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お騒がせ女神の学園生活  作者: 一ノ瀬 和人
お騒がせ女神と孤高の少年
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学級活動と身近な異変

 学校での昼休み、祐介は食堂ですばやく給食を食べ終えると食器を片付け教室へと直行する。

 自分机に戻り椅子に座ると机の上で大きく伸びをした。

 朝から散々組み手をやらさたあげく、莉奈や一宮から関節技をかけられたダメージが今になって祐介の体に現れていた。


「祐介、大丈夫?」

「莉奈か」


 死んだような目を莉奈に向けると、莉奈が罰の悪い顔を祐介に向けた。

 その態度だけで祐介は自分のことを莉奈が心配しているものだと感づく。


「朝は‥‥‥‥その‥‥‥‥ごめん。お父さんの前だからつい張り切っちゃって」

「別に気にしてないよ。元はといえば俺がふがいないのが悪いんだから」


 莉奈の父親を前にして行われた一宮との乱捕りで、祐介は全くといっていいほど成果を見せていない。

 祐介の対戦相手が魔法の実力に関していえば警視庁で1、2を争う一宮だということもあり、自分よりもはるか上のレベルに位置する格上と戦っているので負け続けるのもしかたがない。

 だがあまりにも負けが込み莉奈の父に対する印象が悪いので、あそこで莉奈が怒るのもしょうがないことだと割り切っていた。

 

「そうですよ。こんなゴミ虫とクズ虫を配合させたしょうもない祐介さんを相手に、莉奈さんが気を使う必要なんてないと思います」


 祐介が声をする方を睨みつけるとそこには女神がドヤ顔をして立っていた。

 容姿だけは非常に美しいが、中身がポンコツな女神を見てため息をつくと再び莉奈の方に視線を向ける。


「おかしいですね。いつもの祐介さんなら、ここで罵倒の1つでもしてくると思ったんですが?」

「低次元のお前と張り合ってるのが馬鹿らしくなったの。今お前にかまっている暇なんて1秒もないからどっかいけ」

「『どっかいけ』とはなんですか。こんな美しくきれいでこの前町を歩いていたらモデルにもスカウトされた女神ちゃんを見て、その淡白な反応は何なんですか?」

「どうせそのスカウトの見る目がないだけだろ? 俺なら絶対お前みたいな見た目だけのポンコツ変態ロボットには声なんか絶対かけないから」

「キーーッ。誰がポンコツ変態ロボットですか。祐介さんのくせに生意気です」


 1人怒る女神のことを放っておき、祐介は再び莉奈の方を向く。

 莉奈は祐介と視線が合うと、顔を真っ赤にした。


「祐介、私に何か用でもあるの?」

「いや、なんでもない。ただ俺ならモデルにスカウトするなら莉奈の方に声をかけるなって思って」

「えっ?」


 何気ない祐介の言葉に今度は莉奈が下を向く。

 祐介も自分が言っていることがほぼ告白だということに思い辺り、机から慌てて起き上がる。


「莉奈、今言ったことは2人が一緒に歩いていたらの話だから。今の話はあまり真に受けないで」

「じゃあ聞くけど、祐介は女神ちゃんよりも私の方がきれいだと思うの?」

「当たり前だろ? 莉奈の方がポンコツ女神よりも数倍可愛いんだから」


 祐介が恥ずかしそうに話すと、莉奈の顔はパァッと明るくなるのがわかる。

 それと同時に祐介も恥ずかしくなり莉奈から視線をはずした。

 

「それってさ‥‥‥‥」

「それに口うるささで行ったら莉奈の方が幾分ましだし、ちょっとおてんばで自由すぎることがたまに傷だけど‥‥‥‥」

「ふん」


 祐介は莉奈に頭の中心部を殴られ、机に盛大に額をぶつける。

 ぶつけた額は赤くなり、脳天の痛みと共に鈍い痛みが祐介に伝わった。

 

「莉奈? 何で‥‥‥‥」


 そして祐介は起き上がった所を狙われ両頬を莉奈に引っ張られる。

 何がなんだかわからない状況に、祐介は莉奈にされるがままである。

 

