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武家の嗜み  作者: 澪亜
88/144

私の学園入学

本日4話目です

……そしてその茶会から、数日後。

私は学園に向かうべく馬車に乗り込んでいた。

舞踏会から今日に至るまでの怒涛の日を思い出しつつ馬車に揺られていると、学園にあっと言う間に到着した。

王都端に存在するこの学園は、貴族の子息子女のみが集められる。

知識の研鑽と共に、貴族の結束を高めるための社交の場だ。

到着すると、私は荷物をアンナに任せて講堂へと向かう。

その途中で、ルイの姿を見つけた。


「御機嫌よう、ルイ」


級友らしき幾人かの男子生徒と何やら話していたが、特段込み入った話をしている様子でもなく、どちらかと言うと軽口を叩き合っている様子だったので普通に話しかけた。

ルイはその挨拶で私の存在に気がつき、他の方々との話を止めて近づいて来る。


「ようこそ、学園へ。ここのところ忙しくしているようだったが、大丈夫か?」


「ええ、大丈夫ですわ。体力には少し自信がございますので。……心配して下さって、ありがとう」


オーレリア様より淑女教育の合格をいただいた後も、三日に一回のペースでアルメリア公爵家に行っていた。

単純にまだまだ学び足りないということと、オーレリア様との時間が楽しいからだったのだが……ここのところ招待に対応するので手一杯で、全く行けなかったのだ。

その状況を手紙でご連絡したところ、オーレリア様から気にしなくて良いとの返事をいただいていたけれども。

どうやら随分とアルメリア公爵家の方々には心配をかけていたようだ。


「そうか。……学園に入学してしまえば落ち着くと思うが、体調だけはくれぐれも気をつけてくれ」


「ええ。そうしますわ」


他人の目があるので、いつもよりも丁寧な言葉使いを心がけなければならないということがもどかしい。

そもそもここに他の人さえいなければ、久しぶりの彼との再会に飛ぶ跳ねて喜んでいたというのに。


「その制服、似合っている」


そっとルイが近づいて来て、私の耳元で囁いた。

ルイの言葉に、顔が熱くなる心地がする。……恐らく、頰が朱に染まっていることだろう。


「ありがとう、ルイ。……ルイも、その制服とても似合っているわ。凛々しくってとても素敵」


この距離ならば他社には聞こえないだろうと、私も言葉使いを崩して話した。


「あ、ああ……」


そんなやり取りをしていたら、私が話かしけるまでルイと話していた二人の男子生徒が近づいて来た。


「ルイー。そろそろ準備しないと」


「……こら、ドルーナ。邪魔しちゃダメだぞ」


ドルーナと呼ばれた赤毛の少年を諌めるように、緑がかった金髪の青年が声をかける。

そんなやり取りが耳に入って来て、ルイと私は思わず互いに苦笑いを浮かべた。


「紹介しよう。こっちが、ドルーナ・カタベリア。それからこちらが、フィリップ・サジタリア。私のクラスメイトだ。二人とも、こちらの女性が私の婚約者であるメルリス・レゼ・アンダーソンだよ」


