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武家の嗜み  作者: 澪亜
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私の軌跡 伍

内容を第6部より場面を追加したかったために刷新しております。また、これまでの部分についても細かいところを変えています。大変申し訳ございませんが、改めてお読みいただけると幸いです。(12月3日更新四話目です)

※ダイジェスト化は、ございません。

そこから始まった訓練は、いつも私がしている訓練よりも軽いものだった。


……最近では、お父様から言い渡されているメニューに自分で考えたものをあれやこれやと足していたからなあ。


そして準備運動兼体力向上のメニューが終わると、素振りが始まる。


上から、下へ。

剣を振るう度に余計な感情が削ぎ落とされ、心が凪いだ状態になる心地が気持ち良い。

まるで、自分の中に一つの芯が通るかのような感覚。

それに感じ入っている間に、素振りも終わった。


そして、最後に一対一の打ち合い。

二人ずつ名が呼ばれ、その二人が対峙して剣を打ち合う。


私は彼らの動きを食い入るように見つめた。

なるほど、そんな動き方があるのか……と、勉強になる。

自身で再現できるものもあれば、私の体格では難しいものもあった。けれども後者もら相手がその動きをしたとしたらどう私は対応するのかということを考えることができるため、いずれにせよ勉強になる。


「次、メルとラーダ!」


最後の方になって、やっと名が呼ばれた。

相手は、私の存在に一番に気がついて困惑していた男の人だった。

明らかに、ラーダというその人は私が相手ということに再び困惑しているようだ。


「それでは、始め!」


審判兼教員の男の声が、耳に入る。

けれども、ラーダは動き始めない。

私相手にどうすべきか、惑っているようだった。


待てど暮らせど、動く様子は見せない。

そのため、先に動いたのは私の方だった。

彼の懐に入り込み、剣を振るう。


「うおっ……!」


ラーダは驚いたように目を丸め、私の剣を弾いた。

けれどもそのせいで、彼の体勢は崩れている。

私はそれを利用して彼を転ばせると、そのまま目の前に剣を突きつけた。


「……しょ、勝者!メル」


ざわりと、周りが騒がしくなった。

呆気ない終わりに……何より私が勝ち星をあげたことに驚いているようだった。

けれども、私は内心舌打ちをしたい気持ちだった。


全然、戦った気がしない。

何せ、彼は油断していたのだから。


「……ラーダ。言ったはずだぞ?そこの少女は儂が訓練を施したと。お前の悪い癖だ。格下相手と見なすと手を抜くことが。戦場では……否、どんな時だとて弱者と強者などいない。あるのは、どのようにして敵を倒すか、それを突き詰めた者が強者になれるのだ。その甘い癖を抜け」


「……はい。申し訳ございません」


お父様の厳しい言葉に、ラーダは項垂れていた。


「……メル。お前はまだやれるな?」


「はい」


「ならば、次。ガンズ、来い」


お父様の言葉に、ラーダに代わって別の男の人が目の前に来た。


「そ、それでは……ガンズ対メル。始め!」


審判の言葉に、私と彼が動き始めた。

彼の雰囲気から察するに、油断はしていなさそう。


……上等だ。

彼の鋭い剣筋を受けつつ、私はニヤリと笑う。


それにしても、だ。

やっぱりお父様と比べると動きは遅く、また剣から伝わる強さも弱い。

比べる相手が相手だけれども。


ただ、お父様にはない動きや剣筋を相手にするのは楽しい。

何回か打ち合った後、私は彼の懐に入って剣を弾き飛ばす。


そして丸腰になった彼の首筋に剣を突きつけた。

シン、と辺りは静かになる。

誰も彼も口を開かず、物音一つすらしなかった。


「……勝者、メル」


そんな最中、おずおずと教員が口を開いた。


「これで、メルの練度は分かったであろう。……誰か、この者が訓練に参加することに反対な奴はいるか?」


そうお父様が問いかけたものの、誰からも声は上がらなかった。

……試されていたのか、と私は笑う。


「良いだろう。それでは、今日のところは終了! 各々好きにして良いぞ!」


そう言って、訓練は終わった。

終わったけれども……さて、どうするか。


正直、今日は消化不良だ。

……勉強にはなったけれども。

それにお父様やお兄様以外と初めて戦って、どうやら興奮しているらしい。


ということで、私は剣を置くとまずは身体を動かすべく走り出したのだった。


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