私の苦手なもの
内容を第6部より場面を追加したかったために刷新しております。また、これまでの部分についても細かいところを変えています。大変申し訳ございませんが、改めてお読みいただけると幸いです。(12/4更新4話目)
※ダイジェスト化は、ありません。
剣を授かった後も、前と変わらず訓練用の剣で変わらず鍛錬の毎日だった。
時折手に馴染ませるように、振るうぐらいか。
考えてみれば、現役の兵士ではない私に、その剣を振るう機会がないのも当然といえば当然のことなのだが。
とはいえ、以前よりも更に訓練に熱が入るようになったのは事実。
お父様は王都に行ってしまったけれども、護衛隊がいるので訓練相手には事欠かない。
彼らは各々異なる強みを持っているので、その良いところを取り入れようと眺めているだけでも勉強になるし、打ち合った時にはその対策を考えつつ闘うことでそれもまた良い勉強になるのだ。
そしてお父様がお帰りになら、またお父様と打ち合う。
……因みにお父様は結構な頻度で領地にお戻りになられる。
というのも、お父様は馬車ではなく馬を飛ばして帰ってくるので早い上に、護衛も少数精鋭で身軽だ。
それはともかく、お父様とどんなに打ち合っても、今のところ全くお父様に勝てるビジョンが未だ見えない。
訓練で勝てても、それはお父様の手加減があってのこと。
私もまだまだ、だ。
お父様との打ち合いの度、自分の至らぬところをまざまざと見せつけられて……けれどもだからこそ、興奮する。どうすれば勝てるようになるか、と。
「ふー……」
今日の訓練を終えて、私は汗を布で拭う。
時間は、ちょうど昼すぎだった。
「お嬢様、お嬢様……!」
「あら、ばあや。一体どうしたの?」
慌てて駆け寄って来たばあやに、私は首を傾げる。
ばあやは、ずっとこの侯爵家に仕えてくれている者だ。
貴族の子女が、マナーを学ばないなんて……!とお小言を言うものの、そこは流石長年侯爵家に仕えているだけあって、訓練自体をどうこう言うことはない。
毎度何とか私にマナーレッスンを受けさせようとするばあやと私の攻防は、最早この侯爵家の日常を彩る一コマと言っても過言ではない。
「今日こそはレッスンを受けていただきますよ」
「そうは言っても、ばあや。私は今のところお茶会に行く予定はないもの。それならば、こうして訓練をしていたいわ」
「私も、侯爵家に仕える者としてお嬢様の弛まぬ努力はとても素晴らしいものとは思います。ですがお嬢様のもとに、お茶会の招待状が届きましたので」
「まあ、ばあや。こんな姿で、一体どこに行けと言うのかしら?いつもの理由で断ってちょうだい」
私は訓練を始める時に、邪魔だからと自ら髪を切った。
耳の後ろぐらいから、ばっさりと小刀で。
あの時、一番に私のその姿を見たばあやは悲鳴を挙げていたっけ……。
今でも、伸びる度に切ってしまっている。
そしてその度に、ばあやは悲鳴をあげつつも、そのままではみっともないと私の髪を切り揃えてくれていた。
男の子のような、この髪。
流石にこれでどこぞの家に行くというのは無理なので、招待されても私は辞退している。
未だに英雄という肩書きに繋がりをつけたい家の多いこと、多いこと。
家のためには幾つか行った方が良いのかもしれないけれども、お父様は『子どもがそんなことを気にせずとも良い』と仰っているので、その言葉に甘えている。
それで全部お断りしていたら、いつの間にか私の病弱説が出ていた。
何でも、お母様を亡くしてそのショックで……とのことらしい。
お母様を亡くしたことが契機なのには間違いないが、現状病気とは無縁の生活。
けれども角の立たない断り文句にちょうど良いかと、その噂に便乗するように体調不良という理由を使わせて貰っている。
今回もそれで良いかと思っていたのだけれども……。
「いいえ、お嬢様。今回お嬢様をご招待されたのは女王様です。お断りすることは、難しいかと……」
「女王様が……?」
一体何故、女王様が……と首を傾げる。
「はい。身なりの方をお嬢様はお気にされているようですが、傷は服で隠せますし、御髪は今までお嬢様が切られた髪を残しておりますので、それを編み込んで付け毛にすれば大丈夫かと」
ばあやに、退路は絶たれた。
というか、王族の方のお招きの時点で退路はないか。
「はあ……。付け焼き刃でも何でも、ないよりマシ……よね?今からレッスンを受けるわ」
王族に失礼があってはならないということで、とりあえずお茶会のマナーに絞って訓練を始めることとなった。




