132【ハーフエルフと契約】
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少し短いため、3話連続投稿します(3話目)
「“人員の終身雇用を確約する”? えっ、死ぬまでここで働くってことですか?」
「はい」とセバスさん。
「しかし、あなたはともかく、彼女たちは結婚もするでしょう?」
「ネイリンはわたくしの妻でございます。それから」ともうひとりのメイドを見る。「彼女はハーフエルフでして、ここを出たら、その生涯は短いものとなることでしょう」
「失礼、ハーフエルフだというのはわかります。でも短いものになる?」
ここで、ギルマス、セバスさん、メイドさんの三人が、瞬きを何度も繰り返す。
で、説明してくれたのはランドルフだった。
「サブ、ハーフエルフは、エルフ族からも人間族からも獣人族からも忌避される存在なんだ。悪しきものを呼び込む、と言ってな」
「ランドルフは?」
彼は笑った。
「そんなの迷信だ。ハーフエルフの有能さは旅のあいだに何度も見てきた。露頭に迷って、酷い状態の者もいた。なんとかしたいと思ったことも一度や二度ではない」
「よかった。オレたちはそんな考えは持っていないからな」メイドに顔を向ける。「ということで、ずっと働いてくれるとありがたい」
メイドは、目に涙を浮かべて、うなずいた。ここに来た経緯はなんとなく想像できるな。露頭に迷っていたところをここのご主人が引き取った、とかだろう。
「では」とギルマス。「金額の交渉に移ります」
「これでは、安過ぎではないですか?」
「建築年数による経年劣化に加え」とギルマス。「家財道具の撤去費用、人員の退職金や修繕費等を考えますと、妥当な金額かと思われます」
「“居抜き”ってヤツか。わかりました。購入します」
居抜きとは、日本での言葉で、店舗内の物品をそのままに、次の人に渡すことだ。よく飲食店で行なわれる。
「では、購入金額は、口座への納金といたします」
「わかりました」その方が安全だし、いちいち数えずに済むもんな。「のちほど、商業ギルドにて、入金しましょう。口座残高が足りませんので」
書類に三者で署名する。それから握手。これで事実上、オレの所有物となった。
「セバスさん、よろしく。それでギルマス、修繕などの手配をお願いできますか?」
「かしこまりました」
セバスさんから修繕内容を聞くギルマス。早ければ、明日から人が来てくれる。
オレはみんなを残し、ギルマスと商業ギルドの馬車に乗り込み、商業ギルドに向かう。帰りも送ってもらえるらしい。
商業ギルドで口座に入金して、相手口座に送金。必要な職人への支払いもあるので、余分に入金しておいた。
ギルマスとの別れの際に、今後もお付き合いをお願いし、握手した。
馬車に乗り込み、屋敷に戻る。
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