決戦の時
結局、街にいた魔族たちはほとんど逃げずに集まった。
帰る場所もない者達、そんな人達に安らぎの地を提供してくれていた魔王の為なら死ねるという意思を持つものばかりだ。
マンタティクスは一歩前に出て、集まった者たちを見渡し、静かに口を開く。
「皆、集まってくれてありがとう」
その一言で、広場に静寂が訪れた。全員がマンタティクスの言葉に耳を傾けている。
「聞いての通り、デスフェニックスという災害が迫っている。だが、恐れることはない……我々には力がある」
彼の声は力強く、確信に満ちていた。魔族たちの目には希望の光が宿り、彼らの士気が一気に高まっていく。
「皆の力を合わせれば、必ずやこの災害を乗り越えられる!我々は一つの国、一つの家族だ!」
マンタティクスの言葉に、魔族たちは拳を握りしめ、決意を新たにする。
『家族』
犯罪者として追放され一人で生きていた者達はその言葉の重みを何よりも知っている。
「今こそ、我らの居場所を自らで勝ち取るのだ!」
マンタティクスは歓声を背にしながら幹部達に指示を出し、ハルカとエスの方へ来た。
「ハルカ、エス、君たちは私についてきてくれ」
二人を連れてやってきたのはハルカが剣をもらった武器屋。
「その剣と弓をここに置け」
ハルカは剣を指定された机の上に置き、エスの弓もその隣へ置く。
「今から戦う相手に対してこの武器達はあまりにも脆すぎる、俺がさらに強化しよう」
彼は二人の武器に触り、異能『作成』を発動させる。
すると、周りの武器達が光り輝き、剣と弓に吸い込まれていった。
「これを」
「はい」
ハルカが剣を持つと、それはまるで細い木の枝を持っているかのような感覚に陥った。だが剣を床に接触させると鈍い音を立てる。それほどに軽く、振りやすく、強力。
そしてエスの弓は、手作りで作ったような不恰好な弓ではなくなり、弓の表面には精緻な魔法のルーンが浮かび上がり、光を放ちながら流れ動いている。
「その武器達には様々な能力が宿っている、きっと助けになるだろう。それとこれを」
マンタティクスは次に神秘的な無線機を差し出した。
「これは通信機だ、これで連絡を取り合う」
ハルカはその無線機を手に取り、細かく描かれた美しい彫刻や、淡い光を放つルーンに目を見張る。
「こんなに……精巧なものを……」
「…………」
マンタティクスは迷いなく耳につける二人を見て、少し和らいだ表情を見せた。
「フッ……やはり二人とも人間だな」
「?」
「どういうことだ?」
「その道具はネバーさんが元の世界にいた時の物を聞いて俺が作成した……それを迷いなく耳につけたので知っていたのだろう?魔族は知らない形状だからな」
「なるほど……」
ネバーという言葉が出るたびにハルカの心に針が刺さるような感覚。
マンタティクスもそれ以上言わずに二人は幹部達の通信とマンタティクスの指示を無線で聴きながら魔王城へと向かった。
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全員が配置につき、魔王城の屋上からハルカ、エス、そしてマンタティクスは夜の暗闇が明るくなっている方向を見つめていた。
{魔王様、ここから5キロほど離れた所に大きな熱源反応を確認しました}
耳につけた無線機から報告が入る。
「あぁ、此方でも見える……まるでもう一つの太陽だな」
{攻撃を開始しますか?}
「やれ」
{御意!}
無線機を通じて命令が伝わると、アルカディア全体が動き出した。
まず、巨大なミサイル発射台が次々と起動し、夜空に向かって無数のミサイルが発射された。ミサイルの軌跡が空に光の帯を描き、その音が空気を震わせる。
同時に、街の各所に配置された魔法陣が一斉に発動する。魔法陣の中に刻まれた複雑なルーンが光を放ち、巨大な魔法の力が集まっていく。
「これが……アルカディアの全力……」
ハルカはその圧倒的な光景に息を呑んだ。
エスもその威力に目を見張りながら、弓を握りしめる。
「デスフェニックスを……倒すんだ」
魔王城の屋上から見える光景は壮絶だった。ミサイルが次々と発射され、魔法陣から放たれる光が空を切り裂くように進んでいく。
「全ての力を注いで、奴を止めるんだ」
マンタティクスの言葉に、ハルカとエスもその意志を共有し、決意を新たにした。
「さぁ、決戦だ!」




