128【理由と所有者】
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少し短いため、3話連続投稿します(2話目)
「そうですか。ちなみになぜ売りに出されたのでしょうか?」
「その方に維持する余力がない、とのことでした。実際、あの方はお元気ではありますが、ご高齢でして」と少しうつむく。
「お知り合いで?」
「はい。長年、その屋敷に勤めてきた方で、当ギルドとの取り引きも多くございました。現在も屋敷や人員の維持管理をされております。できれば、このまま仕事を続けたい、と申されてもおいででした」
「ふむ。あれ? 人員? もしかして、ほかにも働いている方がおいでで?」
「はい。メイドがふたり。こちらもできれば、続けたい、と」
「なるほど。人員込みなのですね」
「無理でしょうか?」
「いや、むしろ、屋敷を知っている人がいるのは、ありがたいと思います。実はこちらとしては、冬を過ごすための住処を考えていたのです。最初は借家を考えていたのですが、購入も含めてもイジジ村ではちょうどいい物件がなく、それでこちらに物件があることを知ることになったのです」
「なるほど。お話からしますと、おひとりで住むわけではないようですが?」
「ええ。私は商人で、護衛に冒険者を六人雇っています。それと馬が一頭ですね」
「冒険者は冬のあいだも?」
「ええ。四人はまだ若い冒険者でして、冬のあいだに鍛えることにしているのです。将来有望でしてね」
「なるほど。では、今後は、ここを拠点に商売をなされるということでしょうか?」
「できれば」
「かしこまりました。ご覧になられますか?」
もちろん、と答えて、外へ。
その屋敷へは、馬車二台で向かった。オレたちの馬車とギルマスの馬車だ。
屋敷は、さすがとも言える塀に囲まれ、門構えもしっかりした造り。屋敷も奥に小さく見えるだけ。
ううむ、これならラキエルも走りまわれるかな。
ギルマスの助手が門扉を小さく開け、屋敷へと走っていく。さすがに門に門番はおらず、インターホンもないから、仕方ないな。
しばらくすると、助手とともにメイドが走ってきて、門扉を開き、馬車を中へと導く。
メイドさんは、エルフだった。ただ耳が小さく、人間族の耳の先が尖っている程度。ヴァルカン人くらい。ハーフエルフかな?
玄関が開いており、そこに老齢の紳士が立っていた。彼がここの現在の所有者で、執事だろう。
ギルマスとともに玄関へ。
近くに行くと、執事が人間族ではないのがわかった。獣人だ。背筋が伸び、まるでジャイアント・シュナウザー(可愛いミニチュア・シュナウザーではない)のような顔形。毛色は、アイボリーに近いブラウン。丁寧なカットを欠かしていない感じ。惜しむらくは、メガネをしていないこと。モノクルでもよかった。
紳士と挨拶を交わすギルマス。オレを紹介してくれる。
「サブ様、当屋敷を預かります、セバスチャンと申します。セバスとお呼びください」と胸に右手を当て、軽い一礼をしてくる。
「サブです。よろしく」と同じくらいの一礼。
「サブ様は」とギルマス。「人員に関することに同意してくださいました」
セバスさんは、一瞬、目を見開き、目を細めた。
「本当に?」
「ええ、あなたも含めて」とオレ。「もちろん、ここを購入したあと、でですが」
一度、うなずくセバスさん。
「もちろんですね」
※ヴァルカン人
ご存知SFドラマ『スタートレック』に
登場するスポックがこの人種。
詳細は、ウィキペディア参照。
※ジャイアント・シュナウザー
※ミニチュア・シュナウザー
ウィキペディア参照。
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