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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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145/648

145【筋交い】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


少し短いため、3話連続投稿します(3話目)

 組み上がった。

 少し離れて確認。

 うんうん、良きかな良きかな。

「完成か?」と親方さん。

「大枠は。固定が甘いですが、あとから絞めます。ここで絞めてしまうと、部材がハマる余地がなくなりますから。ここから細かい部材を取り付けます」

「あの斜めの部材はなんの役に立つ?」

「“筋交い”と言います。あれをすれば、地震に強くなるんです」

「ジシン?」

「ここらは、地揺れはないんですか?」

「地面が揺れる?」

「ここはないな」とドネリーさん。「昔、火山地帯に行ったことがある。初めて地揺れを体験したときは、思わず地面に四つん這いになってた。さすがのオレも恐かった」

「そんなことがあるのか」

「あるんです」とオレ。「慣れれば、そんなに怖くはないんですが、ドネリーさんがしたように四つん這いになるのは仕方ないでしょうね」

 そこで“筋交い”の効果を地面に棒を立てて、簡単に説明。棒を支える新たな棒を加えるごとに棒は固定されていく、と。

「なるほどな。おい、ならこれまでの建物は、地揺れが来たら」

「建物の強度と地揺れの程度によります。弱い地揺れならば大丈夫ですが、強ければ」オレは立てていた棒を倒す。「こうなります」

 親方さんだけでなく、どうやら、両ギルマスもそれを想像したらしい。鳥肌を立て、身震いする。

「建物のひとつが“筋交い”をやっていても、となりの建物がやっていなければ、被害を受けるでしょうね」

「そ、それは」と震える声のラーニャさん。「事前に、どうにか、対処?できませんか?」

「建て直してしまうのが一番ですが、建物と建物のあいだに頑丈な塀を立てるか、弱い建物に“筋交い”を施すことが考えられます。頑丈な塀を立てる場合は、塀が倒れない工夫も必要です。塀が倒れて、人がケガをする可能性もありますので」

 ホッとするラーニャさん。顔はまだ強張っているが。

「でも」とオレは続ける。「“筋交い”を施すのは、やり方を試行錯誤する必要があるでしょう。オレも詳しくは知らないので」

 ラーニャさんは、うなずく。

「対策が取れるだけでも、ありがたいことです。ドネリー、馬車をお借りします」

 ラーニャさん、返事を聞かずに、駆け出して行った。

「いいんですか?」

「ああ。あいつは猪突猛進タイプだからな。普段は抑えているんだが、これと決めたら突っ走る。小さいころから、治りゃしねぇ」とほくそ笑むドネリーさん。

「小さいころから? 幼馴染さんで?」

 笑顔でうなずくドネリーさん。

「あいつの性格、知っているからな。間違ってなければ、黙って従うさ」


 その後、昼食を挟んで、細かい部材を組み上げた。

「おい、オレたち、必要か?」

「まぁ、明日でもいいですけど?」

「カッ! 適当に座ってろ! おい、野郎ども! やるぞ!」

 親方さんたちが、どんどんと部材を運び、建築作業に入る。手の空いた人員を手伝わせる。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価をお願いします。励みになりますので(汗)

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