012【奴隷】
奴隷商会に来ている。会社の応接間的な部屋に通されて。ソファーに促され、座る。
支配人にギルマスの紹介状を渡す。
それを読んで、うなずく支配人。
「購入金額は高額になりますが、よろしいでしょうか?」
金額を聞いて、一度、悩むふりをする。それからうなずいた。
「身元が保証されている、と考えましょう」
「では、こちらにご準備をお願いします」と支配人はトレイをテーブルに置いた。「わたくしは彼を連れてまいります」と出ていった。
トレイに金貨を数えやすいように並べていく。
人生で金に触れたのは、恋人へのプレゼントに買ったネックレスだけだ。あれは、金貨一枚分もない。二十四金だったし。
目の前には、トレイを埋め尽くす金貨。眩しい。
しばらく待つと、支配人とともにひとりの男性が入ってきた。冒険者ギルドのギルマスによく似た体格。というか、同じ血筋ではないか、と思われる顔立ち。違うのは短髪だが、髪があることか。
「まさか、ギルマスの兄弟?」
「おや」と少し驚いている支配人。「ご存知かと思っておりましたが」
「ギルマスは、オレの兄貴だ」と男性。「立場上、言えなかったのだろう」
「そういうことですか、なるほど。これ以上ない身元保証ですね」
支配人もうなずく。
彼の名前は、ランドルフと紹介された。
そうして、三者のカードにて奴隷契約。ここにも専用魔導具。
「以上で、契約成立です。さきほども申しましたが、彼は五年の契約となり、そのあいだの管理は、あなた様に責任がございます。お忘れなきよう、お願いいたします」
「わかりました」
玄関ドアの前では、スタッフのひとりが待っていた。大きな盾と武器防具を持って。
そのスタッフから受け取るランドルフ。革鎧を身に着け、剣を佩いて、盾を背負う。
「あれは?」支配人に問う。
「彼の持ち物です。私物は売り払う者もおりますが、彼は、手放したくない、と言いまして」
「なるほど」
自分が命をかけてきた歴史が刻まれているのだろうな。思い出とともに。
そこでひとつ思い出した。
「奴隷には何か印はあるんですか?」
「以前は、隷属の首輪や奴隷紋を付けていましたが、商業・冒険者両ギルドの法制度により禁止されました。見つけた場合はどちらのギルドでも構いません。報告してください。人権侵害に当たりますので」
「なるほど」
「犯罪奴隷は別です。まぁ、ふつうは見ることはないでしょう。鉱山行きですから」と苦笑。
なるほどね。人権問題も考えているのか。まぁ、誰だって、首輪はやだし、焼印なんてされたくないよな。想像するだけで痛みが走る気がする。
テンプレは破壊されているね。良き良き。
「印ではなく、ギルドカードに記載されますので、見る者が見れば、わかるようになっています」
面白ければ、ブックマーク、評価をお願いしますm(_ _)m




