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武家の嗜み  作者: 澪亜
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私の旅

本日7話目の投稿です

「パークス様」


屋敷で部屋に戻る途中、お兄様に会って声をかける。


「入学の準備は、いかがですか?」


年明け、お兄様は学園に入学する。

その学園は貴族の子息令嬢が集められ、高度な知識を教えられると同時に貴族同士の横の繋がりを深めるための場だ。

お兄様ほどの方なら、まず勉強の方は問題ないと思うけれども。


「ああ、もう殆ど終わっているよ。というより、あまり準備するものもないからな」


「そうですか。……パークス様がいなくなるのは寂しいですね」


学園は寮生活が基本のため、お兄様は暫くこの家を不在にする。


「まあ、そう言うな。休みは戻るのだから」


「では、その時に是非学園の話を聞かせてください」


「そうだな……」


コソリと、私の耳元にお兄様は近づく。


「お前も三年後にはそうなるけど、な」


そうして、そう小さな声で囁いた。


「そうなんですよね。ですが正直、気が進みません」


「そうなのか?」


「はい……。私はパークス様と違ってそこまで勉学に力を入れてこなかったですし、何よりその時間があるのであれば訓練をしていたいと」


全くの無駄というわけではないと思うけれども、学園に入って領生活を始めてしまえば訓練に参加できない。

そもそも、自主練ができるかも謎だ。

そう考えると、できることならば学園には行かずにこのまま家に残って訓練に力を入れたいというのが正直な思いだ。


「なるほどな。まあ、後三年あるんだ。先のことは、じっくり考えると良い」


「……はい」


私が頷くと、お兄様は私の頭を撫でた。


「そういえば、一度領地に戻ることになった」


ふと、思い出したように呟く。


「……え?」


「学園に入る前に、色々済ませておきたいことがあってな。長らく帰ってなったから、今回帰ることにした。何か、土産に欲しいものはあるか?」


「いえ……それは、特に。それより、パークス様。大丈夫なのですか?」


「一応これでも相応に訓練は積んでいるさ。護衛兵も連れて行くし。心配はありがたいが、大丈夫だよ」


お兄様の苦笑いに、けれども私は不安が募る。

お母様の件があったし、私だとて襲われたのだ。

心配するな、という方が無理である。


それからそのことで悶々と過ごしつつ、けれども日々は過ぎていった。

そうして、お兄様が旅立たれる日。

私はこっそりとお兄様の後を追うべく、馬上にいた。


後でお父様に怒られるのは必至だけれども、それでもやっぱりお兄様が心配で。

気づかれないように距離を置きつつ、私はお兄様たちの後を追う。


流石に警戒してか、今回かなりの数の護衛兵たちがお兄様の供をしていた。

数もそうだけれども、シュレーさんを始めとする中々の精鋭揃いだ。


けれども護衛兵のメンバーを確認していたところ、その中に国軍の兵士たちが紛れていたことに気がついた。


……何故、国軍の彼らが?


気のせいかと思ったけれども、毎日訓練で顔を見ているのだ……間違えることはない。

しかも国軍のメンバーの中には、副将軍の地位にいるはずのクロイツさんがいたのだ。


……ありえない。


何故なら幾らお兄様が心配だからといって、お父様が国軍を私的なことに利用することはまずないからだ。


一体何故……。


表現し難い違和感が、私の中を過ぎる。

メンバー的には問題ないけれども、その違和感が私を突き動かして結局付いていくことにした。


王都を出て、長閑な風景を進む。

お兄様たち一行が人通りの多い道を進んでいるおかけで、今のところ私が追いかけても目につくようなことはない。

念のため、フードのついたケープを着ているけれども。


……そういえば、王都を出るのも久しぶりだな。

ふと、そんな考えが思い浮かぶ。


同時に、今頃私の書き置きが発見されて、お兄様を追った私をお父様が烈火の如く怒っていることが容易に想像ついて、帰った後の自分の処遇がどうなるのかが気になった。


まず、暫く街に行くことは難しくなるだろう。


どれぐらい怒られるのだか……心配をかけていることは事実だから、潔くそれを受け止めよう。

お父様のお怒りは恐ろしいけれども、それ以上に後悔することの方が怖い。

お兄様に何かあったら、悔やんでも悔やみきれない。

だからこそ、お父様のお怒りを恐れて戻ろうとするつもりはない。


……何があっても旅を続ける、お兄様をお守りするのだ……!


そんな覚悟を固めながら旅路を進んでいき、けれども一つ旅を続ける上で問題が浮上した。


旅を続ける上で、一番問題となったもの……それは、路銀だった。


旅には、それなりにお金がかかる。

かといって、内緒の旅路なので家に頼る訳にもいかなかった。


とりあえず確保できた分は持ってきたけれども……首から下げる財布は、想定以上に軽くて心許ない。


服に縫い付けた分を考えても、足りるかどうか……。


……日が経つに連れて元々薄かったそれが更に薄くなっていく様を目の当たりにして、流石に私も焦り始めた。


とはいえ、引き返すという選択肢は私にはない。


ということで、まず宿代を削ることにした。

……できれば、襲撃に備えて宿も同じところが良かったんだけど。


けれども無理なものは無理だったので、なるべく近くの宿を取るというので妥協。

お兄様が泊まる宿を確認して、そこから一番近くて最も安い旅人用の宿を選ぶ。


それから他にも食事代や水代は、なるべく道中自分で調達して……そんな野戦中のような生活という涙ぐましい努力をしつつ、お兄様の後をひたすら追った。


そうして、もうすぐで領地に到着するというところまで来た。


徐々に人通りが少なくなって、尾行するのが難しくなっている。


そのため私は整備された道ではなく、その周りの道なき道を進んでいた。

段々野生化する自分に少し物悲しさを感じつつ、先へ先へと進む。


……ここで何もなかったら、引き返そう。


そう思った最中、辺りの気配が変わった。


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