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夏の涼風  作者: 海獅子
32/36

第32話 先輩に言わないと

 終業式、当日の朝。



 ・・・



 「ピピピッ、ピピピッ」


 「はっ!」


 「(ガバッ!)」




 朝、僕は目覚ましの音と同時に、激しく身を起こした。


 今回は、夢の内容を忘れずにいる。


 そして、僕は思い出したのだ。

自分の前世の事を・・・。



 そう、僕は前世は涼子先輩の弟だったのである。



 なぜ今頃、それを思い出したのか?


 やはり、先輩と出会った為だろう。


 それに、どうして先輩と出会ったのか?


 それに付いては分からないが、多分、何かが有るのだろう。


 僕は、ベッドに身を起こしたまま。

そんな事を考えていたのだった。




 *********




 今、僕は体育館に居る。


 なぜなら、終業式の最中だからである。


 お約束通り、壇上では学長が長々と挨拶をしていた。


 だが、それをマトモにだれも聞いていないのも、いつも通りだけど。




 「ふふふ、ふふん〜♪」




 蛍一はと言うと、見れば後ろの方で何やらウキウキしていた。


 しかし蛍一だけでなく、誰もがみんな、多少なりとも浮ついていた。


 それは仕方(しかた)がないだろう、これが終われば夏休みに入るのだから。



 ・・・



 だが浮ついた、そんな周囲をよそに、僕は涼子先輩の事を考えていた。




 「(先輩に、何て言えば良いのか・・・)」




 僕の前世が先輩の弟である事が分かったが。

上手くいけば、先輩を成仏?させる事が出来るのではか?

と考え付いた。




 ”・・・でも、私のせいで死なせた優に顔向け出来ない・・・”




 以前、先輩が言った言葉を思い出した。


 つまり、先輩が今の状態になったのは。

僕?に対する、罪の意識からだと思う。


 だから、僕なら先輩を説得出来るのでは無いかと、考えたのだ。




 「どんな風に言ったら良いのかな・・・」




 と言う訳で、僕は終業式中、先輩に言う事を考えていたのであった。




 *********




 それから教室でのホームルームも終わり。

本格的に、夏休みに入った。


 僕は蛍一達に、帰る途中で遊びに行こうと誘われたが。

先輩と話をしなければならないので、遊ぶのを断った。



 ・・・



 蛍一達と分かれると、その足で例の大木の所に向かっていた。


 僕は、慌てている為か、自然と急ぎ足で歩いている。


 そして、あの大木の所に付くと。




 「ねえ〜、諒くん〜。

夏休み中はどうするの?」




 いつもの様に、目の前にイキナリ先輩が現れた。




 「う〜ん、私、寂しいから。

出来るなら夏休み中も出てきて欲しいなあ〜」



 先輩は、そう言いながら、甘えるように僕を上目遣いで見ている。


 だが僕は、言わないとイケナイと焦っているせいか。

その場で固まったままでいた。




 「うん? 諒くん、どうしたの?」




 そんな僕を不審に思い、先輩が尋ねてきた。




 「あの・・・、先輩。いや、姉さん!」




 僕は意を決して、口を開いたが。

僕の言葉を聞いて、今度は先輩の方が固まってしまった。



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