106【名付けと名月ふたつ】
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少し短いため、3話連続投稿します(1話目)
「ところで、お名前を伺っても?」
「ないから、答えられぬな」
「そうですか。あっ、真名は教えられない、とかいうヤツですか」
「真名か? まぁ、あることはある。だが、おまえには発音できぬから、心配しておらん」
「なるほど。では、なんと呼びましょうかね?」
「付けてくれぬか?」
「名付けですか? あんまり得意じゃないんですけど」
「よいよい。気軽に呼んでもらえるならば、な」
「じゃ、ウーシュカから取って、ウーちゃん、でどうでしょう?」
「良いではないか。うむ、儂はウーちゃんじゃな」満足げ。
えっ、そんなのでいいの?
「で、ウーちゃん、鑑定してもいい?」
「女の秘密を覗こうというか」
両腕で胸を隠す。今さらなんだけど?
「はいはい。やめときます。でも、ここでひとりは、つまらなくないんですか?」
「つまらんな。しかし、もとの川に戻るわけにもいかぬしな」
「戻ったら気にいらないヤツがいるとか?」
「いやいや、そんなヤツ、すでに死んどる。川は水位の増減が激しいからな。ある程度以上には成長できぬのだ。儂はそんな将来の不安があっての。それで、ここへ来た、というわけじゃ」
「生きたいがために?」
「うむ。生きていれば、今日のようなこともある。隣人がおるというのは、うれしいことよ」
「でも、みんなとは話したくない、と」
「うむ。それにもうすぐここを出ていくのであろう?」
「ご存知でしたか」
「水中でもいろいろと聞こえてくるのでな」
「なるほど」
ふたりして、黙る。
空には、月がふたつ。
その向こうには、無数の星。
「さて、のぼせないうちに出ますよ」
「うむ」
構わず、出る。と彼女も出ようとする。
まぁ、いいか。
脱衣所に置いてあるタオルで身体を拭う。
別のタオルを彼女に渡す。
「これで何をするのじゃ?」
「身体の水分を拭く。ぬれたままだと風邪を引くから」
「わかった」
そういえば、彼女の服がないな。あぁ、裸で来たのか。オレの服を着せればいいか。あの胸、入るのかなぁ?
着せてみた。Tシャツにネルシャツを羽織れば、なんとかなった。下はパンツとズボンだよ。
髪はドライヤー(もちろん自作魔導具です。女子ふたりにねだられまして)で乾かす。彼女の髪は、意外と滑らか。
お互いに、イスに座って、冷えた果汁ジュース(冷やす魔導具、作ったよ。ダルトンがうるさいから)を飲む。エールはとっくの昔になくなっているし、ウーちゃんにエールはどうなのか、とは考えた。でも、ないので、悩む必要もないよ。
ウーちゃん、帰らず、うちで寝た。まぁ、彼女の家の庭ですから、文句も言えませんが。でもなんで裸になるの?
「苦しいのじゃ」と答えられた。
「腹出して、寝ないでください」
毛皮をかけてやる。
「聞いてもよいか?」
「なんです?」
「儂の身体、欲情せぬか?」
ブッ!
「何を言ってるの!? 欲情しないわけじゃないけどさ」
「おっ、そこは認めるのじゃな」うれしげ。「やるか?」
「ウーちゃん、人で遊んではいけません」
「あはは、冗談じゃ、冗談」とカラカラ笑う。
もう。
「おやすみ」
「うむ」
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