目が小さくてクリンッとしているんだ」顔が蕩けていく。
「うわぁ、見たい見たい見たい!」
「エイジとキヨミが壊れてる」
うん、オレもそう思った。
そこに獣人族の三人が加わったら、仔犬談義に突入していた。
夕食後。お茶休憩して、みんなにお風呂を勧める。
オレは、運動場に。
ラキエル・ユキオウ・セツカは、元気だ。
昼間は、駆けまわって、運動しているとか。
『雪の上を走る方がいい。だが、地面を走る方が魔力を使わずに済む』とユキオウ。
『雪の上を走るってすごいよな。水の上も走れるの?』
『走れる。だが、やりたくない。若いころ、川を渡ったときにケルピーに襲われた。それ以来、苦手だ』
『それでケルピーを怖がっていたの?』
『そうだ。あのときは、肝が冷えた』
『なるほどね』
『まぁ』とセツカ。『ウーちゃんもラキエルも優しいから、私は好きよ』
『確かに。サブと契約してよかった』
『こちらこそ、だよ』
ゴブリンを二匹出す。
『あっ、そうだ。明日、ちょっと人が来るかも。お客なんだが、見るだけで、触らせないから』
『あの四人でなければ、少しくらい構わない』
『あの四人のことは、すまなかったな。テイムした魔獣は安全だ、と思っているんだ。魔獣は魔獣なのにな』
『そのとおりだ。もしセツカや子どもに手を出したら、オレも怒る』
『さすがに手を出すとは思わないがな。もし手を出したら、警告してやってくれ。それでもやめないなら、ケガさせない程度に威嚇していいから』
『いいのか?』
『子どもがいることは知っているんだ。それくらいの自制はできるはずだ。できないなら、それ相応の罰を受けるさ』
『わかった』
『じゃ、また明日』
ラキエルのそばにいくと、ゴブリンを要求された。
「はいはい。バッケルたちを覚えているか?」
『湖で一緒だった』
「そそ。彼らが今来ているんだ。今夜泊まっていく。たぶん、明日、ユキオウたちを見に来ると思う」
『わかったから、ゴブリン』
今日は一匹だけにしとくらしい。別に体調不良とかではないようだ。
執務室でいろいろと思索していると、ノックの音。
「どうぞ」
入ってきたのは、キヨミとマナミ、それにエルフのサーリ。
「えと」と切り出したのは、キヨミ。「ちょっと相談したいことが」
女性三人が、相談?
「あ、あの日のことや妊娠とかの話なら、オレは無理だからな」と慌てて言う。
三人がキョトンッとしてから、お互いに顔を見合わせる。それから、プッと吹き出した。
「違うので、安心してください」とマナミ。
「うん、とりあえず、安心しておくよ。それで?」
「えっとですね、下着のこと、なんですよ」
「下着?」
「胸の」
「“ブラジャー”のこと?」
「はい。今までは、我慢していたんですけど」
「まぁ、着た切り雀だったからねぇ。一着しかないよね」
「それでこっちのものをしてはいるんですけど」
「合わない?」
うなずく三人。
「サーリも?」
「私はマナミみたいに大きくないから」とマナミの胸を見る。大きいの? 普段、感じたこと、ないよ?
マナミが胸を隠す。
「見ないでください!」
「ごめん。それでさっきお風呂で、その話になって、キヨミちゃんのを見せてもらったんです。今までにそんなものはなくて、私も欲しいんです」と熱く語られた。
「君たち、もしかしてオレに“ブラジャー”を作れって、言ってる?」
うなずく三人。
「ほら」とマナミ。「例の本、あるじゃないですか。あれで作り方がわからないかな、って」
「作り方がわかれば」とキヨミ。「自分たちで作ります」
「あぁ、そういうことね。どれどれ?」
アイテムボックスから本を出す。最近はアイテムボックスに入れておくことにしたのだ。いつ使うか、わからないから。
本を開くと、ブラジャーに関する情報が脳内に現れる。
「ゲッ、十三もパーツがあるの? 舐めてたわぁ。ええと、あぁ、ここのパーツはオレが作れるな。こっちも。ううむ。キヨミ」
「はい」
「こんなの、ミシンがなけりゃ、無理ゲーだぞ。そのミシンだって、イチから作らなきゃ」
いかん、泣きそうだ。なんとかせにゃ。
「なぁ、サーリ。女性冒険者でビキニアーマーってのを着ける女性はいるのか? 下着みたいな防具」
「いるにはいる。けど、上位冒険者で確か特注だったと聞いている」
「そういうところに発注はできない?」
「信じられないことに、注文が殺到しているそうだ」
「うん、確かに信じられないな。そうか。そっち方面からは無理か。ヌイグルミ作るにもミシンは必要か。わかったよ、ミシン作るよ。でもブラジャーを縫うのはお願いね」
「はい!」とはっきりとしたキヨミの返事。
さっきまで泣きそうだったのに、もう笑顔だ。よかったね、とマナミもよろこんでいる。サーリも微笑んでいる。女性の笑顔は、一種の褒美だな。
ブラジャーの作り方は、書き出して、あとで渡すことにした。
そういえば、ブラジャー作って無双する、なんて作品、知らないなぁ。ってことはふと思っただけだよ。ホントだよ。
※柴犬
ウィキペディア参照。
天然記念物だったとは!
読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価をお願いします。励みになりますので(汗)




