148【暗殺者・2】
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少し短いため、3話連続投稿します(3話目)
「おい、サブ。戻ってこい」と肩を揺すられた。
「お、悪い悪い。できれば、一網打尽にしたいところだな」
「できれば、な」
「ランドルフは、暗殺者が何人いるのか、知っているか?」
「いや。だが、それほど多くはないだろう」
「ダルトンなら知っているかな?」
「可能性は充分あるな。兄貴に問い合わせてみる」
みんなを見る。不安そうだ。
オレは思い付いて、再度、索敵した。リストアップして、書き出す。
「ランドルフ、問い合わせの必要はない。全部で六人だ」
「ゲッ! なんでもわかるんだな。呆れて物が言えないぞ」
書き出した内容は、名前(宿屋での名前も)・年齢・滞在地・宿泊している宿屋名・スキルなどなど。
「よし。明日、商業ギルドのギルマスに教えてくる。一斉検挙してもらおう。そうだ、これは宰相の命令ということにしてもらおう」
「あっ、サブさんの悪巧みの顔」とキヨミ。
ちょっとニヤけてるだけだよ? そんなに悪い顔に見えるかな? まぁ、それはともかく……
「まだ安全とは言い難いが、注意すべき存在は見つけた。オレたちが手出しできるものではないが、すぐさま事態が変化するわけでもない。変に怖がっていても神経すり減らすだけだ。ここにいれば、安全だから」と笑む。
少しは気分がよくなったようで、みんなの顔に笑みが浮かぶ。
それで解散した。ランドルフには残ってもらう。
「さっきの悪巧みの話か?」
「もちろん」
「宰相の命令ってのは、どういうことだ?」
「相手は、宰相子飼いの暗殺者だ。だからといって、自分たちを宰相が守ってくれる、とは考えていないだろう。それなりの恩はあるだろうが、これまでの仕事で返している、とも考えているかもしれない。それに宰相の命令は、今回は、捕縛だ。暗殺が仕事の人間にとって、危険が増すことだ。変な命令だと感じてもいる」
「確かに、な」
「それが、相手がひとりならいい。でも五人もいて、居場所もわからない。だから、バラバラで探している。見つけたら連絡をして、仲間を集めて、確実に捕縛できるようにするだろう」
「だな」
「今がどの時点なのかは、わからない。だが、自分たちの居場所はお互いに知らせているはずだ」
「でなければ、連絡もできないし、捕縛にもいたらない」
「そう。でも暗殺者たちの居場所を見ると、今は宿屋か街道脇で、動いていない。とすると、この町にいる暗殺者はまだ確信はなく、ここに留まって、オレたちを探しているか、あるいは連絡待ちか、だな」
「ふむ、なるほど。で?」
「おそらく居場所は仲間内だけで共有されているだろう。ここの暗殺者が捕まり、自白させられた。薬か魔導具かは知らないけどね。その情報を宰相が知り、宰相から、全員の捕縛が両ギルドに緊急依頼で発せられる。宰相ならば、スキルの数々もわかっていて、対応されて、捕縛される。もし、捕縛から逃げられたとしても、宰相への疑念が湧く。宰相を問い詰めよう、とするだろう。あるいは国外に逃げるか」
「全員捕縛はいいが、そのあとは? 全員をどうする?」
「もったいないよな。単に殺処分する手はあるけど、能力を考えれば、それぞれの道でそれなりに生きられるはずだ」
「だが、解放するわけにもいかないだろう?」
「うん。そういえば、家族とかいるのかな。調べてみるな」
索敵から暗殺者たちの情報をさらに引き出す。
「すごいな。全員、家族がいない。強いて言えば、仲間が家族だ」
「まぁ、家族に自分が暗殺者とは言えないからな。親兄弟もいないのか?」
「あぁ、いない。何が原因かはわからないが、死別している」
「暗殺者として、育てられたのかな」
「ありえるね。それでも人の中に紛れ込むことも必要だから、ふつうの生活はわかっているか。……考えても出てこないな」
「兄貴に相談してみるか。兄貴ならダルトンみたいな使い方をしてくれるだろう」
「そうだな」
明日、ランドルフが兄貴さんに相談して、その結果次第で、作戦決行、となった。
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