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第2部 第1話

「先生の彼女!」を読んで下さっている皆様、いつもありがとうございます。

お待たせしました(え?待ってない?)、連載を再開したいと思います。

これからは基本的には「先生~」と、西田穂波視点の「あの子の恋愛事情!」を

時間軸を揃えて同時に更新していきたいと思います。

とは言いましても、二つは別の作品ですし、片方だけでちゃんとストーリーは成立しています。また、ここから先はこの二つの作品の話が交わることが少なくなりますので、「両方読まないと意味がわからない!」といことはありません。

お好きな作品だけ読んでくださっても結構ですし、更新順に両方読んでくださっても結構です。


では、「先生~」第2部のはじまり、はじまり・・・

「28日から5日までは学校は閉じるから」

「ソワソワ」

「宿題の提出は全教科、始業式の日だぞ」

「ワクワク」

「進路のアンケートも始業式の日に提出だ。3学期の3者面談で使うから、

いい加減真剣に考えろよ」

「ドキドキ」

「・・・遠藤。うるさい」

「なんだよ、小声でしゃべってるだろ」

「一番後ろの席のお前の声が俺のとこまで聞こえるなんて、どんな小声だ。

てゆーか、先生がしゃべってんだから、小声でも話すな」

「先生?どこ?」

「・・・お前、今日居残り。職員室の掃除を手伝わせてやる」

「本城。せっかくのクリスマスイブなのに予定がないからってひがむな」


お前が言うな!!!

