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お騒がせ女神の学園生活  作者: 一ノ瀬 和人
お騒がせ女神と偶像少女
42/57

僕と私と彼女の願い

エピローグです

 祐介達の学校の行事である音楽祭は全学年の生徒が体育館に集まって行われる。

 生徒の他にも父母達が後ろで参観しているので、体育館は常に密集状態である。

 午前の部が終わり午後の部に突入した現在は、有志のバンドが演奏する時間である。

 祐介は燈子と2階のギャラリーから観覧し、莉奈達が行うバンドの演奏を今か今かと心待ちにしていた。

 

「残念だったな、祐介。莉奈ちゃん達のバンドのボーカル役を降ろされて」

「これでいいんだよ。あんなオンチの歌聴かされる方が可哀相だよ」

「それもそうだな」


 燈子は祐介のだるそうな顔を一瞥し、クスリと笑う。

 結局あの1件でスノーサイドプロダクションが行っていたことは売春と判断され、翌日の新聞の一面を大きく飾ることとなる。

 しかも売春を行っていた人の中には政財界の大物や、大手企業の社長も混じっていたことに、芸能界だけでなく各業界に激震が走った。

 この事件を起こしたスノーサイドプロダクションは事件の対応に追われ事実上の倒産状態に陥り、恵梨香達のデビューの話はおじゃん。

 結局、祐介が入院している間にボーカル役としてバンドの練習に復帰する運びとなった。

 

「それで2週間か? 恵梨香ちゃんが練習してたの?」

「あぁ。それだけで完璧に仕上げるんだから、やってられないよ」

「そのせいでお前は首になったんだから、笑うしかないな」


 燈子は祐介の肩に手を置き、同情の視線を送る。

 祐介が怪我のため1週間入院している間に、代理のボーカルとして選ばれた恵梨香がそのまま音楽祭のステージに立つことになった。

 退院後バンドの練習を祐介は見学したが、練習している時の恵梨香は本当に楽しそうで、これでよかったんだと祐介は考えていた。

 

「まぁ、恵梨香も生き生きとしてるんだし俺はこれでよかったと思う」

「そうだな」


 燈子はゆっくりと頷き祐介の意見に同意する。

 

「そういえばお前、警察の取調べはどうだったんだ?」

「取調べって程のものでもないよ。10分ぐらいで解放されたし」


 燈子が話したことは祐介が入院している時の話である。

 ホテルの1件後、祐介が入院することになった病院で莉奈と祐介は事情聴取を受けた。

 事情聴取といっても三枝家の道場に出入りしていた門下生上がりの刑事が担当することになったので、大体の事情は把握しているらしく殆ど何も聞かれていない。

 むしろ三枝家の予備隊を倒したことを褒められ、お見舞いにフルーツの盛り合わせを貰った。


「そういえばあの時のフルーツの盛り合わせはあの刑事がくれたものだったのか」

「姉さんが殆ど食べちゃったけどね。それよりも莉奈の家に行った時の方が辛かったよ」


 問題はその後、燈子も含めて2人で菓子折りを持って九条家に行った時である。

 今回の1件を全て話して謝った後、莉奈を含めた3人で莉奈の父母に説教をされる羽目になった。

 主に莉奈が親に怒られていて、その内容が神山家に迷惑をかけるなというものであった。

 2時間に及ぶ説教の後は、無事でよかったと莉奈のことを抱きしめる莉奈の母親の姿を見て、祐介は心が温かくなったことを今でも覚えている。

 

「それよりも祐介、今回の演出について本当に許可取れてるんだろうな?」

「大丈夫。ちゃんと話は通したから」

 

 祐介は燈子の視線に苦笑いで返す。

 祐介と燈子が2階にいるのはライブの演出のためと教師には言ってある。

 本当はダメなのだがどうしてもと頼みこんだ結果教師陣に認めてもらい、特例として燈子も2階のギャラリーに上がる許可も一緒に貰ってきた。

 

「それよりも始まるよ」


 祐介が燈子にステージの方を見るように言うのと同時に辺りが暗くなり、ステージだけスポットライトが当たっている

 ステージが明るくなるのと同時に恵梨香達がすぐさまステージに上がる

 ステージに上がった全員が楽器を構えると恵梨香が1曲目の名前を言い、すぐさま演奏が始まった。

 

「きれいだな。恵梨香ちゃんの声」

「そうだね」


 祐介は恵梨香の声を聞いて転生前のことを思い出す。

 あの頃は恵梨香が歌っているグループのCDからソロで出したもの迄全て買って仕事の合間によく聞いていた。

 いつか恵梨香のライブにも行きたいと思っていたが、それも仕事が忙しくてかなわぬ夢だった。

 その願いが中学校の音楽祭という小さい舞台ではあるがかない、祐介はうれしく思う。

 やがて1曲目の演奏が終わると、恵梨香がマイクを手に持ち1歩前へと出る。

 