「おてんばなのは認めるけど、私はそんなに口うるさくはないし自由すぎないから」

ほふぁいはよ(ごかいだよ)ふぃな(りな)

「何だ。また莉奈と祐介は痴話喧嘩でもしているのか」

「もう11月なのにこの周辺だけ以上に気温が高いですもんね。全く今年の冬は始まって早々異常気象です」


 莉奈と祐介が喧嘩している所に、今度は恵梨香達が現れる。

 恵梨香と則之が2人をニヤニヤとした視線で見つめていることに気づき、莉奈は慌ててその手を離す。

 

「別に、いちゃいちゃしてないし。それに私達はまだそんな関係じゃないから」

「『まだ』ってことは、これからそういう関係になるってことだろ?」

「恵梨香、そこまでにしないか」


 後ろで罰の悪そうな表情で莉奈達のやり取りを見ていた吹雪が、すかさず恵梨香の事を止めに入ったため莉奈は何も言わずに済む。

 祐介から見た莉奈の姿は顔を真っ赤にし、プルプルと小刻みに震えていた。

 

「先生から莉奈に次の時間の学級活動のことについて伝言を預かってきた」

「伝言?」


 莉奈は首をひねるが、祐介は何となくではあるが吹雪の伝言の内容がわかった。


「今度の生徒会選挙の件で、先生は莉奈に立候補してほしいということだ」


 吹雪は真顔で淡々と莉奈に先生からの頼まれごとを話していく。

 話を要約すると莉奈に生徒会選挙に立候補してほしいということを先生は言っていた。

 祐介達の学校の生徒会選挙は1、2年生各クラス1名はならず立候補者を出さないといけない決まりになっている。

 だが、実際は立候補をする人等皆無に等しくこうやって先生直々の推薦立候補するのが慣例化していた。


「それで先生は私に立候補してって言ってるの?」

「あぁ、付け加えて莉奈には副会長に立候補してもらいたいらしい」


 莉奈は吹雪に対して渋い顔を見せる。

 その表情は明らかに生徒会の役職をやりたくなさそうな顔をしていた。


「私よりももっと適役の人がいるんじゃないかな?」

「俺も先生にその話はしたんだが、全く聞き入れてくれなかった」


 吹雪のため息からは担任を必死に説得した様子が伺えた。

 その様子を見れば、吹雪を咎めることを祐介達は出来ない


「そういえば生徒会役員の内訳うちわけってどうなってるんだっけ?」

「僕が聞いた話によると生徒会長が1名で副会長が2名、それと書記と会計が1名ずつのはずです」


 則之はその場で流暢に生徒会選挙について語っていく。

 則之のおかげで祐介達も選挙の大枠は大体つかめた。


「それと生徒会に立候補した人には応援演説をする人も必要だったはずです」

「応援演説?」

「そうです。立候補者の前にその立候補者その役職にふさわしいかを話さないといけません」


 実際応援演説の担当になると候補者の補佐も兼務しないといけないため、とても大変な役割になる。

 応援演説の原稿作成の他にも放課後や朝早くに学校で演説をしないといけなくなるため、普通の人が想像しているより熾烈を極める。

 現に祐介も転生前に莉奈の応援演説をやる羽目になり、大変な苦労をしたことを今でも覚えている。

 その大役がまわってくると思うと、気分が沈んでいく。


「でも莉奈はついているかも知れませんよ。先生からの推薦ですから」

「それだと何が違うんだ? 特段内容に大佐は感じないように思えるんだけど?」


 恵梨香は小首をかしげて、不思議そうに則之を見る。


「先生が推薦する人は必ず生徒会に入れるというジンクスがあるみたいです。実際に今まで推薦された人は殆ど入ってます」

「どこでそんな知識をてに入れたんだよ?」

「それは秘密です」


 則之の言葉を祐介は自分の中で反芻はんすうさせた。

 莉奈が生徒会に入ることになれば、学級委員の仕事を一緒にやることはなくなる。

 ただ、責任感の強い莉奈がこの話を断るとは全く思わない。

 実際祐介の前にいる莉奈は立候補するかを本気で考えているように見えた。


「私が副会長」

「よかったじゃん、莉奈。先生の推薦なんて中々ないぞ」


