表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/88

第1部 第39話

日曜日。

まだ熱は下がりきらないけど、昨日よりだいぶ楽になった。


もうすぐ昼だ。

ようやく食欲も戻ってきた。

月島が買ってきてくれたゼリーとフルーツを食べよう。



月島・・・



俺はベッドに転がったまま、天井を見つめ昨日のことを思い出した。


これから、どうなるんだろう。






月島を抱きしめてしまった俺は、もう言い逃れができなかった。

もちろん覚悟して、月島を抱きしめたはずだったのに、

いざとなると言葉が出てこない。


俺ってこんなに臆病だったか?


月島もどうしていいかわからないようで、

俺に成されるがまま、ただ突っ立っていた。

多分、また俺が熱で朦朧としてるとでも思ってるんだろう。


違う、違うんだ。

今度は違うんだ。


でも、余りの気まずさに、いっそそういうことにしてしまおうか、なんて考えまで頭をよぎる。


いや、いくらなんでもそれは卑怯だろう。


どうしよう。言ってしまおうか。

せっかく今まで我慢してきたのに・・・



「はあ~。もういいや、諦めた」

「・・・何をですか?」


俺は月島を抱きしめたまま、月島の肩に顔をうずめた。


「俺さあ、月島のこと好きなんだよな」

「へ?」


俺の胸で月島の身体が強張った。


「・・・何馬鹿なこと言ってるんですか」

「馬鹿ってことはないだろ。本心だ」

「・・・」


さあ、どうする月島。

怒るか?

泣いて喜ぶか?


「・・・どうして今更急にそんなこと言うんですか」


月島はドンっと俺の胸を押して、

俺から離れようとした。

俺が月島を抱きしめる力がもう少し弱かったら、離してしまってただろう。


「離してください!」


月島は顔を上げた。


「・・・」


俺は驚いて言葉がでなかった。

月島はポロポロと涙を流しながら怒っていた。


そうきたか。

泣いて怒るのか。

最悪のミックスだな。


でも、ここまできたら俺も負けられない。

もう一度月島を抱きしめ直して言う。


「本当はずっと好きだったんだよ。月島が好きって言ってくれた時も嬉しかった。

でも、我慢してた」

「・・・」

「だけど、もう気持ちを隠すの諦めた」

「諦めないでください」

「もう遅い」


それから俺は思い切って、ずっと聞きたかったことを聞いた。


「まだ、俺のこと好きか?」


返事はなかった。

でも、すごく長く感じられた沈黙の後、

月島は小さく頷いた。


それからしばらく、俺は無言のまま月島を抱きしめていた。

月島も黙ったまま、ただ泣いていた。




「・・・先生」


俺に抱きしめられたまま、月島がようやく口を開いた。


「ん?」

「私、帰ります」

「・・・この状態で帰るのかよ」

「だって、もう時間が」


確かにもう8時だ。

でも、な。


「だめ」

「だめって・・・帰らせてください」


月島が身じろぎする。


「じゃあ、キスしてい・・・」

「ダメです」


俺が聞き終わらないうちに、月島が答えた。


「お前、今ほとんど条件反射で答えたろ」

「ちゃんと考えても、ダメです」

「却下」


俺はそう言って、ちょっと強引に月島にキスをした。



一瞬強張る身体。

驚くほど柔らかい唇。

俺の手に触れるサラサラした髪。


そんな些細な一つ一つのことに、

自分でもビックリするくらい緊張した。

気を抜いたら身体が震えそうだ。


静かな部屋の中で、自分の心臓の音が聞こえる。



なんだよ。いくら好きな女だとは言え、キスしてるだけだろ。

何を年甲斐もなく緊張なんて・・・


しかも、なんか怖くってそれ以上できない。


ただ唇を合わせてるだけ。


でも離せない。




ようやく唇を離すと、月島はすぐにまた俺の胸に顔をうずめた。

上から見てもはっきり分かるくらい、耳まで真っ赤だ。


でも月島が顔を隠してくれてよかった。

多分、俺も真っ赤だから。


今なら、熱のせいにできるかな?


俺はもう一度、月島を強く抱きしめた。




「先生。もう無理です。恥ずかしくて死にそうだから帰らせてください・・・」


モゴモゴと月島が言う。

相変わらず真っ向から面白い奴だ。


「うん。わかった。でもまた来いよ」

「・・・はい」

「明日」

「明日?ダメです」

「なんでだよ」

「風邪、早く直してください」

「・・・じゃあ、月曜・・・って平日は無理だな」

「来週の日曜なら」

「だめ。遅い。やっぱり明日」

「・・・はい」






時計を見る。

もうすぐ1時だ。

そろそろ月島が来る。


俺は熱が上がらないように、少しだけ部屋を片付けて、

食べれるものは食べて、またベッドに入った。


全然寝れない。


仕方なくまた起きて、ソファーに寝そべりながらテレビを見ていると、

インターホンが鳴った。

モニターを見ると、ちょっとソワソワした表情の月島。


ぷぷ。

ほんと、面白い奴だなー。



これからどうなるんだろう、なんて悩みは一瞬で消し飛び、

俺は笑いながら、ロックを解除した。






「先生の彼女!」を読んで下さっている皆様、本当にありがとうございます。このお話は全3部構成になり、第1部はこれで完結です。

このまますぐに第2部を開始したいところですが、その前に「○○の××!」シリーズ第3弾、「あの子の恋愛事情!」の連載を開始したいと思います。

(ストーリーの構成上、そうした方が面白いので・・・)

こちらも舞台は朝日ヶ丘高校ですが、別視点のお話となります。

さて、「あの子」とは誰でしょう・・・?R-15指定のちょっとエッチなお話ですので、苦手な方はご遠慮ください。

「あの子の恋愛事情!」が終わり次第、「先生の彼女!」を再開いたします。

また、同時に「アイドル探偵」の連載も開始します。これは推理物ですので、雰囲気が全く違います。ご興味のある方は、是非ご覧ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