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ブラックライダー? 誰?

 こっちは、特に深い考えがあって答えたわけじゃないんだが。


 俺の相談と言えば、礼によってタイムリープ系のことなので、次に相談する時の前予告みたいなものである。しかし……なぜかこの時、藤原の顔色がはっきりと変わった。

 一気に血の気が引いたと言ってもいい。


 ちょっと尋常な様子ではなかった。




「……え、えっ?」


 きょとんとした俺を見て、しかし藤原は「ふうっ」と息を吐いた。


「ごめん、勘違いだったようだね。考えてみれば、片岡君があいつと関係あるはずないか」

「あいつ?」


 まさか深森のことかと俺はぎょっとしたが「妹だよ、うちの不肖の妹」と言われて、ほっとした。


「なるほど……いや、妹さんのことは、そもそもいたことすら知らなかったけど、確かに俺は関係ないと思う」

「うん、わかってる。僕が疲れてたせいだ」


 藤原はいつもの温厚な言い方で頷いてくれた。


「でも、君もよくないよ?」 


 なぜかそこで声を潜めた。


「今はこんな時代だ。もちろん聞こえてくるのは単なる予兆とか無駄な脅しばかりだけど、一昔前までと違う時代になってるのは明らかなんだ。相談にはいつだって喜んでのるけど、あまり僕以外の人の前で、超常現象なんてセリフは出さない方がいいよ」

「お、おお……」


 さっぱりわからないけど、俺はひとまず頷いておいた。

 今はこんな時代だ、とニヒルに言われても、来たばかりの俺にはさっぱりなんだが、まさかそんな弁解もできない。


 後で、グーグル先生にでも尋ねればいいさ。

 藤原は憔悴している以外はもうすっかりいつものこいつに戻り、「じゃあ、また明日」と片手を上げて教室を出て行った。


「ああ、またな」


 俺も笑顔で送り出してやったが……なんかこう、微妙なところで前と違う変化があるようだな、この時間軸。


 俺達にとって、まずい変化じゃないといいんだが。





  


朝の立て続けの出来事以外は、もう妙なことは起こらなかったが、休憩時間にスマホでネット検索した結果、俺はこの時間軸における、前とは大きく違うところを発見した。


 ……それは、仮呼称「ボーダー(境界)」と呼ばれる存在が脚光を浴びていることで、ネットのまとめサイトのお陰で、だいたいの詳細がわかった。


 一連の事件の発端は、五年前の2013年に始まっているらしい。

 その時期からこの2018年にかけて、「なんらかの異能力を持つ者」とおぼしき犯罪者による、実現不可能な犯行が増えていて、腰が重かった政府も、とうとう政府広報で注意を呼びかけ出したという。


 ……どこのラノベ設定だと俺は思ったが、検索を続けても、他の話題に交じってボーダーの事件はしっかり引っかかった。

 しかし、第三者的立場の俺から見れば、未解決事件はみんな謎のボーダー達のせいにしてる気もするが。




(妙な世界にきちまったな)


 俺はそう思いはしたが、この時点で本気で警戒したわけじゃない。

 午前中の授業では、深森が前と同じく、またしても俺の背中をキャンバスにしていろいろ書いてくれて、そっちの方に気を取られまくりだった。


 あいしているわ、などと書かれると、もう集中力なんてふっ飛ぶからな。


 本人の前でここまで自分の好意を隠さない子って、もしかして希少なんじゃないかと思う。俺が付き合い始めた女の子は深森だけなので、本当のところはわからないが。




 昼休みを挟んで午後になると、本日は体力測定の日らしい。

 これも前と違うが、もう今更だろう。


 最初の体育館での握力測定や懸垂回数の測定など、何の意味があるのか不明な測定が終わると、最後はグラウンドで百メートル走が待っていた。

 その時の俺は、隣席の谷垣や情報通の池谷などと一緒にベンチに座り、ダルい思いで走る順番を待っていた。


「藤原の奴、優等生のくせに今回は上手く逃げたよなあ」


 谷垣が早速、ぶつぶつボヤいていた。


「まったくだ」


 しかし、意外にも池谷もうんざりした顔で賛同する。


「俺も体調悪いとかの理由で逃げるべきだったぜ……高二にもなって、なにが体力測定かと。でも、おまえは楽しそうだな、片岡?」


 なぜか恨めしそうに見られたので、俺は言ってやった。


「逆に考えてみろ。大半の時間はぼおっとできて、しかも今なんか女の子の健康的な姿も見られる。普段の授業中よりマシだろ」

「うん。最後の部分のみ、一理あるな!」


 現金にも谷垣が目を輝かせた。


「知ってるか? もう日本中探しても、ブルマを採用してる学校って、ほとんどないんだぜ」

「けどな……うちのクラスの女子達はちょっと鑑賞に堪えるレベルが少ないというか……別次元のウルトラビューティーがいるっちゃいるけど、その子は不良だしな」


「そんなこと言ってると、ブラックライダー当人の耳に入って、グーで殴られるぞ」

「……よせやい。いくら俺だって、そこらで触れ回るわけないだろ」


 狼少年の池谷は、谷垣に慌てて手を振った。

 ていうかブラックライダー? 誰だそれ。

 てっきり不良=深森の話だと思ったので、俺は尋ねてみた。


「誰の話?」 


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