「お初目にお目にかかります。私、ルイ様の婚約者であるメルリス・レゼ・アンダーソンです」


挨拶と共に、頭を下げる。

そして次に頭を上げると、何故かボウっと固まっている二人が視界に映った。

……どうしたのかしら? と首を傾げつつ無言で助けを求めるように、ルイに視線を移す。

ルイは呆れたように溜息を吐きつつ、口を開いた。


「ドルーナ、フィリップ」


ただ名前を呼んだだけだったが、それで我に返ったのかピクリと体を揺らす。


「……失礼。メルリス様のあまりの美しさに、言葉が思い浮かばず……フィリップ・サジタリアです。以後、お見知りおきを」


その言葉と共に恭しく私の手を取ると、彼は私の手の甲に口づけを落とした。

フィリップ・サジタリア……財務大臣のサジタリア伯爵のご子息かと頭の中で貴族名鑑を開きつつ、推測する。


「が……ガゼル将軍のご息女であるメルリス様にお目にかかることができ、こ、光栄です。……ドルーナ・カタベリアと申します、どうぞよろしく」


ドルーナ様もフィリップ様が口づけをした手とは反対の手に、軽く口づけを落とした。

彼はカタベリア伯爵のご子息で、確かお父様は軍務大臣を務めていらっしゃるはずだ。


「ご丁寧なご挨拶をいただきまして、恐縮ですわ。こちらこそ、今後是非ともよろしくお願い致します」


そう挨拶を返したものの、やはり言葉が返って来ない。


「……ルイ様。そういえばそろそろお時間だとドルーナ様がお話されていらっしゃいましが……」


「あ、ああ……そうだったな。悪い、入学式の最終確認があるんだ。……また会いに来る」


「ええ。私も会いに伺いますわ」


ルイは未だ固まり続けている二人を引き連れて、さっさと講堂の中へと入って行った。

一人残された私は、じっくりと外側から講堂を眺める。

この学園の主な建物は五つ……学習棟、講堂、食堂、図書館そして寮だ。

学習棟の地上階を正面口からそのまま真っ直ぐ通り抜けると、中央をくり抜いたような長方形の回廊へと続く。


幾重にも等間隔にアーチ状の柱が並ぶ厳かな雰囲気を醸し出す回廊を進むと、入学式や卒業式そして舞踏会と言った各種行事や催し物が開催される会場である講堂や食堂それから図書館があった。