という言葉は、遠藤の横で照れくさそうにしてる藍原に免じて飲み込んだ。


「たく、訳のわかんねーおしゃべりしやがって」

「俺の心の声だから」

「はいはい。とにかく、今年1年お疲れさん。来年もよろしくな。

じゃあ、これで終わり」


俺の言葉が終わるか終わらないかのうちに、みんな元気よく「さよならー!」と、

見事なまでに声を合わせて言い、ガタガタと立ち上がり始めた。




12月24日

クリスマスイブで終業式。

生徒達が早く帰りたいのも当然だ。

いや、生徒だけじゃない。

教師も予定がある人が多いらしく、

まだ昼だと言うのに、職員室はもうお帰りムードだ。



「たく。みんな、ちゃんと仕事しろよな」

「本城君、せっかくのクリスマスイブなのに予定がないからってひがまないで」


さっき同じこと言われた気がするぞ。


「うるさい。どうせコン坊はデートなんだろ」

「まあね」


得意そうに笑うコン坊。

いつもはパンツルックだけど、今日はスカートだし。


宏とコン坊はうまく行ってるようだけど、

どうみても宏の方が惚れこんでて、コン坊に振り回されてる感が強い。

例の「宏の合コン」が、その歴史の古さと信頼性の高さから(?)、

今でも毎月開催されているため、コン坊に対して申し訳ないという気持ちもあるのかもしれない。


コン坊は彼氏が合コンに行っても妬く奴じゃないけどな。



顔を上げて、チラッと坂本先生の方を見る。

坂本先生もさっきの遠藤に負けず劣らず「ソワソワ、ワクワク、ドキドキ」と言った感じ。

おい。杉崎は受験生だぞ。クリスマスどころじゃねーだろ。


全く、どいつもこいつも・・・



「どうして月島さんと過ごさないの?」

「しー!」

「大丈夫だって。誰も聞いてない」

「・・・怖いから職員室では言うなって」

「はいはい。で、どうして?」

「弟の誕生日が今日で、毎年クリスマスイブは家族で過ごすんだと」

「本城君も混ぜてもらえば?」

「面白い冗談言うな、コン坊」





あれ以来、月島は毎週日曜の午後に俺の家に来ている。

といっても、期末テスト中は来れないし、

まだ3回くらいだけど。


しかも、知り合いに会うと困るので、出歩けない。

だから、家で話したり、映画見たり、月島が持ってきた数学の質問に答えたりしてるくらいだ。


・・・キス以上もできないし。



前回、月島が来た時、なんとなくそういう雰囲気になって、

俺は月島をベッドに寝かせてキスをしていると、

月島がお得意の「バッサリ切り捨て」をやりやがった。


「イヤです」

「・・・ダメ、じゃなくて、イヤ?」

「はい」


月島は昔教師にイタズラされたことがある。

だから、俺も「イヤ」と言って拒否されると尻込みしてしまう。


「そんなハッキリと拒否したら、嫌いになるぞ」

「・・・嫌いになるんですか?」


月島がちょっと悲しそうな顔をする。


「・・・冗談だよ。ならないけどさ・・・。いや?怖い?」

「怖いんじゃないです」

「じゃあ、本当にイヤなのかよ」

「はい」


出た。


「なんでだよ」


むぅっとふくれる俺に、月島はなおも容赦なく言う。


「なんとなく・・・罪悪感、みたいな・・・まだ子供なのに、こんなことしちゃダメ、

っていうのが、自分の中にあるんです」

「もう子供じゃないだろ・・・いつまで待てばいいんだよ」

「せめて、卒業まで」

「まだ1年以上もあるだろ!」


俺は身体を起こして叫んだ。

無理!

絶対無理!!


「・・・無理ですか」

「・・・だから、そういう悲しそうな顔するなって」

「だって・・・」

「いいよ、わかった。待つから」


俺がため息をつきながらそう言うと、月島は心底嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとうございます」

「まったく、どんだけ真面目なんだ」

「真面目とかじゃなくって。キスだってしたことなかったんですから・・・」

「してただろ、溝口と」


俺は思わず不機嫌丸出しで言った。

でも月島は俺のそんな表情には気づかず、他の事に気を取られていた。


「そう言えば、そうでしたね。私、溝口君にキスされたんだった。

あんなのがファーストキスなんて、やっぱりちょっと悲しいかな」

「え?あれが初めてだったのか?だって、中2の時・・・」

「キスなんてされてません」


じゃあ、本当に溝口とのあれが、初めてだったのか!?

うわ!溝口の奴!

って、ダメだって。

溝口も生徒だ・・・嫉妬なんてしちゃダメだ・・・でも・・・


「くーっ」

「先生?」

「なんでもない・・・じゃあ、中2の時って何されたんだよ」


ずっと気にはなってたけど聞いていいものか悩んでたのに、

思わずサラッと聞いてしまった。

でも月島もこだわりなく答えた。


「服の上から身体触られたくらいです」


そうか。そんくらいか。

いや、そんくらい、じゃないな。


「やっぱダメ。もう待てない」


俺は再び月島にキスをしながら身体に手を回したけど、

今度こそキッパリと拒否されてしまったので、それでお終い、となった。


ちぇ。

俺、本当に1年以上も我慢すんのか?

できるのか?

すげー、自信ないんですけど?





「じゃあね、お疲れ様、本城君」

「おー。宏によろしく」


俺がコン坊に適当に返事をすると、

俺の反対隣の席の人物も立ち上がった。


「お疲れ様、本城先生」

「森田先生・・・麻里さんによろしく」

「うん。あ、そうだ。歩君から伝言」

「はい?」

「『真弥からのクリスマスプレゼントはPSPでいいから』、だって」

「サンタさんにお願いしとけ、って言っといてください」

「あはは、じゃあ」

「はあ。お疲れ様です」



あー、もう!

なんか、以前と全く状況が変わってないのは気のせいか!?

むしろ、学校で月島と話す機会が減ってるし!


一人で腐ってると、携帯が震えた。

見ると、今日はもう帰ってるはずの月島からメールだ。


ちぇ。タイミングいいよな。

俺が不機嫌な時に、まるで機嫌取るかのように・・・

まあ、見てやるか。



『今日はごめんなさい。今から家族で食事に行ってきます。明日、お休みですよね?

朝から会いに行きます』



ふんっ。

こんなんじゃ、俺の機嫌は直らねーぞ。

こんなんじゃ・・・



仕方ない。帰って掃除でもするか。



あーあ、俺も宏のこと言えねえ。





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