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【コミカライズ】異世界帰りの元勇者ですが、デスゲームに巻き込まれました【本編完結】  作者: 空地 大乃
第六章 スキルホルダー編

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第八十五話 番外編②

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

 委員長の友だちである仲間 貴子はなんだかややっこしいルールのある呪いがあるという青い円盤を見たという。

 

 見て四日後に呪われて死ぬらしく、しかも既に三日目だという。そのわりに何とも呑気な気もするがとにかく海渡はその呪いの青い円盤を見てみることにした。


「ちなみに四時四四分四四秒にきっちり四倍速の四回目を見なきゃいけないんだよぉ」

「それよく成功できたね」


 貴子が得意げにかたるが、何ともハードルの高い呪いである。


「とりあえず見てみようか」


 時間が来る前に四回みないといけない以上、内容を確認して時間を逆算しておかないといけない。


「再生するね」

 

 そして海渡が再生ボタンを押してみた。一度目は倍速無しで試してみるが。


『貞椰子ちゃんっていくつ?』

『はい二十歳だっぺ』

『こういうの出るの初めて?』

『は、はい。凄くドキドキしているっぺ』

『そう。それじゃあ、先ず一枚目脱いでみようか。あ、スリーサイズもいっしょ――』


――ピッ。


 委員長が停止を押した。画面が消えた。


「あん、委員長駄目だよぉ。途中で止めたらだめぇ。もう、また最初から四回、やらないとぉ」


 貴子が委員長を注意した。妙に声が色っぽく聞こえてしまう。


「貴子ちゃ~ん、これ? 何なのかなぁ?」


 そんな貴子に佐藤が詰め寄った。笑顔が硬い。


「え? 呪いの青い円盤だよぉ?」

「呪いじゃなくてエロいの間違いじゃないのこれ……」


 委員長の後ろに隠れていた鈴木だが、いかがわしいものを見るような目を向けている。


「え? 違うよぉ。勘違いだよぉ勘違い。これは別にそういうのじゃないんだよ? ただのイメージビデオだしぃ」

「イメージビデオ?」

「そうそうギリな感じのね」

「ギリな感じって何!?」


 委員長が叫んだ。確かにギリな感じとは一体何なのか。


「貴子さん、その辺りのところもう少し詳しく」

「海渡くん何言ってるの!?」

「そうよ、あ、あんたどさくさにまぎれて何言ってるのよ!」


 佐藤と鈴木が海渡に批判的な発言をした。

 だが海渡は、う~ん、と一つ唸り。


「やっぱり俺も男だからそこは気になるところだよね」


 しかし海渡は存外欲望に素直だった。だが健康的な男子である証拠とも言えるだろう。


「何か期待しているところぉ申し訳ないのだけどね。これ、脱いだりとか男女のピーとかないからね。イメージだからね」

「貴子ちゃん、ピー! とかどさくさに紛れてあっさり言っちゃった!」

「え? ピーぐらいなんてことないよね? ピーがピーでピーなピーぐらい」


 貴子は中々の大人だった。


「それはそれとしてね、これはちょっと危ない感じの水着に着替えたり際どい感じの下着姿で出てきたりはするけど、その程度の健全なイメージビデオだよ?」

「どこが健全よ! 中止よ中止!」


 委員長がムキになった。


「ちょっと委員長も落ち着いて。いい? これは一人の女の子の命が掛かってるんだ。なら今は不毛な言い争いはやめて素直に見るべきだと思うんだよね」

「それ海渡くんが見たいだけだよね!」

「バレたか」

「何かいっそ清々しいわねあんた」


 ジト目を向けてくる委員長へ海渡はあっさり白状した。委員長の後ろで鈴木が呆れている。


「そ、それならこの青い円盤は私が見て確認します!」


 しかも遂には委員長が一人で見ると言い出した。むぅ、と真剣な目であり決意は固そうだ。


「う~ん、でもそれだと委員長が呪われちゃうしね」

「そうだよ! そんなの駄目よ委員長!」


 鈴木が佐藤に考え直すように言う。

 

「委員長が呪われるのは俺もいやかな」

「か、海渡くん……」

「あれれ~? 委員長ってもしかしてそうなの?」

「そう?」

「な、なんでもないよ! 貴子ちゃんも!」

「あ、なるほど。そういう感じなんだね」


 貴子は何か納得したようだが海渡にはよくわかっていない。


「とにかくこれ見ようか」

「か、海渡くんだからそれは!」

「あぁ、大丈夫大丈夫。見ると言っても最初の方をチラッとだけ見れば大丈夫だから」


「え?」

「それでいいの?」

「だ、だからもう見ない方がいいってばぁ」


 佐藤と貴子が目を丸くさせる。鈴木はまた怖がっていた。


「うん。少し惜しいけど最初だけでいいから」


 そしてそれなら、とまた青い円盤の中身を見ることになった。


「海渡くん。でもそのあまり先を見たら」


 またとめるかも、と目で訴えていた佐藤である。そして再び映像が再生され。


『貞椰子ちゃんっていくつ?』

『はい二十歳――』

「よっ!」

「だっぺ、て、え?」

「「「はい?」」」


 海渡はテレビ画面から貞椰子を引っ張り出した。


「え? ええぇええぇえ! なんだべかこれ~~~~!」


 そしてテレビから引きずり出された貞椰子が絶叫した。


「うそ! 噂では呪いの四日目に画面から飛び出るってはなしだったのに!」

「そうだったんだ」

「ひいぃいぃいぃぃいいいい!」

 

