35 深いキス
「ふぅ〜気持ちよかった〜」
美晴がシャワーを浴びに行ってから二十分後、彼女はバスローブを緩く着たまま脱衣所から出てきた。
「美晴さん、ちゃんと着てくださいよ…」
「え〜こっちの方が興奮するでしょ?」
「いやそんなことありませんから!」
正直に言うと、滅茶苦茶興奮してます。
緩く着たバスローブの間から見える胸の谷間に目が吸い付けられてしまっています。
そして何よりチラッと見える先程美晴に選んであげた下着がもうそれは素晴らしいものですよ。
(いかん!このままでは脳が侵略される!!)
主に美晴の強烈な女子パワーによってだ。
だが当然そんなことになってしまうと我を忘れて美晴を襲ってしまう。
(ここは…お経を唱えて邪心を祓うしかない!!)
遥輝は心の中でお経を唱えて冷静さを保つ作戦に出た。
「…どうしたの?なんかぶつぶつ言ってるけど」
「あ、いえ。何でもありません」
どうやら声に出てしまっていたようなので今度は気をつけてお経を唱えた。
だが当然美晴はそんなことをしているなど知らないのでお構いなしにベッドに誘ってくる。
「ほら♡早くおいで♡」
「…」
平常心を保つことに全神経を注いでいる遥輝は当然返事もしない。
だがその集中力が仇となり、遥輝は知らぬ間にベッドの中に入ってしまっていた。
「ふふっ♡とうとうやる気になっちゃった?♡」
遥輝が無表情のままベッドに入ると美晴は嬉しそうに笑った。
「いいよ♡私たちの愛を確かめ合お?♡」
そう言いながら美晴は遥輝の上で馬乗り状態になった。
まるで押し倒したかのように遥輝の両肩付近に手を置き、そして顔を近づけた。
「じゃあまずは…キスからっ♡」
美晴の唇が遥輝の唇に当たり、そして離れたり。
甘い効果音が聞こえるぐらいのキスを何度も繰り返し、そして次第に美晴は舌を入れるようになった。
(ん…何だこれ…気持ちいい…?)
ようやくお祓いが完了し、我に帰ってきた遥輝は自分の状況を理解しようとする。
(なんか…顔近いな。口もなんかヌメヌメするし。まるでキスでもしてるみたいな…)
「っっっ!!!!????」
(いやこれマジでキスしてるって!?ちょ、これしかも深いやつじゃん!?)
ようやく自分の置かれた状況に気付いた遥輝は何とか美晴の身体を突き放そうとするが、美晴の執念が勝ってなかなか身体が動かせずにいた。
その間にも美晴に舌を入れ続けられ。
(あぁあぁなんだこれぇえぇぇあぁあぁ)
遥輝の心には一度祓ったはずの邪心が復活し、もう制御できなくなりそうなところまで来てしまった。
だが丁度そこで美晴の口が離れ、舌が糸を引きながら去って行った。
「はぁ…はぁ…ふふっ♡気持ちよかったね♡」
息が続くギリギリまでキスをしていた為、美晴は息を荒げながらニコニコと笑った。
「遥輝くん顔真っ赤だよ♡喜んでくれたってことかな?♡」
「……」
遥輝は黙って目を逸らした。
ここで否定しなかったのは実は遥輝は喜んでいるという事実があったからだ。
美晴に嘘は通用しない為、否定すればそれ即ち肯定ということになってしまう。
なのでここではシカトが正解というわけだ。
だが多分この沈黙が肯定であるということも美晴はわかっている。
現に美晴はニヤニヤと笑いながらこちらの顔を見つめてきている。
「ふふっ♡喜んでくれてるみたいでよかったよ♡これぐらいならいつでもしてあげるよ?♡ほら、もう一回しよ?♡」
そう言って美晴はもう一度顔を近づけてきた。
だが今度こそは遥輝が美晴を止めることに成功し、美晴は至近距離でぷっくりと頬を膨らませた。
「もお、恥ずかしがらなくていいのに。ここには私たち二人だけなんだから、自分の全てを曝け出そ?ね?♡」
また美晴は甘い言葉で誘惑してくる。
そして遥輝の心はまた揺さぶられる。
(ぐぅぅぅがわいずぎるぅぅぅ!!!!)
もう我慢の限界を迎えた遥輝はついに腕の力を抜いてしまった。
そんな遥輝の行動が受け入れてくれたと感じた美晴はすかさず遥輝の唇を奪った。
「ん♡もっと♡もっとしよ♡」
遥輝は美晴のされるがままに唇を、そして舌を差し出した。




