130【トイレと書斎】
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少し短いため、3話連続投稿します(1話目)
金の容器を取り出す。
「お恥ずかしいことに、排泄物の処理に困っていたし。どんな感じでスライムが取り込むのか、見たくて」
「なるほど? まぁ、どうぞ」
「ありがとう」
フタを開け、逆さにして、ボットンッと落とす。
物理的に接する前に、スライムが反応した。排泄物を中心としたくぼみができ、まわりがミルクの王冠のようにせり上がる。排泄物を受けると、王冠が内側へと崩れていき、排泄物を包み込む。
容器にクリア魔法をかけて、しまう。
スライムは半透明なので、中の排泄物が溶けていくのがわかる。
「なるほど、溶かして、養分を吸収するのか。ふむふむ。スライムの寿命は?」
「およそ」とギルマス。「三年。スライム養殖業者がスライムが出した残渣を回収して、新たなスライムを置いていきます」
「三年。しかも残渣が出る。その残渣は肥料になるのでしょうね」
「存じません」
「スライムは高額なのでしょう?」
「ええ」
「養殖の維持費を考えると、残渣を肥料として、販売するのが適切でしょうね。それとも注文を受けてからの養殖なのかな?」
いろいろ考えていると、ランドルフに肩を揺さぶられた。
「おい、戻ってこい、サブ」
「ああ。悪い悪い。スライムのことは、また考えるよ」
「そうしてくれ。みんな、呆れているぞ」
まわりの面々を見ると、確かにそのとおりだった。
「失礼しました」
トイレをあとにして、次へ。ちなみにトイレは三箇所あった。でも配管のことを考えたら、これはこれで、ありなのだろうな。
書斎を見せてもらう。立派な執務机があり、壁には本棚。本がところ狭しと入っている。本自体が高いのに。でも本は宝飾品の類いなのに、ここの本は宝石などがわざわざ削られていた。まぁ、付いたままだと、立てて並べられないんだけど。
タイトルだけをチェックする。どうも整理されていない。買ったら宝石を外して、次々と並べたようだ。まるで、買った本をちらりと中身を見て、積読しているかのようだ。
「主人は」とセバスさん。「失礼。元所有者は、知識人でありましたが、華美な装飾を好まれてはおりませんでした」
「そのようですね。しかし、あまり読んでおられなかったかのように見えます。タイトルがバラバラなので、そう見えるだけでしょうか?」
「そのとおりでございます。すでに読み終わり、こちらへと送られてきたものでございます。送られた順に並べておりますので、そのように」
「なるほど。そういうことでしたか」
そのとき、鑑定さんが反応した。危険ということではなく、本のひとつに反応したのだ。
近付いて、その本を手に取る。その本の装丁は、まるで日本の本屋で見る単行本そのもの。サイズがA5ぐらい。しかも挟まれている紙は獣皮紙ではない。植物紙、いやもっと滑らかなものだ。これは、この世界に実在するはずのない本だった。
オレは、意識的に鑑定する。タイトルがなかったからだ。鑑定結果にオレは頭を抱えた。なんで、こんなところにあるんだよ!
※スライム
ウィキペディア参照
以前は厄介な魔獣という地位にいた?
本作では、現代のイメージ
(弱く、つややか、丸っこい)
というものに、見つけにくい、
という点も付け加えた。
弱い魔獣は、身を守る術を持つ、
と考えたため。
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