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もう、いつ死んでもいいの

 深森があまりにも心配するので、俺も彼女の意見を入れて、まずあの小学生くらいの女の子にコンタクトする気になった。


 かといって連絡方法を知っているわけじゃないが、しかし俺は、なぜかあの子は必ずうちのマンションに注意を払っている気がする。


 となると、やりようはある。


 というわけで、俺は一時帰宅して、自分の部屋の窓の外側に紙を貼り、そこに大きく×の印を入れてやった。もちろん、赤字で。

 これで、なんとかなるんじゃないか?


 所詮、テレビのナントカファイルを真似たやり方だが、この場合は通用するような。


 時に、母親はなぜか留守だったのだが、そうと知ると、深森は自分の部屋に誘ってくれた。

 断る理由もないので、俺も彼女について部屋を訪問した。





「おお!」


 さてはおまえ、ヤンデレだなっ。 

 うちと間取りは同じだが、入るなりそう言いたくなる部屋だった。

 キッチンを含めて、各部屋に必ず一枚は俺の似顔絵が飾ってあるのだが、特に深森の私室と寝室は凄いぞ。


 四方の壁に、ジャンジャン俺の絵があるからな。

 再びこんなのを見るとは。


「いやぁ……俺、深森の部屋以外で自分の自画像なんか見たの初めてだけど、おまけにこの量は凄いな」


 誰だよおまえ? と言いたくなる、スペシャル美化された俺の顔やら全身像が、あちこちにある。全部、プロ級の腕前だしな。





「本当に、深森にはこう見えているのか? 違うよな?」


 思わず呟くと、深森がうっとりと俺の顔を眺めて言う。


「わたしの今の実力だと、まだ全然ちゃんと描けていないの」


 寂しそうに答え、そして付け加える。



「シュン君……愛しているわ」



 俺が告白してからこっち、遠慮がないな!


「い、いや、俺もだけど、そう言われると気恥ずかしいなっ」


 思わず赤くなったし。

 友人のこともあるし、緩んでる場合じゃないんだが。


「絵じゃなくても、言ってくれれば、いつでも撮影に応じるよ……前みたいに」


 密かに期待して口にしてみる。

 前の記憶が残っているのなら、その返事でそうとわかるはずだが、あいにく深森は全然違うことを申し出た。


「あの……今なら……抱いてくれますか?」

「えっ――て、ああ、抱っこね」


 お姫様だっこの話だと思いだした俺は、慌てて頷く。

 この子は言い方がストレートなので、いろいろヤバい。


「じゃあ、抱き上げるから、そのまま立ってて」

「……はい」 


 その潤んだ瞳、やめてくれ。緊張するじゃないか。

 あと、自慢じゃないが俺は、まともに女の子をお姫様抱っこした経験なぞ、皆無である。

 そこでやや斜め後ろから、たおやかなこの子の肩あたりに手をかけ、慎重にコトを進めようとした――が。


 深森が切ないため息をついて一気に体重を預けたので、焦って思いのほか素早く抱き上げてしまった。


 背後にそのまま倒れこむって、なかなかできるものじゃないだろうに。





「だ、大丈夫だ。ちゃんと抱き上げたぞ!」


 正面の壁に掛けられた俺の自画像(イケメン率数倍)が、「よくやった!」と言いたそうに正面にある。

 セーラー服姿の深森は、うっすらと頬を染め、赤子のように俺に抱かれていた。


「夢が叶ったわ……嬉しい……もう、いつ死んでもいいの」

「やめてくれ!」


 思わず、抱き上げたままの深森を揺すった。

 胸も一緒に揺れて、焦っちまったけど、戸惑いは継続中である。


「そうさせないために俺はっ」


 途中で、「しまった!」と思って口を閉ざしたが、深森は静かに微笑した。


「ええ。あの子から聞いたから、今は知ってるわ」

「ま、マジかっ」


 となると、あのちび助、やっぱあの窓から覗いてたわけかっ。

 そしておそらく、ループの間の俺の行動も全て――


 ……その時、俺のスマホがなった。


 思わず二人で顔を見合わせる。

 場合が場合だけに、二人共この電話が、悪い知らせだと予感したのだろう……多分。


お久しぶりです。

大多数の方には関係ない話ですが、実は某賞の途中選考に本作が引っかかってて、それもあって一時更新止めてました。

アクセスも落ち気味でしたし、むしろ触らない方がいいような気がしまして。

(そういう時って、大抵は更新する度に落ちるので)


でも、もう落選決まりましたし、今日からボチボチ更新再開です。

自分のペースなんで、相変わらずのんびり更新ですが。


あと、新作も更新始めてるので、よろしければそちらもどうぞ。

それでは、引き続き最後までよろしくお願いします。

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