016【肉野菜炒め】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
1話1話が短いため、3話連続投稿させてください。(3話目)
一階に降りる。
テーブル一席が空けられ、そこにランドルフが座っていた。
「ランドルフも食うのか?」
「いや、待っていたんだ。挨拶くらいしてから行かないとな」
「それもそうか。お兄さんによろしくな」
「わかった。じゃ、明日の朝な」
そう言うと、彼は出ていった。
そこに若い女性が食事を運んできた。
「お待たせ」
彼女は幼女に似ている。
「さっきの子のお姉さん?」とハルキ。
「やですよぉ。母親ですよぉ」と笑顔。「お世辞でもうれしいですねぇ」
「お世辞じゃないです。驚きました」
「ありがとぅ。ごゆっくりぃ」
彼女が離れていく。でも戻ってきた、食事を運んで。
「お酒はエール一杯、無料ですけど?」
「では、五杯、お願いします」
はぁい、と離れる彼女。
「いいんですか?」と小声でエイジ。「オレら、未成年ですよ?」
「冒険者ギルドでは飲まされなかった?」
「奢るからと言われましたけど、明日の仕事に差し支えるからと断りまして」
「偉い偉い。でもそんなにアルコール度数もないし、こっちじゃ君たち、もう成人だよ。十五歳が成人なんだと」
「そうなんですか」
「それにビールみたく苦くないし。それにこの食事、いくらうまくてもスープでもないと辛いだろ?」
全員で食事を見る。
何かの肉と葉野菜の炒めたものがたっぷり。肉野菜炒め、だろうか。それに黒パン。見るからに硬そう。スープなし。
四人を見ると、微妙な顔。
そこへエールが運ばれてきた。
「ということだ。ちなみに水を頼むのはやめとこう。腹を下すかもしれないからね」
「あの」とキヨミが手を上げる。「魔法で水、出せますよ、たぶん」
ふむ、確かに。ならば、とアイテムボックスから陶器製のコップを出して、彼女の前に置く。
彼女が箸の長さの杖をコップの上にかざして、聞こえないくらいの小声で詠唱。
「水よ」とつぶやく。
すると杖の先から、チョロチョロと水が出てきた。水道の蛇口から細く出てくるみたいに。
「おぉ、イケるな。問題は、鑑定」
目の前にウィンドウ。鑑定内容が表示された。
「残念でした。純水、つまりミネラルも何も入っていない水だ。化学的に言うと、蒸留水だな。エールを薄める程度になら使える」
はぁ、とため息つく四人。
「とにかく食べよう。いただきます」
「「「「いただきます」」」」
食べはじめて、オレも四人もエールに手を伸ばした。ゴクリと飲む。
「塩辛いな、これ」とハルキ。
三人もうなずく。
「こっちの人たちは働き者で、このくらいの塩分をうまいと感じるんだな、きっと」
「パンは?」
「見るからに硬そうよ」とマナミ。
オレは調理用ナイフを取り出し、黒パンを切ってみた。
「硬いねぇ。中身は?」
白い部分を摘む。
「硬さは食パンの耳かな。味は?」
口に入れる。
「日本のバゲットの中身くらいのものだな。それでも水分が必要だ」
相談の結果、黒パンはすべて半分に切って、中身を食べることに。外身はアイテムボックスへ。肉野菜炒めは頑張ってエールで流し込む。
でも全部は無理。これも鍋を用意して、そこに残飯を入れ、アイテムボックスへ。エールも同様に。
嫌な活用法だ。こんなの、テンプレじゃないよ。トホホ。
「果物、買ってあるから、それを食べような」
助かったぁ、とみんな。
面白ければ、ブックマーク、評価をお願いしますm(_ _)m




