137【庭と湯治と運動場】
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少し短いため、3話連続投稿します(1話目)
昼食後、ラキエルのようすを見に行く。
彼は、自由に、草を食み、走りまわっていた。
ふと思いついて、範囲指定して毒物を鑑定してみた。間違って食べて倒れられても困るので。反応なし。よかった。
ちなみに、庭はバラ園のような飾られた庭ではなく、ヒザ下くらいの草で覆われていた。葉先を見ると、カットされたあとがある。一度は、刈られたか。
セバスさんに尋ねると、三月ほど前に刈ったそうだ。所有権を譲られる少し前だったとか。
「そういえば、ご主人は大店だったと聞いた気がするんですけど」
「はい。《金の子熊屋》という大店です」
《金の子熊屋》か。
確かに大店だ。
王城から奪取した書類にある。
「おお、あの《金の子熊屋》ですか。良質な食材を王城に卸している、と聞いたことがあります」
「はい」とセバスさんは自分のことのように笑む。
「そのご主人は、ここへはよく?」
「最初のうちは湯治目的でして。効能のある温泉ではないことがわかり、次の場所が決まるまでこちらに」
「なるほど。まぁ、湯治目的なのに、ただのお湯でした、では意味がありませんからね。それで次に?」
「いえ。病が進行しまして、王都に戻られたのです。わたくしもご一緒いたしました。ほどなく、お亡くなりに。当屋敷は遺言書に記載があり、わたくしへの退職金代わりとして、いただきました」
「なるほど。でももう少し金額を高くして、そのお金で余生を過ごすことは考えなかったんですか?」
「もちろん考えました。ですが、仕事のない生活など、わたくしも妻も知りませんから、笑ってこの条件とさせていただいた次第です」と苦笑。
「まぁ、突然、ヒマになっても、何をしていいのか、困りますからね」
「はい」
「話は変わりますけど、このあたり、雪は降ります?」
「降ります。豪雪地帯ではないので、苦労は少ないかと」
「どのくらい積もります?」
「そうですね……腰ぐらいまででしょうか」
「動こうとすると大変ですね」
「はい。大きな道は両ギルドや商店などが雪掻きいたしますが、個人宅からは自力で雪掻きする必要がございます」
「つまり、ここも、ですね」
「はい」
「まぁ、若者もいますし、大丈夫でしょう。あっ、馬は移動できますかね?」
「お勧めいたしませんが、可能でございます」
「そうか。ラキエル、運動不足になりそうだな。ヘタに出れば、疲労するだろうし」
「確かに」
「運動場を造るか」
「運動場、でございますか?」
「そう。この庭いっぱいに屋根を張る。壁を作って、寒くないようにする」
「雪の重みで、崩れませんでしょうか?」
「そこは、雪が積もらないようにすればいいだけだよ、たぶん」
自信がないわけではないが、予防線は張っておくよ。
で、いろいろと調べて、構想を練る。
手間がかからないやり方。ううむ。
考えはじめると、ちと止まらない。
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