第22話 夏の涼風と冬の日溜り
翌日の昼休み。
今日、僕は渋る先輩を説得して、図書室に来ている。
先輩は二人きりで、あの木の所で居ようと言っているのだが。
先輩を、このままにしておく訳にはいかないので。
とりあえず来て、手がかりになりそうな物を調べているのだ。
「へえ、外は全然違うんですね」
「うん、大分変わったねぇ〜」
それで今は、当時の状況を知りたいので。
先輩が生きてたら、載っているであろう年の卒業アルバムを見ていた。
学校の校舎も基本的には、その当時と変わらないが。
その後の耐震工事などで、相当、手が入っている為、外観がかなり変わっていた。
その当の先輩は、僕の隣の椅子に座って一緒に卒業アルバムを見ている。
さすがに、この間、図書委員の人に言われた事もあり。
基本的に、他の人に姿が見えない先輩は。
下手な事をして僕が変な目で見られない様に、おかしな行動を自粛している。
「あ、先輩の言う通り、スカートの長さが長いですね」
「そうでしょ」
「でも、他の学校では、ミニスカと言っても良い様な所も有りますよ」
「・・・うん、信じられないけどね、有るんだよね。
その割には、ブルマが無くなってしまったけども」
「はい、・・・確か、体の線が出るから恥ずかしいとか言う話で、無くなったんでよね。
でも、ミニスカだと体の線どころか、生足を太股まで晒しているわけでしょ。
それどころか、下手をしたらスカートの中が、見える様な短いのも平気である訳だし」
「当時は、そんな意見があったみたいだけど。
その後、そんなのが意味が無くなってしまった様な気がするの・・・。
あ、そうそう、この間なんか、私服で学校に来ていた娘なんて。
体の線どころかお尻がハミ出した、ホットパンツを着ていたのよ」
「うわ〜、それは凄い」
僕たちはアルバムを見ながら。
周囲の目を気にして小声で、そんな事を話していた。
*********
そうやって、二人で楽しく会話をしていると。
話の流れで思わず。
「でも、先輩と一緒に居ると気持ち良いですよ」
「そお?」
「はい、先輩を見ていると意味が無く、”夏の涼風”をイメージするんです」
「どうして?」
「見た目が冷たそうな美人だけど。
話すと茶目っ気があって、楽しくて、心地良いからですよ」
「悪かったわね、冷たくて」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
つい口を滑らせたおかげで、先輩が拗ねてソッポを向いた為。
僕は、必死で謝る。
・・・
「でもね、私は諒くんの事を、冬の日差しだと思うけどな」
「どうしてですか?」
機嫌を直した先輩が、僕の方を向きながら。
「夏の日差しみたいな存在感が無くて、目立たないから」
「どうせ、僕は地味で目立ちませんよ」
「ふふふ、さっきのお返しだよ〜♪」
そう言って、クスクス笑った。
「でもね、冬の日差しが当たる日溜りは。
立ち止まって当たると暖かくて、気持ち良くて、眠ってしまうしまう様な安心感があるの。
君には、そんな日溜りみたいな、暖かさと安心感があるんだから」
先輩が優しい眼差しで、微笑みながら僕を見ている。
その眼差しを受けて、僕はドキリとしてしまった。
僕は思わず、アルバムの方に視線を逸らしてしまうが。
そんな僕を先輩が、相変わらずの微笑みで、優しく見詰めていた。




