最終話 狂った美少女
翌日の朝、カーテンの隙間から差し込む朝日に照らされて遥輝は目を覚ました。
「……」
目を開いて一番最初に見えたのは、最愛とも言える存在である美晴の真っ白な肌だった。
「おはよう、遥輝くん」
どうやら美晴は先に目を覚ましていたようで、こちらを見ながら綺麗な笑みを浮かべている。
「おはようございます」
遥輝は挨拶を返した後、美晴の全身を見渡した。
(何で下着姿なんだ…!)
目の前にいる人気モデルは何と下着姿で横たわっていて、遥輝は咄嗟に目を逸らした。
すると美晴は可愛いものを見る目でこちらを見ながら頬をツンツンと突いてきた。
「もお、昨日はあんなにカッコよかったのに…一晩経って冷静になっちゃった?」
「いや昨日は何も__」
「まああれだけ激しくしたんだから仕方ないよね♡一晩中寝かせてくれなかったもんね?♡」
美晴は頬を赤くしながら手で顔を覆った。
「きゃー♡思い出すと恥ずかしくなってきちゃった♡私たちの初体験終わっちゃったんだー♡」
「………」
(さっきから何言ってんだこの人…)
嬉しそうに一人で話を進める美晴を遥輝は冷めた目で見つめる。
「あの、昨日の夜は何もありませんでしたよね?何捏造してるんですか」
「ん?あったよね?」
「いやありませんでしたって」
「だーかーらー、いっぱい交わり合ったでしょ?ほら、服だって脱がされたままだし」
「いや昨日の夜は脱いでませんでしたよね?」
正確には美晴が脱ごうとしたところを遥輝が防いだといった感じである。
だが美晴は事実を捻じ曲げてでも遥輝と致したことにしたいらしく、まだまだ話を終わらせてくれそうなかった。
で、そこから十分後にようやく美晴が何もなかったことを認めてくれたが、彼女には少し拗ねられてしまった。
(いや俺何もしてないのに!!)
遥輝は心の中でそのようにツッコミを入れつつ、ホテルを出るために準備を進めていった。
そしてすぐにホテルを出た後、普通に家に帰ろうとしたところで美晴にカフェに連れ込まれてしまった。
どうやら今後の話がしたいらしく、美晴はお茶が到着するなりすぐに話し始めた。
「昨日はありがとね。私のわがままに付き合ってくれて」
「いえ、俺も楽しかったですし。それに、可愛い彼女のわがままを聞くのも彼氏の役目ですから」
何も飾らずにそう答えると、美晴は嬉しそうに笑って。
「遥輝くん、言うようになったね〜。お姉さんドキッとしちゃったよ」
「それならよかったです」
「でもこれからは私が遥輝くんをドキドキさせてあげるから覚悟しててね?」
「ははっ、楽しみにしておきます」
まあ美晴が狙ってドキドキさせようとしなくても遥輝はいつもドキドキさせられている。
現に今美晴に笑顔を向けられただけで心臓が大きく跳ねている。
(俺、美晴さんのこと好きすぎだろ)
笑顔を向けられただけで体温が上がっていることを感じて自分の美晴に対する気持ちの強さを認識し、自分に対してため息をついた。
でもこうやって美晴のことを好きでいられる時間がとても楽しいし、一番好きな時間でもある。
(幸せだなぁ)
遥輝は心の奥底から湧き上がってくる幸福感に満たされ、つい美晴の顔を見つめてしまった。
(いつまでも、ずっと…)
そばにいてほしい。
(いや、流石に欲張りすぎるか。好きな人にそこまで迷惑をかけるわけにはいかないな)
遥輝は自分の中でわがままを言うことを諦めた。
だがしかし、美晴はまだ楽しそうに笑っていて。
「どうしたの?私の顔を見て色々表情を変えて。もしかして、私との将来が不安になっちゃった?」
「…はい」
完全に見透かされてしまって悔しいという気持ちを抱いている間に、美晴は手を伸ばして頭を撫でてきた。
「心配しなくていいよ?♡私は一生君のものだから♡」
「!?」
美晴の言葉にまた心臓が跳ねる。
(…単純だな、俺)
自分のチョロさを実感して少し落胆していると、美晴は目に♡を浮かべながら暴走し始めた。
「私の全部をあげるから、遥輝くんの全部を私に頂戴?♡」
「いいですよ」
「やったー♡これでずっと一緒だね♡」
「ですね」
少し参ったように返答を続けていると、美晴はさらに暴走し始めた。
「一生そばにいてね♡絶対に離さないから♡」
「なんか怖いですね。せめて昨日みたいに一人で遊んでいる時は勘弁してくださいね」
「え?やだよ?」
「え?」
遥輝はポカンとした顔を浮かべるが、美晴は至って普通のことを言うかのように話し続けた。
「だーかーらー、遥輝くんは一生私と一緒に過ごすの♡ご飯を食べる時も遊びに行く時もお風呂に入る時も♡そしてベッドでも…♡」
「いやいやいや!そこまできたら流石にストーカ__」
「ふふっ♡ずーっと一緒にいようね♡」
美晴の目からは光沢が消え、狂ったように愛を飛ばしてくる。
(こ、これはちょっとヤバいやつでは…?)
事故から助けた美少女に付き纏われるんですが。
もうここまでくると取り返しがつかない気がする。
(でも…悪い気はしないな)
だが完全に美晴に魅了されてしまった遥輝はこんな恋愛も悪くないなと感じていた。
(変わってしまったな、俺も)
それは間違いなく彼女のせいである。
だがしかし、美晴に狂わされるのであればそれが本望である。
(美晴さん…愛してる…)
遥輝はそっと心の中で美晴にそう語りかけたのだった。
というわけで、この作品はこれで終わりとなります。
今まで読んでくださった皆様、誠にありがとうございました。
この作品ではかなり♡を使ったため、予測変換に出てくるようになってしまい非常に厳しい毎日を送っています(?)。
まあ、そんなのはどうでもいいとして。
本当にありがとうございました。
本当に書いていて楽しい作品でした。
本当にさようなら(?)。
あ、次回作はありますよ?
多分。




