第32話 先輩に言わないと
終業式、当日の朝。
・・・
「ピピピッ、ピピピッ」
「はっ!」
「(ガバッ!)」
朝、僕は目覚ましの音と同時に、激しく身を起こした。
今回は、夢の内容を忘れずにいる。
そして、僕は思い出したのだ。
自分の前世の事を・・・。
そう、僕は前世は涼子先輩の弟だったのである。
なぜ今頃、それを思い出したのか?
やはり、先輩と出会った為だろう。
それに、どうして先輩と出会ったのか?
それに付いては分からないが、多分、何かが有るのだろう。
僕は、ベッドに身を起こしたまま。
そんな事を考えていたのだった。
*********
今、僕は体育館に居る。
なぜなら、終業式の最中だからである。
お約束通り、壇上では学長が長々と挨拶をしていた。
だが、それをマトモにだれも聞いていないのも、いつも通りだけど。
「ふふふ、ふふん〜♪」
蛍一はと言うと、見れば後ろの方で何やらウキウキしていた。
しかし蛍一だけでなく、誰もがみんな、多少なりとも浮ついていた。
それは仕方がないだろう、これが終われば夏休みに入るのだから。
・・・
だが浮ついた、そんな周囲をよそに、僕は涼子先輩の事を考えていた。
「(先輩に、何て言えば良いのか・・・)」
僕の前世が先輩の弟である事が分かったが。
上手くいけば、先輩を成仏?させる事が出来るのではか?
と考え付いた。
”・・・でも、私のせいで死なせた優に顔向け出来ない・・・”
以前、先輩が言った言葉を思い出した。
つまり、先輩が今の状態になったのは。
僕?に対する、罪の意識からだと思う。
だから、僕なら先輩を説得出来るのでは無いかと、考えたのだ。
「どんな風に言ったら良いのかな・・・」
と言う訳で、僕は終業式中、先輩に言う事を考えていたのであった。
*********
それから教室でのホームルームも終わり。
本格的に、夏休みに入った。
僕は蛍一達に、帰る途中で遊びに行こうと誘われたが。
先輩と話をしなければならないので、遊ぶのを断った。
・・・
蛍一達と分かれると、その足で例の大木の所に向かっていた。
僕は、慌てている為か、自然と急ぎ足で歩いている。
そして、あの大木の所に付くと。
「ねえ〜、諒くん〜。
夏休み中はどうするの?」
いつもの様に、目の前にイキナリ先輩が現れた。
「う〜ん、私、寂しいから。
出来るなら夏休み中も出てきて欲しいなあ〜」
先輩は、そう言いながら、甘えるように僕を上目遣いで見ている。
だが僕は、言わないとイケナイと焦っているせいか。
その場で固まったままでいた。
「うん? 諒くん、どうしたの?」
そんな僕を不審に思い、先輩が尋ねてきた。
「あの・・・、先輩。いや、姉さん!」
僕は意を決して、口を開いたが。
僕の言葉を聞いて、今度は先輩の方が固まってしまった。




