150【宿屋《酔いどれ亭》】
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少し短いため、3話連続投稿します(2話目)
「すみません」の声で振り向き、その少年に向き直る。
「こちらに、サブさん、という、人が、いる、と」
苦しげに、言葉を出す少年。
「オレだ」
「ランドルフ、さん、から、来て欲しい、と」
少年はそこまで言って、倒れた。よほど急いで走ってきたのだろう。
「ご苦労さん。ハルキ、この人にドリンクを飲ませてあげて」
ハルキが、ドリンクを取りに行く。
「エイジ、冒険者ギルドに行ってくる」
「わかりました」
「私の馬で――」
「ありがとうございます。でも私、乗れないんですよ。だから自分の脚を使います」
オレは、浮遊の魔導具を装着。すぐに走り出す。
後ろから、馬の蹄の音。
振り返らなくてもわかる。ラーニャさんだ。冒険者ギルドに一緒に来るのかな?
冒険者ギルドに入り、浮遊の魔導具を切る。見回して、ランドルフを探す。いない。
受付に行き、「ランドルフは?」と尋ねると、担当の受付嬢につないでくれた。その受付嬢に案内されて、ギルマス執務室へ。
「おう、来たな」とギルマスのドネリーさん。すぐに怪訝な顔をする。「なんでラーニャまで?」
「お屋敷にお邪魔していたからよ。それで? あっ、いけない。用があるのは、サブ様でしたわね」と恥ずかしがる。
それに笑みながら、ランドルフを見る。
「サブ、兄貴から了解が得られた。暗殺者は王都冒険者ギルドで対処するそうだ」
「わかった。では、計画を実行に移そう。王都の両ギルドに依頼を出します。暗殺者の捕縛を。依頼料はここで出します。あぁ、商業ギルドにはそちらで出しますね」
「いや、金をもらうつもりはないぞ?」
「こちらもです」
「いや、勘違いしないでくれ。この金は宰相からの依頼料だ。もとは王城の金だからな」ニヤリッと笑うオレ。
「悪巧みの顔だ」と呆れるランドルフ。
うるせい!
どうやら、両ギルドのギルマスふたりも理解したらしく、ニヤリッとオレを真似た。
「よし。まずは、ここの暗殺者を捕縛しよう」
宿屋《酔いどれ亭》に踏み込むのは、両ギルドと自警団からの応援。宿屋のまわりを取り囲み、逃げられないようにする。
踏み込むとはいえ、実際には、商業ギルド職員による接触からだ。
職員が入り、宿屋の人に暗殺者を呼んでもらう。もちろん、宿屋に知らせてある偽名でだ。
暗殺者は、仲間との連絡で、ほぼ毎日、商業ギルドに顔を出しているので、職員とは顔見知り。
「どうか、しましたか?」と暗殺者。全然、疑っていない。
「はい。実はこちらが届いたので」と巻いた獣皮紙を差し出す職員。
受け取ろうとする暗殺者。
だが、受け取れない。
そこを左右から見えない相手に、羽交い締めにされた。
何が起こったのか、すぐにはわからず、騒ぎもしない。
ようやく、暗殺者が、どういうことなのか、に気付く。
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