 恵梨香が莉奈の背中をたたくが莉奈は相変わらずうかない顔をしている。

 それを見て何かを察した則之は祐介の方に視線を向けた。


「そういえば祐介は莉奈の生徒会入りはどう思ってますか?」

「俺?」


 祐介は則之から話を振られて困ってしまう。

 転生前の莉奈は1年生の時から生徒会に所属して副会長となっている。

 そのことを知っている祐介としては、莉奈が副会長に立候補することは決定事項だと思っていたため自分が何を言っても無駄だと考えていた。


「そうだな‥‥‥‥」


 祐介の心情としては正直な話、莉奈に副会長職を立候補してほしくない。

 家の習い事に始まり道場での魔法の訓練、それに休日は魔法工学の勉強もしている莉奈。

 学校では学級委員としてただでさえ忙しいのに、それよりも拘束時間が多くなる生徒会役員等、莉奈にやってほしくはないのが祐介の本音でもあった。

 

「私はもちろん反対ですよ」

「女神ちゃんは反対なんですか? 莉奈の立候補?」

「そうです。莉奈さんは学級委員で祐介さんと一緒に仕事をしていた方が生き生きとしていていいと思います」


 そういうと女神はにやりと笑い、莉奈の方を見る。

 その様子を見た則之や女神達もはっとした表情を浮かべると、女神と同じような笑みを莉奈に向けた。


「確かにそれは僕も一理あると思います」

「そういえば、学級委員の仕事は楽しそうにやってるもんな」

「そうです。あんな冴えない顔をした根暗で陰湿で肝心な所で全く役にたたないMTエムティーオタクでも、少しはストレス解消になってるはずです」

「廃工場で半泣き状態で逃げ惑っていたり、この前のホテルでつめを誤ってブルブルふっるえてた奴にそんあこと言われたくないわ」


 途中まではいいことを言っていたと思ったが、どうやら女神は祐介のことをただおとしめたかったらしい。

 その証拠に、話し終えた女神の顔は妙にすっきりとしている。

 祐介は自分の中でふつふつと怒りがこみ上げてくるのを感じた。


「そういえば、女神。お前とはそろそろ決着をつけようと思ってたんだよ。散々言っているけどまだ1回も実現してないよな?」

「まぁ、光栄ですね。だけど変人変態ムッツリエロ仙人の異名をもつ祐介さんに私は倒せますかね?」

「とりあえず表に出ろよ。今日こそは決着をつけてやる」

「望む所です」

「2人共、やめなさい」


 莉奈が2人を止めに入った時、ちょうど予鈴のチャイムが鳴った。

 それを聞き立ち上がって外へ出ようとした祐介、その行動を止めた。


「とりあえず、喧嘩は駄目。それにもう次の授業始まるよ」

「よかったな、女神。命拾いできて」

「それはこっちのセリフです」

「「ふん」」


 祐介と女神はそっぽを向き、女神にいたっては自分の席へと戻っていく。

 その光景を莉奈を覗く3人はあきれた表情をしながら見つめていた。


「あんなんであの2人は大丈夫か?」

「まぁ、いつものことでしょう。それよりも僕達もそろそろ席に戻りませんか?」

「そうだな。とりあえず要件も済んだし戻ろうか」


 そういうと則之達も自分の席へと戻っていく。

 こうしてさっきまでにぎやかだった場には祐介と莉奈の2人が残った。


「ねぇ、祐介?」

「どうしたの? 莉奈?」


 神妙に自分の方を見る莉奈に対して、祐介はついついかしこまってしまう。


「祐介は私が生徒会に入った方がいいと思う?」


 莉奈は不安げに祐介の方を見て聞いてくる。

 その表情は先程まで吹雪達から言われたことに対して悩んでいるようにもみえた。


「俺は莉奈の意見を尊重するよ。ただ‥‥‥‥もし引き受けたら莉奈の体がちょっと心配になるかな。毎日忙しいし」

「祐介‥‥‥‥」


 自分の主張に照れくさくなった祐介は莉奈から視線を逸らすことにした。

 それと同時に教室の扉が勢いよく開き、担任の教師が教室に入ってくる。


「お~~い、遅れたな。じゃあ学活の授業始めるぞ」


 担任が教室に入ってきたと同時にクラスの人達も静かになる。

 祐介も笑顔で話す担任の方に目を向けた。

 