寮は学習棟を挟んで西側が女子寮、東側は男子寮となっており、それぞれ学習棟より長い渡り廊下で行き来が可能だ。


数歩下がったところで、私はじっと景色を眺める。

視界の先には長方形のくり抜かれた真ん中部分……回廊で囲まれた中庭だ。

薄暗くまた白を基調としていて色彩に乏した回廊とは対照的に、空より陽の光が空より射し、剥き出しの地面には芝生が植えられていて目にも鮮やかだった。


ぼんやりと柱と柱の間からその中庭やその向こう側に見える建物を眺めていると、やがて生徒たちがパラパラと講堂に集まり始ていた。

そろそろか、と私も人の波に乗って講堂へと入った。


講堂は、全生徒が一堂に会しても余裕があるほどの広さを誇っている。

奥には壇が設けられ、その更に上の方に視線を向けると鮮やかな色彩のステンドグラスがはめ込まれていた。

新入生は、適当に着いた順に前から詰めて椅子に座っていく。


「……ようこそ、生徒諸君。君たちの入学を心より祝福する」


入学式が始まって早速、学園長の挨拶が始まった。

要約すると絶賛琢磨し自らの知識を深めると共に、人として成長し国に貢献せよ……そんなところか。

学園長の挨拶が終わると、続けてオリエンテーションが始まる。


そのタイミングで、何とルイが壇上に上がった。

どうして彼が……? と思っていたら、その答えは司会の教師から説明があった。

学園には生徒会と言う生徒を統括する教師と生徒の間の位置付けのような機関が存在し、そのトップである生徒会長にルイが就任しているらしい。

……先ほどドルーナさんが『そろそろ準備しないと』と言っていたが、それはこのことだったのかと一人納得した。


ルイからは入学式が終わった後の流れや、これからの学園の生活の諸注意事項等々が語られた。

彼のその堂々とした姿に、学生側の席の至る所から感嘆の声や黄色い声が聞こえてくる。

勿論、彼の説明を邪魔しないように気を使ってか小さな声量ではあったが。


彼の人気が伺えて、嬉しくて誇らしくて……けれども僅かに嫉妬心を抱いてしまう。

そのままオリエンテーションも終わり、私たちは教室棟に移動する。

学園のコースは、学士科と騎士科、神学科それから淑女科がある。


タスメリア国語や歴史は共通科目として全科混合で組み分けされたクラスで受講し、他は各科ごとの授業を受ける。

各科の授業とは別に希望があれば他の科の授業を受けることも可能だが……基本淑女科の生徒は他の科の授業を取得することはない。


……それは、逆も然りだ。

他の科の生徒が淑女科の授業をとることはまずない……つまり、男性と女性が同じ授業を取るのは共通科目だけ、と言う訳だ。

因みに、全科混合の組み分けには身分や成績は考慮されないとのことだったが……果たしてそれはどこまで真実なのだろうか。

そんなことを思いつつ、私は講堂を出る際に渡された組み分け表を見て自分のクラスを訪れる。

既に半分ほどの生徒がいて、幾人かは既に顔見知りだった。


……その中には、エドガー王子もいた。

そして彼と親交のあるディリトリ伯爵子息やダングレー侯爵子息がいる辺り、やはり組み分けは一定の配慮があるようだ。

……だとすると、私がこのクラスなのも恐らくお父様の名前故か……とも。

教室を見回した際にエドガー王子と目が合ったので、軽く会釈をして適当に空いている席に座る。

それから間もなく、教師が入室した。


「皆さん、ご入学おめでとうございます。私はこのクラスのチューターを勤めますエルドランと申します。どうぞよろしくお願致します。これより三年間同じクラスとなりますので、まずは皆さんに順に自己紹介をいただきたく思います。では、右前の方からどうぞ」


チューターの言う通り、順々に自己紹介が進んでいく。

誰も皆名前とそれから家名、それから一言を添えるという無難な挨拶をしている。

私も皆に倣って、無難な挨拶をした。

全員の挨拶が終わったタイミングで、扉が開いて職員らしき人物が現れてエルドランさんと一言二言会話を交わす。


「……皆さん、ありがとうございます。それでは校内見学の準備が整いましたので、これより学内を案内致します。少々歩きますが、ご容赦下さい」


それから皆立ち上がり、ぞろぞろとエルドランさんの後に続いて歩き始めた。


「一階から三階は通常の教室です。既にルイさんより先ほどのオリエンテーリングで説明がありましたが、各教科によって使用する教室が異なります。休み時間になりましたら、次の授業の教室移動して下さい。もしも教室の変更や休講等のお知らせがありましたら、こちらのボードに張り出しておきます」


各教室は、造りや調度品等々どれも全く同じ。唯一異なるには、教室の扉上に掲げられているプレートに刻まれた英数字ぐらいか。


「四階は特別教室で、主に力学や科学及び生物学の実験室があります」


エルドランさんが試しに扉を開いた室内は、おどろおどろしい実験器具がそこらかしこに置かれていた。

生物学や力学それから科学は、学士科の選択授業。

例年あまり選択する人はいないとのことだったが、例えば貴族の子息でも次男や三男など相続権を有さない方々にとって学者は将来の目指すべき選択肢の一つ。

そのため学園で興味を持った方は、ここで本格的な勉学をするそうだ。


……尤も、そういう熱心な学徒は年に一人か二人のようだが。

この国で最高の知能を有する者たちが教師として在籍しているというのに、勿体ない。

熱心な生徒からしたら、少数での授業となるので幸運なことだろう。

教師からしても、受け持つ生徒が少なければ少ないほど自分の研究に時間を割けるので美味しい話だろう。

その後、再び一階に戻って今度は回廊を時計回りに歩き出した。


「この図書館には、この国一番の蔵書が保管されています。中には稀覯本もありますので警備も厳重です。まず、この館内は一切の火器の使用は禁止です。また、図書の持ち出しもこの列の棚にある本を除いて禁止です。尤も一部……稀覯本は全て鎖で繋がっているので持ち出しようがありませんが」


警備の人が見張る入口を通り抜け、図書館の中に入る。

中は天井まで本棚がそびえ立ち、その中には隙間なく本が収められていた。

古めかしい紙の匂いが、鼻をくすぐる。

確かに幾つかの本には鎖がついていて、それは全て本棚に繋がっていた。


また、鎖のついていない本についても、鞄等の手提げを持って入館した者は全員漏れなく退館時に荷物検査がされているようなにで、持ち出すことは難しいだろう。

図書館を出て、再び左方向に進んだ。

そこは、先ほど入学式を執り行った講堂だ。


「ここは、先ほど皆さんの入学式が行われた講堂です。学年末には舞踏会もここで行われます」


講堂については、通り過ぎながら説明だけ聞くだけで終わった。

再び回廊に戻って左手側を進み、次に現れた建物の入り口の前で止まる。


「ここは、食堂です。席は寮ごとに左右分かれて座っていただきます。入って右側が男性寮、左側が女子寮。個別の席は決められていませんが……入って奥の席が三年、真ん中が二年そして一年生という順で大まかに分けられています」


