154【伝言と雪掻き】
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少し長いため、2話連続投稿します(1話目)
翌朝。目覚まし魔導具で雷を喰らう前に、起きた。どうやら、身体の方が悟ったらしい。もちろん、魔導具を切っておく。
窓を開け、ガラス窓を閉じ、外を見る。
白しかない。雪はやんでる。
索敵には反応はない。
まぁ、街なかの外れとはいえ、囲いの内側、魔獣が入り込むことは少ない。
この時期は、魔獣も冬眠したり、移動を控えたりするらしい。晴れれば、行動する魔獣もいるそうだが、多くはないようだ。
ということは、騒ぎを起こすのは、人間(人間族に限らず)だということだ。
まぁ、人間もさすがに雪の中、騒ぎを伝えには来ないだろう。
と、思ってました。来たんです、商業ギルドから。うるうる。
それは、玄関を体当たりする音が響くことではじまった。まさしくその音が体当たりとしか思えない音だったのだ。
ちょうど、昼をまわって、お茶をしていたときだった。
セバスさんが出て、すぐさま絶叫が。
ほぼ全員で、リビングのドアに殺到し、玄関を見た。
セバスさんが引きながら、外を見ている。視線の先は、人間相手としては低い。それでも人間の胴あたり。
玄関の外を見ると、その正体がわかった。魔獣だ!
「おいおい、魔獣がドアを叩くのは、この世界のふつうか?」とオレ。んなわけないが。
「んなわけ、あるか!」とダルトン。「伝言鳥だ!」
そう言いながら、スタスタと玄関に向かうダルトン。
よくよく見ると、その魔獣は鳥だった。“伝言鳥”というから、伝書鳩的な魔獣かと思ったが、違った。デカいワシだった。
どうやら、テイムされた魔獣らしい。小さな筒とともに、プレートを提げている。
オレ、タカとワシは区別できないのだけど、コイツはわかる。ワシだ。ハゲワシとかではなく、タカに近い外観。なぜ、わかった? だって、頭が真っ白のヤツだよ。アメリカの国鳥のヤツだよ。ハクトウワシっていうくらいだから、間違いなく、ワシだよ。だよね。
ダルトンは、そのワシに近付いて、その首にある筒を開け、中の細い木の板を引き出す。その板を読むダルトン。
こちらを向いた。
「商業ギルドから、雪下ろし依頼。どうする?」
来たか。うちだけ雪下ろしする必要がないからな。助力を乞うのは当然か。
若者に向く。
「どうする? 体力勝負だが」
それを聞いて、嫌だ、という声が聞こえてもおかしくない。だが……
全員から、行く、という声。
ランドルフもうなずく。
「では、六人が行く、と」とダルトンに言う。
「えっ、七人じゃないの?」
「七人? えっと、ダルトン、おまえも?」うなずくダルトン。「ダメ。おまえさんは、ここで休みなさい」と睨む。
オレの睨みに、怯むダルトン。
「六名参加!」
オレの声に、ダルトンは怯み、ワシに六名と指で指示。それを理解して、人数分、鳴き、ダルトンの態度を見極め、一度、鳴くと、ちょっと待ってから、飛び去っていった。
ダルトンがドアを閉め、何事もなかったように戻ってくる。
「行くんだよね? 準備して向かいな」
ダルトンは、そう言って、ソファーに身を預けた。ボスンッと。オレ、知ぃらね、という態度。
まぁ、返事をしてしまったんだ。やるしかあんめぇ。
全員、装備を整え、商業ギルドに向かった。キヨミの浮遊魔法で。
正確には、全員ではない。オレだけ残った。理由は、そこにあった。外に出て、セバスさんに出ていく挨拶をしようと、振り返った瞬間に見てしまったのだ、屋敷に積もっている雪を。
彼らを先に行かせ、オレは屋敷の雪下ろしをすることにした。
以前、親方さんが言っていたが、この屋敷は頑丈に建ててあるので、人の背丈くらいは心配ない、とか。まぁ、金持ちの屋敷だ。そのくらいの強度は織り込み済みだろう。
屋根は三角屋根で、屋根裏部屋の窓は雪で塞がっている。当然、そこも雪下ろしの対象だ。
しかし、どうすべ? あそこまでは、浮遊の魔導具で行ける。体力勝負で雪下ろしもできる。まぁ、やらないけど。
あれこれ考えて、試しに思い付いたことを実行してみた。
まずはそこまで移動。積もっている雪に触れる。ほどほどの硬さである。これならばイケそうである。
アイテムボックスから魔導具を取り出す。スイッチを最強にセット。雪に向けて、起動。
向けたところの雪がパァーッと飛んでいく。そう、風魔法を作り出しているのだ。以前に試作したドライヤーもどき。熱はない。
壁際に沿って、風で飛ばしていく。建物の部分まで。さすがに下になると重さで固められるようで、なかなか飛んでいかない。まぁ、とりあえずの場所までで魔導具をしまう。
腕の太さ分の隙間ができた。そこに腕を差し入れ、手で雪を固め、そこを押す。板の方がいいかもしれないが、とりあえず。
雪が押し退けられ、斜めに動く。
そこで少し力を強め、傾きを多くする。
やがて、倒れていき、しまいには屋根から滑り、そのまま落ちていった。
下で、おお、という歓声。
ふと、そちらを見ると、セバスさんとネイリンさんとヤルダさんが、こちらを見上げて、ポカンッとしていた。
次へと取り掛かる。今度は板を使って。
ちゃっちゃと終わらせると、一度、中に入って、ドリンク休憩。
リビングのソファーでは、ダルトンとウーちゃんが仲良く寄りかかって、クカーッと寝ていた。
起こさないように静かに、お茶をする。
それから、商業ギルドへと浮遊して向かった。
※ハクトウワシ
ウィキペディア参照。
ワシとタカは、大きさで区別されているとか。
大きい方が、ワシだとか。
でも例外もあるそうで。
どっちやねん!
まぁ、ほかにも違いがあるそうです。
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