 どうやら噂通りのことを無理やり海渡はやってしまったようだ。そして鈴木は酷く怖がっている。


「あ、でも貞椰子さんって凄く綺麗」

「んだぁ、そったらこと恥ずかしいっぺぇ!」


 佐藤がハッとした顔で伝えると、テレビから無理矢理ひきずりだされた貞椰子が顔を両手で覆ってブンブンっと頭を振り回した。


 鈴木はやたらと怖がっているがどうみてもそんなに危ない存在には見えない。


「ところで貞椰子さん」

「な、なんだっぺぇ?」

「この円盤の中身を見た人を呪い殺すと聞いたけど本当?」

「な、何馬鹿なこと言ってるっぺぇ! そったら殺すなんて冗談でも言ったら駄目だぁ」


 何とも真面目な子のようだ。そして方言だ。見た目はかなりの美人なのだがギャップが凄い。


「えっと、つまり貴方は呪い殺したりしない?」

「しないっぺぇ、そったらことぉ!」


 貞椰子は腕をブンブンっと振り回して否定した。

 嘘にも思えない。


「怖いよ怖いよぉ」


 そして鈴木はひたすら怖がっていた。どうみても怖くないし見た目もかなりの美人さんなのだが、テレビから出てきたのが効いていそうだ。


「あの、貞椰子さんはもう亡くなられているのですか?」

「んだ、おらさ病さで死んじまっただ」

「そうだったんだ。でも元気そうで何よりだね」

「元気とは違うような」


 貴子は貞椰子の様子を見て元気だと判断したようだが、そもそももう死んでいる。


「でも、なんで呪いとかそんな物騒な話になってるだ?」

「う~ん、先ずこの円盤見た人のところに出たりした?」

「しただぁ! するに決まってるだぁ! 若気の至りでぇ過去にこったら恥ずかしいもん出てまっただ。おらの黒歴史、そったらもん今更掘り返されて見られるなんて恥ずかしくて死にたくなるっぺ! だからやめてけれってお願いするために出ただぁ! でもなんだかやたらと見る人増えたからぁ、適当に難しい条件つけたっぺぇ」

「それで納得した」


 呪いが発動する条件がやけにややっこしいと思ったが、そもそも見られたくなかったからだったのだ。


「でも、あんたなにもんだぁ? おら画面から無理やり引きずり出されたのなんて初めてだっぺぇ。でも、強引な男性は嫌いじゃないだ」

「な! ちょ、な、何言ってるんですか!」


 ポッと頬を赤らめる貞椰子に、佐藤は慌てた。


「あれ? それじゃあ私、呪われない?」

「あぁ、あっだらがそうだっぺ。こんな条件でも見る珍しい女の子がいたと思ったけど、あんただなぁ。もう大丈夫と思って油断してたから出れなかったっぺ。お願いだからやめてけろぉ忘れてけろぉ、この内容は墓場まで持っていってけろぉ!」


