22 未来に任せる!
その後も一時間ほどベッドの上で美晴とイチャイチャしていると、突然扉からノック音が響いてきた。
「入っていいかしら?」
「いいよ」
遥香は扉を少しだけ開けてチラチラと部屋中を確認した後、クンクンと匂いを嗅ぎながら中に入ってきた。
「何してんの…?」
「いえ、なんでもないわ」
「もしかして、確認してる?」
「ええ」
「確認…?それって一体…」
遥輝が当然の疑問を投げかけると、遥香が真顔で答えをくれた。
「したかどうかの確認よ」
「うん、なんで?」
「気になるから?」
「いや気になるからって弟カップルのそういう事情に首突っ込まなくない!?」
「突っ込むわね」
「狂ってるじゃん」
遥輝は冷静にツッコミを入れるが、それは完全に無視されて。
「で、したの?」
「したよっ」
「いや捏造しないで__」
「そう。ならよかったわ」
「ふふっ♡ありがとね遥香ちゃん♡」
美晴は満面の笑みで遥香を抱きしめる。
「もう、仕方ない子ね」
「ままぁ〜♡」
「よしよし、ちゃんとせっせできてえらいわね〜」
「せっせやめい」
女子二人は抱き合ってイチャイチャし始めた。
しかも有る事無い事言ってるし!
(…これは非常によろしくないのでは?)
そう、このままでは遥香にとんでもない誤解をされてしまう。
そして美晴が家に帰って遥香と二人きりになった時、大変なことになるだろう。
(どうにかしないとな…)
遥輝は使命感に追われ、この状況の解決を図る。
「あの…昨夜は特に何もしてませんよね…?」
「え?沢山したよね?」
「まあ、しましたけど。ちょっと言い方的に誤解を生んでそうな…」
「え?なら一体何をしたのよ」
遥香は純粋な疑問を投げかけてくる。
でも遥輝は真実を話すのを躊躇った。
(いやキスしたなんて言いたくねぇ〜。流石にせっせしたとか誤解されるよりはマシだけど。でも家族にそんなこと知られたくねぇ〜)
このような理由から、遥輝は自分の口から全てを話せずにいた。
だがこのままでは誤解は深まるばかりで。
「だから、アレだよ?」
いや誤解を深めさせるような言い方をしている人間がいるせいで何もしなくても勝手に誤解を深められてしまう。
なんて厄介な状況なんだ…!
(もう諦めるしかないのか…?)
どれだけ打開策を探しても見つからない。
ならもう真実を説明するのが一番早い。考えるのめんどくさいし。
というわけで、遥輝は全てを遥香に話した。
「へ〜。そう。キスだけ、ね」
遥香の反応は案外あっさりしていて、何か考え込むような素振りを見せている。
「ま、今回はこれでいいとしましょうか。さぁ、朝ごはんにしましょうか。二人ともリビングにいらっしゃい」
「は〜い」
「…」
(今回はって何…?)
もしかして次回があるの?
そして次回はそれより進展させるために何か企んでんの!?
そんな憶測が脳内で飛び交うが、真実は分かるはずもなく。
「どうしたの?早く行こっ」
「あ、はい…」
考えても無駄だろう。
どうせ美晴も遥香も黙って色々進めるのだろう。
ならもうなるようになれという精神で行くしかない。
(頑張れ、未来の俺…!!)
心の中で拳を握り未来の自分を応援しながらリビングに向かい、そのまま席に着く。
「「「いただきます」」」
手を合わせた後、ご飯に手を伸ばした。
そしてそこで気づいたことがあった。
「なんか…赤くない?」
「赤飯だからね」
遥香になぜかジト目を向けられる。
「いやそんな当たり前のことを訊いてるんじゃなくて、なんで赤飯なのかって訊いてんの」
そう、遥輝はこれが言いたかったのだ。
遥香は確かに何かあるたびに赤飯を炊くタイプだが、でも朝食を使った時間的に遥輝と美晴に何があったかはわからなかったはず。
つまり遥香は…
「一人目の子供を身籠った記念かしら」
あ、全然予想外のこと考えてた。
せいぜい「二人ならもう致しているだろうからその記念にね」とかぐらいだと思ってた。
「いやすっ飛ばしすぎだろ!?気が早いにも程があるわ!?」
「じゃあ、いつかはそうなるかもってこと?♡」
「あ」
完全に失敗した。
美晴にニヤニヤとした笑みを向けられ、思わず目を逸らした。
「もう、照れなくていいよ?♡私はいつでもいいからね?♡」
「…」
「というわけで、まあ気が早くてもめでたいことには変わらないし、冷めないうちに食べましょう」
「うんっ!食べよ〜!」
「……」
もうどうにでもなれ!
あとは全て未来の自分に託す!
どうか未来の自分が完全に理性を保てるようになっていることを祈る…。




