六十四話 ナツイロ王国
一週間後――
「あれがナツイロ王国か」
船の甲板の上から遠くを見つめるサヤ。
視線の先には緑豊かな島が広がっていた。
その島こそが、サヤたちの今回の目的地、ナツイロ王国である。
ナツイロ王国は小さな島国であり、王都ルナは港と繋がっている。
しばらくすると、船は王都ルナの港に到着する。
荷物の整理と身支度を終えると、一行は一週間ぶりに大地を踏む。
「う〜ん!」
【空気がカラッとしていて気持ちいいいのう!】
燦々と降り注ぐ太陽に照らされ、気持ちよさそうに伸びをするアリサとシグレ。
港にはたくさんの船が停まっており、漁師たちが元気にやり取りをしている。
「お兄さんたち〜! よかったらココナッツジュースはいかが?」
サヤたちが港の中を進んでいくと、そんな声が聞こえてきた。
声のした方向を見ると、何やら木の実を持った少女が屋台の中から反対の手を振っている。
「なんだ、そのココナッツジュースとやらは?」
屋台に近寄り、興味津々といった様子で少女の持つ大きな木の実を見つめるサヤ。
「これはココナッツっていって、中にたくさん果汁が入ってるんだよ。とっても甘くて美味しいよ〜!」
「ふむ、それなら人数分くれ」
「お買い上げありがとうございま〜す!」
サヤの言葉を聞くと、少女はココナッツの先端を切り落とし、木で出来たストローを刺してサヤたちに手渡す。
「あら、ほんとに甘くて美味しいわね」
「んにゃ〜、甘いのにさっぱりしてるにゃん!」
ココナッツジュースを飲みながら、マリナやヴァルカンを始めとした面々がそんなやり取りを交わす。
「よし、まずはダークの主人を探すとしよう。どこに向かえばいいのだ?」
ココナッツジュースを堪能しながら、サヤはダークに問いかける。
『サヤ殿、まずはこの王都にある冒険者ギルドに向かおうと思う』
「きっとダークちゃんの情報を集めながら、ギルドで冒険者としての依頼をこなしているはずにゃん」
「よし、では向かうとしよう」
ダークとヴァルカンの言葉に頷くと、サヤは皆を連れて馬車停へと歩き出す。
(サヤ殿よ、妾のことを一番に考えてくれて感謝するぞ……)
サヤの後ろを歩きながら、心の中でもサヤに感謝の念を送るダーク。
もうすぐ……もうすぐ、敬愛する主人に会えるのだ……。
大きな馬車に揺られながら、都市の表通りの景色を堪能する一行。
街行く人たちは皆陽気な雰囲気で、そこら中にある屋台で賑やかに会話を交わしている。
そして至る所にヤシの木を始めとした植物が生え、街と見事に調和している。
馬車に揺られること少し、一行は冒険者ギルドの前に到着した。
小さな島国といえど、さすがは王都の冒険者ギルドだ。
ホフスタッターやリューインよりも、その規模はかなり大きめだ。
「なんだありゃ?」
「エルフに虎耳族、それに犬と猫もいるぞ?」
「っていうか、みんなとんでもねー美形だな……」
サヤたちが冒険者ギルドに入ると、周囲からそんな声が聞こえてくる。
まぁ、マリナは絶世の美女だし、シグレにアリサ、それにヴァルカンもとんでもないレベルの美少女だ。
そんな彼女たちと一緒に歩いているサヤも美男子エルフであるし、その上猫と犬の姿をしたダークとグランペイルを連れているのだから、注目されて当然であろう。
「ふむ、とりあえず受付に向かうか」
周囲の視線に気づくも、どうでもいいとばかりに歩き出すサヤ。
そんなサヤの反応に苦笑しながらも、マリナたちもあとに続く。
「冒険者ギルドへようこそ、どのようなご用件ですか?」
受付カウンター越しに、受付嬢が愛想よく用件を聞いてくる。
「実はとある冒険者を探しにきたにゃん、名前は――」
「まさか、そこにいるのはダーク……なのですか……っ?」
受付嬢に用件を告げようとするヴァルカン。
その途中で、後ろからそんな声が聞こえてきた。
振り返るサヤたち、そこには一人のエルフの少女が立っていた。




