運命の選択
魔王室は静けさに包まれ、豪華な装飾が施された部屋の中央で、マンタティクスは椅子に座っていた。
ゆっくりとドアが開かれ、ネバーが入ってくる。
「ネバーさん、ハルカから緊急通信が入ったけどその話ですか?」
「あぁ、まずはこれを見てくれ」
ネバーがそう言うと、音もなくルシが後ろから現れた。
黒い片翼を広げ、露出の多い黒と赤の衣装を身にまとったその姿は、異様な美しさと威圧感を放っている。
「なっ!?」
マンタティクスは瞬時に立ち上がり、構えを取った。
その目は鋭く、敵意を隠さない。
「待てマスター」
ネバーが冷静に手を挙げて宥めた。
「どういうことですか!天使が!なぜ!」
ルシは軽く微笑むと、室内を見渡しながら、ゆっくりと歩み寄った。
「どうも、私はルシ……“元”天使よ」
彼女の声は柔らかく、しかしどこか挑発的な響きを含んでいた。
「「元?」」
「あら、2人とも同じタイミングで言葉が出るなんて、仲良しね」
「デスフェニックスを討伐している時……天使の魔法の矢が見えた」
マンタティクスは鋭い視線をルシに向けた。
「お前ではないのか?それを失敗したから天使の肩書きを失ったとか?」
ルシは小さく鼻で笑い、肩をすくめる。
「アナタ、仮に私が天使だとしたら大問題の発言よ?マスターの方はあまり頭が良くないようね、おぼっちゃん」
彼女の言葉には嫌味が込められていたが、その表情は涼しげだった。
「あの愚か者たちと一緒にしないで」
天使の事を愚か者と言うあたり、何かあったのかは確実だが、ルシはその場を支配するかのようにゆっくりと話し始め主導権を握る。
「安心して、私はこの場であなたたちに選択肢を提示しに来ました____【神の使徒】として」
「神の使徒だと」
「しかし、ネバーさんの話だと男と聞いていましたが」
神の使徒という言葉に反応を示す2人。
「えぇ、ルコサとは知り合いよ、それ以上でもそれ以下でもないわ」
必要最低限の話だけして話を進めるルシ。
彼女の黒い片翼がゆらりと動き、露出の多い衣装が魔王室の冷たい空気の中で際立っている。ルシは意味深な笑みを浮かべ、ゆっくりと右手を上げた。
「さて、選択肢を提示しましょう」
ルシの声は冷たく響き、部屋全体に緊張感を生み出した。
「一つ目。」
彼女は指を一本立て、視線をマンタティクスに向けた。
「この世界の支配者、魔神がいる場所への道」
「二つ目」
ルシはもう一本指を立てる。
「あなた達がいた人間達の街を救う道」
「三つ目」
最後に三本目の指を立てた彼女は、微笑みを浮かべながら視線を二人に巡らせた。
「未知なる聖域の核心へ向かう道、もしかしたら、元の世界へ帰るための手がかりがあるかもしれないわ」
「っ!?」
「元の世界って、ネバーさんの故郷の……」
マンタティクスはネバーと過ごしている間に元の世界の話を聞いている。
【作成】の能力を使って物を作る時も元となっていることが多い。
「その選択……何か代償はあるのか?」
マンタティクスが問いかける。
「フフ、代償だなんて。すべては選んだ結果次第よ」
ルシは軽く肩をすくめた。
「ただ、どの道も簡単なものではない。すべての結果はあなたたち次第」
「選択は……すぐにはできない。」
その言葉に、ルシは微笑みを深めた。
「ならば、次に会うときまでに決めておきなさい」
彼女の姿は魔王室から消え去った。




