天使の降臨
彼女は白く美しい翼を広げ、太ももまである艶やかな黒い髪が風になびいている。
白い肌は純潔そのものの輝きを放ち、まるで絵画から飛び出してきたかのような美しさだった。
住人はその姿に驚愕し、畏敬の念を抱きながら見つめる。
「……天使だ……」
誰かが呟いたその言葉に、周囲は一気にざわめき立った。
「天使がここに……?」
天使はその声を聞いても微動だにせず、ただ静かに中央へ歩いていく、彼女の目は冷たくも優しく、どこか厳しさを感じさせる。
「美しい……」
ハルカはその姿に息を呑み、エスもまた、その威厳に圧倒されていた。
「天使……聞いたことがある」
エスは天使についての知識を少しだけ共有する。
「魔王よりも強く、世界を束ねる最強の存在」
ハルカはその言葉にさらに驚きを覚えた。
「てことはこの世界の__」
ムギニはすぐ天使の元へ行き跪く。
「て、天使様……」
何の用で来た?その質問を口に出すのも恐ろしい。
少しでも失礼な態度を取ると殺される。
その時、マンタティクスが現れた。
彼の表情は冷静そのもので、天使に対して一歩も引かない。
「天使様、何の用ですか?」
天使は静かに微笑み、答えた。
「私はアルカディアの現状を確認しに来ました、ギルドの支援が受けられなくなった犯罪者や罪人が集まっている場所が、一つの国家として機能し始めている……当然、噂になり私の耳に届くでしょう」
「そうですね」
「私が来たと知って攻撃しなかったことは、称賛に値します」
「光栄です」
「さて__」
天使は周りを見る。
「やはり犯罪者……さらには犯罪を犯してない人もここにいるみたいですね?ある意味ここはブラックマーケット、珍しいものも手に入るのでしょう」
「ここアルカディアは、そうした者たちが集まり、互いに協力して生きている場所です、ここでは物々交換が主な取引方法であり、皆が自らの力で生き延びている」
「生き延びているのが問題とは思いませんか?この中には誰かの親を殺し追放された者も居ます、そんな人が何も考えずにこんな所で生き延びていると知るとどう思います?」
「だとしても、それは僕のミスではありません、気に入らないならその場で斬首などすれば良かったのでは?追放されると言うことはそう言うチャンスをアナタ達が与えたのでしょう?」
天使は再び微笑んだ。
「あなた達が正しいと?」
「何が正しいのかは分かりません、ただ……みな生きる為に一生懸命なんだ、僕も気がつけばここに辿り着いた」
「なるほど、自分はしたい様にした結果この荒くれ者達の巣窟の魔王にまでなったと?」
「魔王と言ってるのは周りのみんなが言うだけです」
天使は微笑みを浮かべて答えた。
「いいえ、魔王と言うのはそう言うものです、自分の力を使いテリトリーを広げ街が出来て国になっていく……さて__」
「?」
「条件次第ではここを国として認定しましょう、ギルドも配備させるつもりです」
「……」
「どうしました?喜ばないんですか?」
「条件、というのは?」
「何の気にする事ありません、どこの魔王もしている事です」
「だから、何ですか?」
「3日後、災害『デスフェニックス』が来るので魔王としてここを護りぬいてください」




