127【ラーニャさんと訳あり物件】
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少し短いため、3話連続投稿します(1話目)
翌日。
宿屋の朝食を食べる。スープと黒パンと果物。これはふつうに食べられる。
宿屋を出て、商業ギルドへと向かう。
商業ギルドは、イジジ村の建物よりも大きい。それだけの取り引きがあるのだろう。
オレだけ、中に入る。
中はそれほどの人はいない。窓口もいくつか閉鎖されている。
すぐにスタッフの女性が近付いてきた。
「おはようございます。ようこそ商業ギルドへ。ご要件をお伺いいたします」
「おはようございます。鉄級のサブと言います。イジジ村の商業ギルドでの紹介を受けまして、物件を確認にまいりました」
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
案内されたのは、ギルドマスター執務室。また?
スタッフさんがノックをして、要件を伝える。中からの承諾を得て、ドアが開かれた。
中には、執務机にひとりの女性が座っていた。お局様、といった感じの女性で、制服がピタッとしている。ピッチリ、ではない。ここは大事。
オレたちが中に入ると、彼女も立ち上がり、近付いてきた。
右手を出してくる。
それを受けるオレ。
「ようこそ、ミゼス町の商業ギルドへ。わたくしは当ギルドでマスターをしております、ラーニャと申します」
うむ、まさしくきっちりとしていて、スキのない感じ。
「鉄級のサブです」
「どうぞ、お掛けを」とソファーを勧められる。
お互いに座る。
さきほどのスタッフさんが、お茶を淹れてくれる。
会釈して、礼に代える。
「ずいぶんとお早い到着ですね」
やはり聞かれた。
「はい。イジジ村をすぐに出まして。馬を飛ばしてきました。馬が頑健で助かります」と笑顔。「物件を少しでも早く見たくて」
「なるほど。空を飛んできたのかと思いましたわ」と微笑み。これは営業用だな。「では、さっそく物件について、詳細を提示したいと思います」
スタッフが獣皮紙をテーブルに載せた。物件の詳細が書かれた書類だ。
「まず、なぜわたくしが担当するのかを説明させてください。戸惑われたことと思います」うなずくオレ。「王都の異変はご存知ですか?」うなずく。「それにより、王城と取り引きをしていた白金級と金級の商会員の商会が、王都内の資産を奪われてしまいました」
「えっ? 確かに混乱している、とは聞きましたが、そこまで?」
「それだけではありません。その商会員たちは、幽閉されました」
「そんな」
「この情報は、サブ様がイジジ村でこの物件情報を得られた二日前でした。お伝えするのが遅くなりましたのは、この情報の真偽を確認していたからです」
「なるほど。では、今回の物件は、王城からの?」
「いいえ。本来の所有者は亡くなり、遺言書により、この物件は第三者に譲渡されました」
「事前に?」
「はい。ですが、まったくの偶然です。譲渡されたのは、王城の異変の前日。売り出しの相談を受けたのが、その翌日です。まだ王城の異変がはっきりとしていない状態でした」
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