「今日の学級活動なんだが、進行は先生がやるから学級委員は休んでていいぞ」


 担当教師の発言にクラス中はどよめく。

 いつもなら議題を言うと莉奈と祐介に丸投げするものぐさ教師が自分で進行を行う珍事に、莉奈や祐介等のいつものメンバー以外は驚いた様子を見せた。

 

「そんなに驚くな。今日はちょっと重大な議題でな。まぁそれも生徒会選挙の話なんだけど」


 先生は少しおどけて話を進める。

 それは祐介の隣の人物に遠慮しているようすだった。

 

「まぁ君達は初めてだろうから説明するが、生徒会選挙では毎年各クラスから1名立候補者を出さないといけないんだ」


 ここまでの話は先程吹雪が言っていた通りだと祐介は思う。

 後は莉奈が先生に指名されるかが、話の焦点となる。

 

「それで九条、先生としてはお前が適任だと思うんだがどうだ?」

「私ですか?」


 莉奈は少し動揺してはいるが、吹雪の事前報告もあり冷静である。

 隣にいる祐介としては、莉奈が立候補することは前提として自分が応援演説をやることになるのかが気になった。


「お前みたいな優秀な生徒なら先生も胸を張って出せるんだがどうだ? やってみる気はないか?」

「私は‥‥」


 先生に押されている莉奈は先程よりも縮んで見えた。

 今のように莉奈は押されたら断れないタイプである。

 転生前の莉奈もこのように先生に押され、やむなく生徒会選挙に立候補し生徒会役員に選ばれた。

 今回も多分先生の戦略勝ちだと祐介は思い、2人のやり取りをのんびりと眺めることにした。


「どうだ? やってくれるか?」

「先生直々の推薦はありがたいのですが、今回はお断りさせていただきます」


 莉奈が立ち上がり丁寧にお辞儀をして断りを入れると、辺りがざわつく。

 先生は莉奈が断らないと思っていたのか、驚きの表情を浮かべている。

 隣にいる祐介も表情には出さないが、莉奈の決断に心底驚いていた。

 

「もしよければ理由を聞かせてもらえないか? 九条?」

「はい。今は家のお稽古事とかが忙しいので、学級委員以上の仕事はさすがに無理です」

「いや、生徒会の方がどちらかというと楽だぞ。先生の仕事もなくなるし」


 それを言うと、今までどれだけ祐介達に雑用を押し付けてきたのかがわかってしまう発言に見えるが先生はお構いなしに莉奈を説得する。

 その様子は莉奈が生徒会選挙を断ることを考えていなかったように思えた。

 それを裏付けるかのように先生は莉奈を立候補させようと、必死に取り繕う。

 

「それでも今のままがいいんです。申し訳ありません」


 莉奈が再びお辞儀をする際、一瞬チラッと祐介のことを見た気がした。


「それならしょうがない。九条、悪いな」

「こちらこそすいません」


 先生は困った表情をしながら頭を掻く。

 完全に当てが外れ、これからどうしようかと考えているように見えた。

 

「先生」


 先生が悩みの表情を浮かべる中、吹雪が1人手を挙げる。

 突然の挙手にクラス中の注目が吹雪に集まった。


「三枝君?」

「もしよければ、俺が立候補しましょうか? 生徒会選挙」

「本当に?」


 吹雪の立候補に先生はすぐさま食いついた。

 元々莉奈程ではないが、吹雪も学校では優等生で通っているので先生としては選んでも問題ないのだろう。

 

「それじゃあ三枝君、お願いしてもいい?」

「わかりました」


 吹雪が2つ返事で快諾したため、その後の生徒会選挙の話はスムーズに進んでいく。

 選挙管理委員には生徒会役員を固辞した莉奈が引き受けたため、祐介も当然のように選挙管理委員になる。

 そして肝心な吹雪の応援演説は則之が担当することでこの日の学級活動は落ち着いた。


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