011【試験結果】
「審査結果を聞きたいか?」とギルマス。
四人が並ぶ。
「「「「はい」」」」
「四人ともD級。ただし、ギリギリだ。一度の失敗で降格もあるから、そのつもりでいろよ」
「「「「はい」」」」
「それからパーティーとしては、E級だ。こちらもギリギリだ。いいな?」
「「「「はい」」」」
「以上だ。窓口に行け。冒険者ギルドにようこそ!」
「「「「ありがとうございました」」」」
四人が出入り口に向かう。そのあとを冒険者たちがブツブツ言いながら流れていく。
ギルマスは、その姿を目で追っていた。
オレはそんなギルマスに歩み寄る。ギルマスの視線がオレに向けられた。
「ギルマス、質問してもいいですか?」
「誰だ?」
「失礼しました。商人のサブと申します」
それを聞いて、苦笑い顔をするギルマス。
「嫌なものを見られたな」
「吹聴いたしませんので、ご安心を」
ホッと安堵するギルマス。笑顔になる。
「頼む。まぁ、ほかの冒険者たちが喋るだろうがな。それで?」
「あの四人、将来有望ですか?」
「もちろん。新人は誰でもそうだ。だが、あの四人はいい。もうひとり、まとめ役が欲しいところだな」
「まとめ役、ですか」
オレが考え込むのを待つギルマス。
「ちなみに、彼らは護衛依頼も受けられますか?」
「護衛? ランク的には受けられる。だが、あのチームワークではダメだな」
「実は奴隷を購入するつもりなのですが、元冒険者をと考えているのです。その冒険者に彼らを鍛えてもらえれば、と。どうでしょうか?」
途中、ギルマスの目が光った。なにそれ? なんかマズいこと、言った?
「その冒険者次第だが、知っているヤツがいる。ちょっと高額になるが大丈夫か?」
「まぁ、金額次第ですが。親が残してくれて、多少なら。それで大丈夫なんですか? その冒険者は」
「元S級冒険者だ」
「はい? そんな人がなんで?」
「依頼失敗だ。違約金を払えなくてな。しかも仲間のうち三人死亡、生き残ったもうひとりは大ケガして冒険者どころか、働くこともかなわない状態だ。彼自身もケガは負ったが治癒魔法で完全に治っている。だから違約金をひとりで背負い込むことになったってわけだ」
「なるほど。ちなみにどんな依頼だったんですか?」
「ドラゴン討伐だ。王様からの依頼で断れなかった。ドラゴン討伐なんて、トリプルS級冒険者パーティーでもなければ無理だ」
ありゃ。ドラゴンいるのね。しかもあの王様の依頼か。しかも無茶振り。可哀想に。
「王命でなければ、断れたんですか?」
「断るだろうな。ドラゴン討伐なんて無謀だ。おそらくだが、彼ならば、近隣の人命救助に行っただろう」
「正義感の強い人だった?」
「上級冒険者の誇りみたいなものだな。叩き上げだから」
「なるほど」
「よければ、紹介状を書くが?」
「お願いします。で、その人ならば、あの四人を護衛にしても?」
「あぁ。アイツなら指導はお手の物だ。ギルドで新人訓練をやってもらっていたからな」
「文句なしですね」
「あの四人、気に入ったのか?」
「ええ。将来有望ならツバつけておかないとね」
「なるほど。商人さんらしい」
その後、オレはギルマスから紹介状を受け取った。獣皮紙だよ。丸めてリボンを結んだもの。それに封蝋された。
それとギルマスから窓口のスタッフに護衛依頼の件を話してもらった。
冒険者たちにからかわれていた四人に、スタッフから声がかかる。四人が来るのを待って、スタッフが紹介してくれる。
「こちらの方から、あなた方に指名依頼です。依頼内容は旅のあいだの馬車の護衛です。期間は三ヶ月ほど。どうしますか? 断ることは可能ですが」
「さっきのを見てましたよね。いいんですか?」とエイジ。
「はい。あなた方の指導をする者も一緒ですから、不安はありませんよ」
四人は依頼を受けてくれる。当然だが。
お互いのカードで、雇用契約を結ぶ。専用魔導具が使われた。
もちろん、料金はギルドに前払いだ。依頼失敗や態度が悪い場合は、異議申し立てして認められれば、料金が返ってくる。さらに損害を被った場合は違約金が払われるそうだ。
「出発はまだ決まっていません。馬車の用意が少しかかるので。それまではこちらで待っていてもらいたいのですが。いいですか?」
四人の了承。もう少し、からかわれてもらおう。
面白ければ、ブックマーク、評価をお願いしますm(_ _)m




