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お騒がせ女神の学園生活  作者: 一ノ瀬 和人
お騒がせ女神と体育祭
15/57

授業参観

「よし、これでだいぶ情報は揃ったな」


「そうですね。では確認してみましょうか」


 人気のない廊下で女神と祐介はお互いが持ってきた書類を読み進める。

 現在この人気のない廊下にいるのは祐介と女神しかいない。

 2人が手にしている資料は則之の親族に関連する資料である。

 

「2人の兄は高校3年生と2年生か。しかも2人共関東魔法高等学校の生徒会に入ってるってすごいな」


「えぇ、そうですね。しかも去年の8地区対抗で魔法技能を争う交流戦で、2人共MVP級の活躍をして優勝をしています」


「完全無欠とはこういうことを言うんだな」


「そうですね。黒い噂も特にはありませんし、まさに完璧超人といった所です」


 2人はお互いが調べてきた資料を見比べながら、ため息をついた。

 

「で、これを見て則之が何であそこにいたのかわかるか?」


「いえ、全く」


 2人はお互いに視線を交わす。

 その目はお互い相手に罪を擦り付けているようにも見えた。

 

「どうするんだよ。完全に調べ損のパターンだろこれ」


「祐介さんが最初に調べようって言ったんじゃないですか」


「お前が腹違いの兄貴がいるって思わせぶりなことを言うからだろうが」


「それを則之さんのことと結び付けようとしたのは祐介さんでしょ。私は悪くありません」


 2人はお互いのことを睨み合いやがて罵り始め、いつものように争いを始めた。

 その醜い争いをこっそりと隠れたところでとある女性達が監察をしていることを2人は知らない。

 

「祐介‥‥また女神ちゃんと‥‥」


「莉奈も不安なら祐介に直接聞けばいいのに」


「今更聞けないよ。『女神ちゃんと付き合っているの?』って」


「いつもの行動力はどうしたんだよ? 全く莉奈はこういう時優柔普断なんだからなぁ」


 あきれたように言い放つのは莉奈の付き添いとしてついてきた恵梨香である。

 先程2人は祐介と女神が休み時間中にこっそり教室を出たのを怪しんでこうして追ってきた。

 もちろんそれは最近の祐介の行動が怪しいからである。

 

「最近午後のトレーニングも一緒にしていないし、家にも帰らずどっかに出かけてるみたいだしきっとデートしてるんだよ」


 莉奈がこのようなことを話すのは祐介の一連の行動が原因である。

 あれから祐介の行動を怪しく思い、家を何度か訪問したが、家には姉の燈子しかいなく祐介は帰っていなかった。

 もしかしたら女神と祐介が付き合ってるんじゃないかという想像が莉奈の不安に拍車をかけていた。

 

「女神ちゃんと付き合ってるから‥‥だから‥‥」


「考えすぎだって。あいつのことだからどうせ莉奈に内緒で1人でトレーニングしているだけとかだろ」


「でも」


「『でも』じゃない。それに女神ちゃんに直接祐介と付き合っているかって聞いたときに『あんなもやしニート相手にするわけないじゃないですか~~』とか笑って言ってたぞ」


 恵梨香は以前吹雪達と女神を連れ出し祐介との関係を聞いたときのことを思い出す。

 あの時は女神が笑顔で祐介のことを罵倒していたことを恵梨香は鮮明に覚えている。

 恵梨香は莉奈のことをなだめるがいまだに莉奈の不安は消えていない。

 はたから見てもわかる莉奈の元気のない表情に恵梨香は頭を抱えていた。

 

「こりゃ後で吹雪達に相談するしかないな」


「恵梨香、何か言った?」


「いや、何も。それよりも祐介達がこっちに来るぞ。私達も早く教室に戻らないと。これから授業参観だしな」


 そういいながら恵梨香と莉奈は祐介達と出くわさないようにそそくさと教室に戻った。

 

 

☆★☆★



 疲れた表情を見せる祐介と女神が教室に戻った時には、大勢の大人が一番後ろに立っていた。

 この日は授業参観が行われるため、授業が始まる少し前の時間からこうして大人が後ろに立ち生徒達の様子を観察していた。

 その中でも人1倍目立つ女性が祐介のすぐ目の前にいる。

 膝元まで伸びるチェック柄の赤いスカートにだらしなく第2ボタンまで空けたワイシャツ、何よりポニーテールというには少し雑に束ねられた赤い髪が特徴的である。

 その女性と面識がある祐介は目を合わせないようにそそくさと席に戻ろうとするが、すぐさま首根っこをつかまれた。

 