食堂は高い天井故か、中々広く感じられる空間だった。

目よりもずっと高い位置にステンドグラスが嵌め込まれた窓が等間隔に並び、陽の光を鮮やかな色に染め上げている。

壁には、幾つかの学園関係者の肖像画が飾られていた。


「平日は昼食・夕食を必ずこちらで召し上がっていただく決まりとなっていますので、もしも食堂で食べない場合は事前に連絡をお願い致します。朝食と休日についてはそういった決まりはありませんので、こちらで食べない場合も特段知らせは不要です。ちなみに朝食は六時から八時までの間、昼食は十一時から十三時までの間の好きな時間に召し上がっていただけます。夕食は十九時きっかりに始まりますのでご注意下さい」


席は細長いテーブルが四つあり、その机を囲むようにして椅子が等間隔に並んでいた。

晩餐会用のテーブルセッティングをそのままスケールだけ大きくしたようで、中々迫力がある。


「最後になりますが、礼拝堂をご案内致します」


再び学習棟に戻り、正面玄関から出た。

そして門の方へと歩き出してすぐ、右手側に木々に囲まれた礼拝堂が目に映る。

中央奥に神を祀る壇があり、そして簡素な礼拝者用の細長い椅子がズラリとその壇に向かって並べられていた。


柱には幾つもの細かな彫刻が施されていて、神に仕える天の御使やダリル教によって正式に認められた聖人がそこかしこに……けれどもゴテゴテした印象を与えない程度に配置されている。

重厚感がありつつも柔らかな雰囲気を漂わせ、かつ静謐なこの空間にいると、不思議と心が洗われるような気がした。

誰も言葉を発しないままに礼拝堂を出ると、再び学習棟へ戻った。


「生徒会長より説明のあった授業表は既に皆さんの部屋に配布済みです。今後一週間体験し、自分の所属する科以外の授業を取得したい場合は、私まで提出をお願い致します。それでは私からは以上です。この後男性寮と女性寮への案内及び規則の説明がそれぞれあります」


エルドランさんと入れ違いに、一組の男女が現れた。


「私はウィリアム。男子寮の寮長及び生徒会会計の役職に就いています」


「私はローラと申します。女子寮の寮長及び生徒会書記の役職を頂いております」


二人の後を、男性女性に別れて付いていく。

長い渡り廊下を歩き、到着した先にあったのは学習棟と変わらない高さの建物。

入口に入ってすぐは、レセプションがあった。


「寮から出る際には、こちらで受付の者が各部屋の鍵を預かります。戻った際にはお名前と部屋番号を伝えると、鍵を返して貰えます。また、図書館で説明があったかと思いますが、一部の本については貸出が可能です。返却の際には受付の者に渡すと返却となります。また、体調不良やご実家のご都合等で授業を休まれる際には同じくこちらの者に伝えていただければ問題ありません。他に手紙の送付・授業の教材の購入はこちらで対応いただけます。こちらで購入いただけるものは、こちらの受付の机の上もしくは各部屋机にこのリストがございますので、ご確認下さいませ。こちらのリストにない物の仕入れ等受付の者に無理を仰るのは厳禁です。……残念ながら二、三年に一度そういった方がいらっしゃって、停学の処分を受けております」


何となく、受付の人に無理を言うというのは想像がつく。

……今まで実家で何不自由のない生活を送って来たのだ……この寮生活でも同じような生活を想定している生徒にとって一番身近な不満の捌け口は受付の人となるのだろう。


「稀にご実家の権勢を職員に誇り、職員へ圧力をおかけになろうとする方もいらっしゃいますが、判明次第更に重い罰が下されますのでくれぐれもご注意下さいませ。……そもそもこの学園は王立、つまり王の命によって設立されたという背景がございますれば、各職員は如何なる圧力にも屈せず王国と職務にのみ忠実であれと誓いを立てております。また、職員は私ども生徒会及び定期的に派遣される王国調査団によってその誓いが守られているか監視されております……彼らも簡単には屈することはありません」


