勇者の重荷
デザート・スコリピクスの討伐を終えたネバーとハルカは、砂漠の夜の冷たい風を避けるために焚き火を囲んでいた。
焚き火の炎が静かに揺れる中、二人はしばらく無言で過ごしていたが、やがてハルカが口を開いた。
「ネバー、あなたも勇者だって言ってたけど……どうして今までそれを隠していたの?」
ネバーは焚き火を見つめながら答えた。
「隠していたわけじゃ無い、言うタイミングがなかっただけだ」
「そう……もしかしてだけど、あなたも召喚されたの?」
「あぁ、そうだ」
ネバーの言葉にハルカの顔が一瞬硬直した、焚き火の炎がその瞳に揺れ動く。
「私、ここに来る前は普通の女子高生だった。でも、召喚された後、突然勇者としての役割を与えられて……ずっと重い責任を感じているの」
ネバーは静かに頷いた。
「責任というのは、時に重すぎて押しつぶされそうになるものだ。だからこそ、誰かと共有することで少しでも軽くなることもある」
ハルカはその言葉に聞いて我慢できずに涙を浮かべた。
「ありがとう、ネバー。そう言ってくれるだけで救われる気がする」
ネバーはそんなハルカを見ずに焚き火を見ながら言った。
「いつでも君の力になるよ」
ハルカが涙を拭いながら言葉を続ける。
「あなたは強いのね……私と同じ責任を背負ってるのに」
「責任?」
ハルカは一瞬戸惑い、質問をする。
「生贄の話よ?」
ネバーは一瞬驚いたが、すぐに冷静さを取り戻した。
「生贄?いや、私はマスターから直接召喚されたんだ」
ハルカはその言葉に驚きを隠せなかった。
「マスター?え?そんなことが……あるの?」
ネバーは頷き、自分が召喚された時のことを話し、ハルカは深く考え込むように焚き火を見つめた。
「あの街には老人と子供しかいなかったわよね」
「あぁ……」
ネバーは静かにうなずいた。
「大人たちは、みんな勇者召喚の儀式で生贄にされてしまったの」
ネバーは驚いた表情を見せたが、すぐに冷静さを取り戻した。
「それが……君が背負っている重い責任の一つなんだな」
ハルカはうなずき、再び涙をこぼした。
「そうよ……老人たちはともかく、子供たちがね、言うの『お父さんを返して!』『お母さんを返して!』……って」
「……」
「私だって頼んだわけじゃない……だけど、どうしたらいいか分からない、どう考えたらいいか分からない__っ」
ネバーは優しくハルカを抱きしめた。
いくら自分をいじめていた相手とは言え、それ以上の重荷を背負わされている彼女の境遇に、同情の念が湧いてくる。
もしかすると今のハルカは、死よりも辛い現実を生きているのかもしれない。
「ありがとう……ネバー」
ハルカは再び涙を浮かべながら、ネバーの手を握りしめた。
「ありがとう……本当にありがとう、ネバー」
彼女の言葉は心の底からの感謝だった______
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