「せっかく来てやったのに挨拶もなしでは寂しいではないか。我が弟」


「姉さん」


 姉である燈子の方を祐介は嫌そうに見ていた。

 

「別に見に来てほしいなんていってないし。それよりも大学は? 今日も授業があったんじゃないの?」


「休んだに決まっているだろ? せっかくの授業参観なんだ。大学よりも大事に決まっている」


「そうやって大学留年しても知らないからな」


「私はお前とは違って成績はいいんでね。いざとなったらどうとでもなるさ」


 満足げに頷く燈子を見て祐介はあきれ返っていた。

 

「まぁ、そんながっかりするな。こうしてお前の成長過程をじかに見なければ父さんや母さんに顔向けできないだろ」


 燈子が言っているのは自分達の両親の話である。

 姉である燈子が両親がいなくなる前に何か言われたらしいのだが、そのことを祐介は知る由もない。

 

「それよりもこの学校に喫煙所はないのか? 私は今非常にタバコを吸いたいのだが‥‥」


「中学校にあるわけないでしょ。ここは公共の機関だよ」


「そうか。それは残念なことだ」


「じゃあ俺は席に戻るから」


 丁度チャイムがなったのでうなだれる燈子に一言声をかけ、席の方に戻った。

 席に戻ってから祐介は周りの人達が自分に視線を向けていることに気づく。

 隣に座る莉奈もクスクスと笑いながら祐介の方を見ていた。

 

「なぁ、俺ってもしかしてものすごく目立ってた?」


「それはそれは目立ってたわよ。これ以上ないぐらい」


「そうか」


 落ち込む祐介のことを見ながら楽しそうに莉奈は笑っている。

 

「そういえばどうして莉奈は笑ってるんだよ?」


「いや、燈子さんと祐介って本当に仲がいいなって」


「そうか?」


「そうだよ。周りが嫉妬しちゃうぐらい」


「冗談も口だけにしてくれよ」


 莉奈がそれ以上何か言おうとした所で、慌てて先生が教室に駆け込んでくる。

 それと同時に祐介に向けられていた視線は一斉に先生の方に向く。

 

「この話は後でしよう」


 そう祐介は莉奈に話をして、授業に集中する。

 この時間の授業内容は社会の地理であり、先生はそれぞれの世界の気候についての説明をしている。

 祐介も教科書を開き退屈そうに先生の話を聞いていた。

 

「で、あるから日本の気候は‥‥」


 後ろの扉がガラッと開く音が聞こえたと思うと、振り向いた先生が一瞬だけ何かに驚いて言葉が詰まっているように見えた。

 祐介は驚く先生を不信に思い、少しだけ後ろを振り向いて誰が入ってきたのか確認する。

 教室に入ってきた人は年にして30代前半と思しき女性で、真っ赤な着物姿にかんざしを髪に指すという奇抜な格好にきれいな黒髪。

 何より彼女の顔立ちは整っており、鼻が少し高いのが特徴的でそれが彼女の魅力をさらに引き立てていた。

 そのことよりも祐介は以前見たことがあるその人物が教室に現れたことに驚きを隠せないでいる。

 

「何であの人が‥‥‥‥」


「あれって則之のお母さんじゃない?」


「お母さん? あの人が?」


 誰にも聞こえないように小声で莉奈がつぶやく。

 

「莉奈って則之の母親に会ったことがあるの?」


「あったことはないよ。だけどなんとなくだけど顔立ちが則之に似てない?」


「確かに。よく見ればそんな風に見えなくもない」


 祐介達が話すのは彼女の容姿である。

 よく見ると鼻が高い所や輪郭が、どことなく則之に似ているような気がした。

 祐介は則之の方を一瞥すると驚きと同時に戸惑いも覚えているようである。

 自分の顔を両手で隠し、小刻みに震えていてまるで何かを怖がっているようにも見えた。

 

「則之君、大丈夫?」


「いえ、大丈夫なので授業を続けて下さい」


「わかったわ。ただ、調子が悪かったらすぐ言うのよ」


 先生はそういうと再び授業へと戻った。

 

「今日の則之って何か変だね。せっかくお母さんが来てくれたのに」


「あぁ、そうだなだ」


 莉奈の言葉に頷きながらも祐介は考えていた。

 父親の愛人に腹違いの優秀な兄弟、そして母親が授業参観にきたのに怯える則之。

 揃いそうで揃わないピースに祐介は自問自答しながら、授業参観は過ぎていった。

 

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