生徒を職員が監督し、その双方を生徒会、更に全体を王国調査団が監査するということか……。

生徒と教師の癒着が発生してしまうと教育の場としての意義が根幹から揺らいでしまうために、そのような厳しい管理体制を敷いているのだろう。


「こちら側に医務室がございます。常に医者が常駐しておりますので、健康面で何かご不安なことがございましたらこちらにご相談下さい」


レセプションを正面に右側に曲がると、そこには白を基調とした医務室。

三つベットが置かれ、端の棚には何が何か分からない薬品の入った棚が二つ置かれている。

そして入ってすぐ左側には医師用の机があり、実際に白衣を着た医師が控えていた。

ローラさんを筆頭に軽く会釈をすると、邪魔にならないよう早急に部屋を出る。

そのまま更に奥へと進んだ。


「こちらには、風呂場がございます。風呂場が使用可能なのは夕刻の十六から十八時もしくは二十一時から二十二時です。各部屋にも簡易の風呂場はございます。この先には、手洗い場ですね。それから、皆さまの洗濯は地下階にございます洗い場で洗うことが可能です。とは言え生徒が自ら洗濯する必要はなく、この部屋番号が書かれた白い袋が机の中にございますので、衣類を入れて部屋に置いておいていただければ、学園の使用人が各個室の掃除の際に回収して翌日には戻しておきます」


説明が終わると、元来た道を戻り今度はレセプションを挟んで反対側に進んだ。


「反対側はカフェテリアです。軽食及び各種飲み物の入手が可能です」


足の長い丸テーブルが数個と、椅子が幾つか。

どうやらこちらで食べる用というよりは、各個室への持ち込みを想定しているようだ。


「以上で地上階の説明は以上ですが、何かご質問は?」


ローラさんの問いかけに、誰も口を開くことはない。

私たちを見渡しそれを確認してから、ローラさんは受付脇にあった階段を登った。

登った先には、広間のような部屋。


「こちらは一階、談話室です。お好きな時間にお使いいただけます」


ソファーが多く置かれ、そのソファーの間を縫うようにサイドテーブルが置かれている。

床には花柄の可愛らしい敷物が敷かれていて、壁には薄桃色を背景とした可愛らしくも美しい宗教画が描かれていた。


「その階段を登りますと、各個室のある階層に到着致します。皆さまの個室の部屋番号は予めご連絡している通りです」


彼女が指差した先と、それからその対角線の端にはそれぞれ上へとつづく階段があった。


「何かご相談ごとがございましたら寮長の個室は二〇一号室でございますので、気軽にご相談下さいませ。時折騒音の苦情がございますので、くれぐれも皆さま節度を持ってお過ごしください。また、個室内の飲食は許可されております。男性の訪問は、どのような関係性だとて許可されておりませんのでご注意下さいませ。他、細かな規則は各部屋にこのようなパンフレットが備え付けられ細かく記載ございます。是非、ご一読下さいませ。案内は以上となります」


ローラさんに拍手を送った後、私たち新入生は自然と解散をしていた。

鍵を受付で受け取り、自室の二十五号室に入る。

既にアンナが一度部屋に入って荷解きをしておいてくれたおかげで、特段の作業も不要でそのまま寛ぐことができた。


部屋はクイーンサイズのベットが一つ中央にあり、窓側に学習机そして扉側には化粧台がある。

扉付近にはクローゼットそして扉を挟んで反対側には扉があって、その中は水場だ。

念のため、ローラさんに言われた通り机に備えつけられた規則集に目を通す。


……これから先、基本的に使用人がいない生活を送らなければならない。

尤も、私の場合は使用人がいなくとも自分のことは自分でできるので問題ない。

そもそも、掃除洗濯は学園の使用人が対応してくれるので、自分ですることと言えば身支度ぐらいだけれども。


舞踏会等使用人に支度を任せたい場合には女性の使用人であれば呼び出すことも可能で、その場合は女子寮の離れに使用人専用の宿泊施設があるようだ。

規則を読み室内の設備を確認し終えたところで丁度夕食の時刻となったため、そのまま寮を出て食堂へと向かった。

皆時刻通り食堂には到着していて、それぞれ席に座っている。

どうやら大皿形式のようで、各グループごとに前菜からデザートまでそれぞれ大皿に盛られて机の真ん中に置かれていた。私も適当な席に座って、食事を楽しんだ。

その後入浴し、翌日の準備を終えるとさっさと就寝して初日を終えた。



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