113【街道と知り合いと返品】
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少し短いため、3話連続投稿します(2話目)
「出たな」とバッケル。
その言葉通り、出た。街道に。
「太陽の方向からあっちがイジジ村だろう」
全員がその場で、ゴムタイヤが空気を減らすように安堵の息を漏らした。
「全員、気を引き締めろ!」とダルトンが叫んだ。「街道は、安全地帯ではないぞ!」
そのひと言で、みなが緊張を固くした。
ある意味、この集団のリーダーは、三人だ。オレ、ダルトン、バッケル。この三人の情報をもとに、ここまでやってきたのだ。
イジジ村へと進む。
イジジ村とは、オレたちが旅立った村だ。町といっても不思議ではない大きさの村。
本当は、ここで馬車を出すところだが、《探索の神獣》の目の前で、王都作の馬車を出すわけにはいかない。怪しい、が確定になる。それは避けねば。
街道を進み、そのうちに、別の商隊と会った。
「おお、《探索の神獣》のみなさんではないですか!」
どうやら知り合いらしい。
「ずっと消息不明で心配していたのですよ!」
「コーベルさん、ご心配おかけして申し訳ない」とバッケル。「実は」これこれこうで、と説明するバッケル。
「ご無事でよかったです。依頼しようと思ったら、前の依頼からお戻りになっていないと聞かされて」ととても心配していたそうだ。
「あはは、ちょっと迷子になりましたが、このとおり、無事です。ご心配おかけしてすみません」
その後、軽く会話して、別れた。
イジジ村の門近くに来た。
「申し訳ない」とバッケルが止まった。「少し待って欲しい」
オレとダルトンは意味がわからないなりに、うなずく。
彼のまわりに集まる《探索の神獣》。
そして、何かを集めている。
彼らがオレたちの方に道を開ける。
バッケルが進み出た。
その手には、金の容器が人数分。それは、オレ自作のポーション容器。
「お返しする」とバッケル。
「いや、今後のためにも――」
「いや。これは正直、持っていると、オレたちが危険だ。まるでエリクサーの如くの高い効能。これが知られれば、死人が出かねない。これまでは危険があったが、ここまで来ればもう使う必要もない。だから、お返しする」
ダルトンを見ると、うなずいた。
「わかった」と受け取り、収納。
バッケルたちは、ホッと安堵した。
「では、行こう。まずは、冒険者ギルドに寄ろう。帰還の報告をせねばならんし――」
そのとき、門の方から、ひとりの男性が駆けてきた。格好から冒険者だとわかる。何かあったのだろうか?
「サブさん!」
えっ、オレ? 知り合い?
「あっ、ゲイル! ゲイルじゃないか!」
駆け寄ってきたのは、《夜明けの星》のリーダー、ゲイルだった。
「サブさん、戻ってきたんですね」それからオレの後ろを見て、また驚く。「《探索の神獣》のみなさん!? 生きていたんですか!!」
彼らは怪訝な顔で、オレたちを見ている。“どういうこと?”という顔だ。それもそのはず。ダンジョンから飛ばされてきた、というのに、知り合いがいて、しかもそれが自分たちも知っている人間なのだから。
「ゲイル」とオレは彼の両肩を掴んで揺さぶった。「聞いてくれ」
彼がうなずく。
「冒険者ギルドのギルマスに、オレたちが帰還したことを伝えてくれ。内密に、だ。できれば、裏口から入りたい。騒ぎになるのは困るんでな」
「わかりました。この全員ですか?」
「ああ。それから門衛にも、騒ぐな、と言っておいてくれ」
うなずくと、彼は駆けていく。
※エリクサー
ウィキペディア参照。
本作では、幻の霊薬として、
この世界での実在は確認されていない。
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