『えっと‥‥‥‥皆さん、こんにちは。あたしはこのグループのボーカルをしています黛恵梨香です』


 少し間の抜けた恵梨香の声に体育館にいる生徒のみんなもはやし立てる。

 その声に恵梨香も『ありがとう』といいながら笑顔で手を振ってこたえていた。

 

「それにしても恵梨香ちゃんは図太いな」

「あぁ、だってあのホテルの1件も寝てたから殆ど覚えていないらしいよ」

「それは本当か?」

「あぁ、部屋に入ったのは覚えてるらしいけど、その後は寝ちゃったらしい」


 それは恵梨香本人から祐介達が聞いたことである。

 則之と吹雪が部屋に突入した時、怯える全裸の男性とミニスカ衣装でいびきをかいて寝こけている恵梨香を見て則之はあきれたらしい。

 その後のバンドの練習で冗談で売春の話をする恵梨香のことを莉奈がしかっていたのもいい思い出である。


「それならよかった。トラウマにならずに済みそうだな」

「まぁね。それより2曲目が始まるから。姉さん、スタンバイいい」

「わかった」


 そう言うと祐介と燈子も演出の準備を始める。

 ステージ上ではバンドの紹介が済んで2曲目に入る所であった。

 バンドのメンバーが奏でる軽快なメロディーを祐介は聞きながらタイミングを計る。

 走り気味のギターに、リズムがずれるドラム、それに合わせようとするキーボードに指元しか見ていないベース。

 それぞれを見ればバラバラだが、そこには不思議と不快感はなくむしろ心地いい演奏となっている。

 

「姉さん、今」

「わかったよ。お前は人使いが荒いな」


 そう言うと目の前の1m弱の正方形の機械に燈子は手を置き、魔力を注ぎ込む。

 注ぎこんだ瞬間、ギャラリーの反対側に置かれている正方形の機械も反応し、真っ暗な体育館の天井中にたくさんの星が輝いた。

 その光景はとても幻想的で、見ている人全員も驚きの表情で天井を見つめている。


「よし、成功だ」

「なるほど幻覚魔法か。恐らく何個かの光系魔法を組み合わせて作った術式だろうな。それで即席のプラネタリウムを作るなんてお前にはおどろかされっぱなしだ」

「でも、これって実際に劇場とかでよく使われているらしいよ」

「私が言ってるのはそう言うことじゃない。それを1週間で1から作ってしまうお前のすごさに驚いてるんだよ。一体いつの間にこんな技術を覚えたのだか」


 燈子の言葉に祐介は苦笑いを浮かべるしかない。

 今回燈子をこの場所に呼んだ理由はこの魔法を使ってもらうためである。

 

「だって俺の魔力じゃ時間掛かるし範囲が極端に狭くなるから」

「ちっ、都合のいいときにこき使って。帰ったら覚えとけよ」

「それを姉さんには言われたくないよ」


 燈子の方から恵梨香達のいるステージの方へ祐介は向き直る。

 ライブで歌っている恵梨香はこの前のステージに劣らず輝いているように見える。

 それは今回は見送りという形になったが、将来国民的アイドルとして活躍する黛恵梨香を彷彿とさせた。

 

「全く、面倒くさいことをやらせて。お前の今月の小遣いからギャラは貰うからな」

「待って姉さん、それはやめて」


 祐介が抗議を上げる前に燈子はポケットから煙草の箱を取り出し1本取り出すとそれを口にくわえる。


「姉さん、ちょっと何やってるの?」

「何って、煙草を吸おうとしているに決まってるだろう」

「校内は禁煙だから。お願いだからその右手に持ってるライターはしまって」」


 結局祐介はライブの最中、燈子が煙草を吸うのを止めるのに必死になってライブが殆どみれなかった。

 恵梨香達の有志を殆ど見れなかったが、祐介はこの日のことを忘れない。

 将来の国民的アイドルになる少女の歌を生で聴けた出来事は、祐介の胸に深く刻みつけられた。


ここまでご覧頂きありがとうございます。


ひとまずこれで3章は終了となります。

当初は7月上旬には3章を終わらせられると思っていたのですが、私事で色々あり予定より大幅に遅れてしまいました。

なので途中から投稿ペースが著しく落ちてしまい、見ていた方には大変ご迷惑をおかけしました。

申し訳ありません。


4章の方は祐介の転生前の話を含めた番外編を2、3本投稿後開始をしようと思います。

少し時間は空いてしまいますが気長にお待ちいただければと思います。


最後になりますがお気に入り登録をして下さった方やこの小説を見てくださった皆様いつもありがとうございます。

これからも作者の拙作の方を宜しくお願いします。

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