159【事情聴取】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
少し短いため、2話連続投稿します(2話目)
冒険者ギルドの前では、ドネリーさんとラーニャさんが待っていた。
「本当に従魔契約したのか。信じられんな」
「初めて見ましたわ」
「ただいまです。従魔登録は門で済ませました」
「プレートを確認した。詳しい話をしたいが?」
「そうですね。従魔を屋敷に向かわせても構いませんか? メスは妊娠していて、休ませたいので」
「何!? 妊娠中か! わかった。そうしてくれ」
「ウーちゃん」
『なんじゃ?』
「ラキエルと一緒に、二匹を屋敷に連れていってもらえる? 場所は運動場で」
『わかったのじゃ』
ケルピー二匹が、スノータイガー二匹を連れて、動き出す。
「おいおい」とドネリーさん。「従魔だけで行かせるのか?」
「あっ、まずいですか?」
「さすがに町なかは、なぁ」
「なら若者四人を付けましょう。頼むぞ」
はい、と四人があとを追い駆ける。といっても浮遊してだけど。
「従魔同士、仲いいな」
「序列が決まりましたからね」
「ちなみに?」とラーニャさん。
「ケルピーが上です。で、白い方が、一番上です」
「どういう形で序列は決まったのでしょうか?」
「単に強さじゃないでしょうかね。まぁ、白と黒は、単純に位が違うか」
「それはどういう意味でしょうか?」
「女王様と部下ですよ」
「女王様?」
「関係としては、それに近いということです」
説明面倒。
「まぁ、ともかく」とドネリーさん。「中に入って、話を聞こう」
冒険者ギルドのギルマス執務室へ移動。食事処には誰もいなかった。みんな、見物人になったのかな?
執務室に落ち着き、今回の話をする。
途中、誰も話を遮らなかったが、ラーニャさんが書字板にメモメモしていた。
ここでの話は、勇者召喚のことを知る人間だけだったので、もちろんオレの能力も話した。
両ギルマスが呆れているのは、仕方ない。実行したオレでさえ、自分の力に呆れているのだから。
「それで」とドネリーさん。「生まれた子どもはどうするつもりだ?」
「さてねぇ、春に生まれるでしょうから、彼らを自然に帰すのが、一番かな、と」
「彼らもか?」
「親離れするまでは。人間とは距離を置くように、教育してくれるでしょうし。彼らも人間が危険な存在だとわかっていましたからね」
「そうか」
ドネリーさんの話が途切れたところで、ラーニャさんが身を乗り出す。我慢していたみたい。次から次へと、質問が来る。
あまりの多さに、ドネリーさんが呆れている。
「おい、ラーニャ、そろそろやめろ」
へっ、と驚くラーニャさん。
「討伐で疲れているんだ。あとで聞けることは、あとにしろ」
ありがたい。助かった。
質問ばかりだったことに、ようやく気付いたラーニャさん。
「申し訳ございませんでした、サブ様。失念しておりました」
「いえいえ。聞きたい気持ちはわかりますので」
「では、後日、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ」
あとふたつ三つ、聞かれはしたが、無事、解放された。
一階に降りると、外にいた冒険者たちがエールを飲んでいた。どうやらオレたちの話を聞きたくて残っていたようだ。
でも本気で疲れているので、勘弁願いたい。
そこで結界を張った。これで誰も近寄れない。
それなのに、ダルトンは結界から外に出て、カウンターでエールを注文する。それからこちらに手を振った。
ここで飲むつもりか、なるほど。
浮遊の魔導具を起動して、浮かび、結界を外すと、屋敷へと向かった。
屋敷はこれといって、変化は見られない。外のようすを察したのか、玄関ドアが開き、セバスさんが現れた。
「お疲れ様でございました、みなさま。おや、ダルトン様は?」
「飲んでくるって。みんなは?」
「はい。みなさま、運動場にて、新しい方のおもてなしを。ウーちゃん様はお風呂に入られました」
「好きだな、ウーちゃんも。運動場を見てくるよ」
運動場内で、ラキエルは馬に戻って、飼い葉を食んでいた。
「お疲れ様。みんなは?」
ラキエルが面倒臭そうに、鼻面を向ける。そちらを見ると、二匹と四人が固まっていた。
「ありがとう」
首をポンポン叩く。
それからみんなに近付く。
「おおい、あんまり構うなよ」
「あっ、お帰りなさい、サブさん」とマナミ。
セツカを庇うように、ユキオウがいる。のだが、ユキオウが我慢しているのが、よくわかる。
四人がモフモフを楽しんでいるのだ。
『すまんな、ユキオウ。今、引き剥がすからな』
『頼む。身体の大きい子どもより、疲れる』
「おい、こら、離れろ。二匹とも疲れているんだからな」
オレは、ひとりひとり、剥がす。
「オレもモフりたいのを我慢しているんだぞ」
ごめんなさい、と謝る四人。でも顔は蕩けている。クソッ、堪能しやがって。
『ユキオウ、セツカ、とりあえずゴブリン、置いていくけど、ほかに欲しいものはあるか?』
『枯れ草はないだろうか?』
『あぁ、寝床用ね』
アイテムボックスから新鮮な草を出して、それを魔法で乾燥させる。フカフカの寝床の出来上がり。
『はい、どうぞ』
『ありがとう』とセツカ。さっそく寝床へと移動する。
『ゴブリンは、いくつ、いる?』
『三つ、欲しい』
三匹、出しておく。水も用意した。
『今日は、もう誰もこさせないから。安心していいよ』
ラキエルのところに戻る。
『ゴブリン、食べるか?』
『二匹!』
はいはい、と出す。
それからリビングに戻った。
四人を叱り、モフり禁止令を発令した。ブーイングしてくるが、すでに堪能したでしょ、オレは触るのを我慢している、と言ったら、ようやく黙った。
「本当にダメだからな。元気な子ども、産んで欲しいだろ?」
四人ともうなずく。
「まぁ、少し離れたところから見るくらいはいいから。だが、今日はやめとけ。知らない土地に来て、落ち着かないんだ。そっとしておけ」
四人も納得したようだ。
ランドルフも苦笑している。彼自身は、やはりオレたち日本人のように、魔獣相手のモフモフナデナデなど、わからないらしい。魔獣は魔獣だ、という感じだ。
「魔獣の子どもが可愛いとかは、まだわかるが、成獣を触るなど考えられん。それが従魔であってもだ。従魔はテイマー以外とは馴れ合わない、それが常識だ。だから、あの四人がそばに近付いて、撫ではじめたことに、ドン引きしちまった。オスも黙って撫でられて。我慢していたんじゃないか?」
「そのとおり。オレたちの物語では、そういうのが意外と多くてな。ふつうに考えると、ありえないんだがな」
「そうだろう。オレがおかしいわけじゃないよな?」
「正常だよ、ランドルフは。オレたちがおかしいんだ。自分も含まれているのが悲しいけどな」
「まぁ、サブが良識を持っていてくれて助かるよ」
「ありがとう、慰めてくれて」
オレは執務室で、調べ物をしていた。
昼間のハルキの話が気になって。
勇者召喚の魔法陣を調べる。
勇者・賢者・大魔法使い・聖女を召喚する、称号を与える、三種のスキルを付与する、各種能力値の嵩上げをする、などのプログラムが記述されている。
あの場の魔法陣と書物に書かれていた魔法陣を比べる。違いがあり、その内容がどのようなものなのか、がわかった。
それを裏付けるように、各種記録からも事実が見えてきた。
ダルトンとランドルフに相談したかったが、ダルトンは酔っ払って帰ってきたので、明日の朝、ふたりに相談することにした。
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