背中を押す声
数週間が経過し、ネバーは再び砂漠に足を踏み入れた。
「また同じ……」
何回も何回も、人は俺を頼ってくる。
だが頼ってくるのは老人達。
純粋な子供達は母父を生贄にした勇者という称号を継いだ俺の事には関与せず。
少し事情がわかっている中学生程の子達はどうしたらいいのか解らないのか目を合わせずにそそくさと視界に入らないようにする。
誰のおかげで飯が食えてるんだ?
そんな考えもあったが、今はもうその感情すらない。
砂漠の広がる地平線を見つめながら、彼は重い足取りで進む。
砂の感触、灼熱の太陽、乾いた空気。
すべてが彼の心を一層重くする。
「これが……俺の一生なのか……」
彼は心の中で自問しながら、無言で砂漠を歩き続けた。
魔物との戦闘が続く中、彼の内面の苦しみは増していく。
「来い……」
再び現れたサンドワームに対して、彼は冷静に構えた。
一撃でその巨体を打ち倒し、その後も次々と現れる魔物を容赦なくまた殺していく。
「……」
いつもの様に雑に力技で結んでいたが、頭が真っ白になりその場で座り込んだ。
「……………」
何時間、何分経ったのだろう、魔物の死骸が砂漠の暑さと放射線で腐っていくのが見える。
「これで本当に……いいのか……?」
魔物の死骸の腐敗した臭いが彼の鼻をつき、心の奥に広がる虚しさが彼を包み込む。
「……」
ネバーは頭を抱えた。
「俺は……」
その時、背後から聞こえてくる声。
「ネバーっ……」
振り向くと、そこにはみやが立っていた。
「みや……」
「ぃぃ加減にしなょ……こんなことしても、ハルカは帰ってこなぃよっ」
みやの言葉に、ネバーは顔を上げた。
「だが、俺が居なければ人間は滅びる」
「そぅ?もぅ一人、ネバーほどじゃなぃけど最強がぃるけど?」
そう言ってみやは自分の胸に手を当ててくるりと回った。
「?」
「ぇ……」
「……」
「ぃ、ぃや……私……」
「はははっ、冗談だよ」
少し乾いた笑いだが、ここ最近笑っていなかったネバーにとってはありがたかった。
「探しに行かなきゃっ……ハルカはあなたを待ってるかもしれなぃっ」
「……」
みやの言葉が彼の胸に響く。
ハルカは途中で死んでいるかもしれない。
だが、みやは死んでいないと言うのだ、生きていて何か行動をしていると__
ネバーは立ち上がり、みやの顔を見つめた。
「みや……」
「元々私は魔王様の所で食べられるよぅに育った人間……むしろ、これが私の生き方だったのかもっ」
これから先、ハルカ、ネバーに続いてみやがこの重荷を背負うというのだ。
ネバーを近くで見てきたみやがそれを解らない訳がない。
どんなに苦しいことかも分からないわけがない、だが「行け」と言うのだ。
「……すまない」
ネバーはそれだけ言って砂漠を歩き始めた。
「ぃってらっしゃぃっ」
彼には声は届いていない。
もう既に彼はきた時と同じく、飛んで行ったのだから____
心を蝕む毒。
それは判断を鈍らせ、自分の事しか考えられなくなる事に気づいていない。
「逃げ道」という解毒剤を渡せばすぐに食いつく。
だが、それすらも気付かない。
「さ、舞台は整ぃましたっ、ぁとは私の身体をお使いくださぃ」
『解毒剤』という毒に____
「魔王様」