 貞椰子が貴子にすがりつく。本当に必死だ。よぽど見られたくないのだろう。


「えぇ~どうしようかなぁ?」

「そ、そんなぁ! 後生だからぁ」

「ちょ、貴子ちゃん可愛そうだよぁ」


 小悪魔的態度を取る貴子を見て悲しい顔を見せる貞椰子であり、佐藤はそんな貴子を注意した。


 もはや完全に立場が逆転している。


「なんて冗談ですよ~勿論誰にも話さないと思うけど、でもそれならそもそもこの円盤壊しちゃえば良くないかなぁ?」

「……その手があっただぁあぁああ!」


 貞椰子が目を見開いて叫んだ。中々の天然ぶりだ。


「あ、でもおらじゃあこの円盤壊せないだ」

「じゃあ海渡くん!」

「やっぱりそうなるか……でもその前に一回見てみたら駄目?」

「か・い・と、くぅ~ん」

「後生だからぁそれだけはそれだけはぁ」

「あんたばっかじゃないの! さっさと壊しなさいよ!」

「内容はちょっと過激なポーズとるぐらいで大したことないよぉ?」


 海渡の発言は幽霊を含めた多くの女子の不評を買った。ただ貴子の発言を聞いてやっぱり惜しいなと思ってしまう。


「やれやれ仕方ないな。じゃあ、はい!」


 海渡の手によって円盤が砕け散る。すると貞椰子が満たされた顔を見せ段々と透けてきた。


「お前、消えちゃうのか?」

「んだ、やっとこれでこの世の未練が無くなったっぺ。ありがとうだぁ、本当に本当に……」

「うん、これで私の記憶に残ってるだけになったね。ふふっ――」


 しかし、透明化がぴたりとやみ、また実体化していく。


「……あんだ、本当に言わないけ?」

「え? 基本的には言わないよ?」

「基本的ってなんだべぇ! そういえばさっきも多分とか何か怪しいっぺ!」

「えぇ~そんなことないってばぁ」


 そう言いながらも貴子はくすっと小悪魔的微笑を浮かべた。その結果――


「おら決めただ! この子が話したりしないよう、この子に憑くっぺ!」

「えぇえええぇえ!」


 こうして結局貞椰子は成仏しなかったわけだが――


「タピオカドリング美味しかっただ」

「そう、じゃ今度は一緒にあの店に――」

「何か結局貴子ちゃん、貞椰子さんを受け入れて仲良くやってるみたい」

「なら良かったんじゃない?」

「怖いよ怖いよぉ――」

 

 こうして鈴木は終始怖がりっぱなしであったが、結果的に呪いの問題は解決したのだった。






◇◆◇


 黒瀬 帝は完璧かつ完璧だっぺ。そらもうこれでもかってぐらい完璧だっぺ。

 

 どれぐらい完璧かと言えばだ、呪いの青い円盤のやりかたを最初の一回で完璧にやってのけるぐらい完璧だっぺ。こんないい男なら見られても悪い気はしないっぺぇ。


 そんな黒瀬きゅんはボウリングも完璧だっただ。マイボールもマイシューズも揃えてしまうぐらい完璧だっぺぇ。


 そんな黒瀬きゅんは今、クラスの皆とボウリングに来てたっぺぇ。


「鮫牙、私オレンジね」

「カフェオレで」

「バナナジュース」

「あ、おれ炭酸系で」

「お前らこんなところでまでパシらせるつもりかよ!」


 メンバーには鮫牙もいたっぺ。彼のパシリはある意味完璧だっぺぇ。


「……ナクルト」

「て、黒瀬までかよ!」


 黒瀬きゅんはのみもんを頼む時もさりげなくて完璧だぁ。


「鮫牙くん、私、ロイヤル紅茶ティーがいいけど、迷惑、かな?」

「…………お、おう。全く仕方ねぇな」


 そして貴子も一緒だったっぺ。全くこの子はあいかわらずだっぺ。


 そして完璧な黒瀬きゅんの出番が近づいてきたっぺ。その矢を射るような視線が海渡に向けられていたっぺ。許せないと思ったんだっぺ、今しかチャンスがないと思ったんだっぺ。


 黒瀬きゅんがコインを指で弾いただ、回転しながら黒瀬きゅんの手のひらにおちたっぺ。絵柄は――悪魔だっただ!


 黒瀬きゅんの目が見開かれっぺ。悪魔が出たら海渡を殺す、そう決めていたんだっぺ。


 黒瀬きゅんの作戦は完璧だっぺ。自分の番が来た時に玉がすっぽ抜けた風を装って海渡にぶつけるっぺ! 海渡は死ぬっぺ! そう今まさに黒瀬きゅんの完璧な計画が実行される時――


「黒瀬あぶないぞ!」

「――ッ!?」


 だども、そんな黒瀬きゅんに向けて鉄球が飛んできたっぺ! 黒瀬きゅんは飛び退いて玉を避けるっぺ。あぶなかったっぺぇ!


「キャッ! 黒瀬くんごめんなさい! 指がすっぽ抜けちゃって! 大丈夫だった? 本当ごめんなさい……」


 犯人は貴子だっただ。駆け寄ってきて黒瀬きゅんに謝罪したっぺ。


「……別に気にしてない。大丈夫」

「黒瀬くん、ありがとう。優しいんだね」

「…………」


 出たっぺ! 貴子のあざといスマイルっぺ! これに多くの男子が騙されるっぺ!


 結局、気を取り直してゲームは再開されたっぺ。そして黒瀬きゅんは気づくっぺ。コインが玉を避けた拍子に手からこぼれ落ちていたことに。


 そして床のコインが向いていたのは――天使だっぺ!

 

 これは迷いどころだっぺ! 最初に出たのは間違いなく悪魔だっぺ。でも落ちたコインは天使を向いていたっぺ! 迷う黒瀬きゅんだっぺ! そしてついに黒瀬きゅんの投げる番が来たっぺ!


「あ、黒瀬くんの番だね。頑張って。ファイト♪」

「…………」


 そして、貴子に笑顔で応援された後、結局黒瀬きゅんはゲームを続けたっぺ。


「おお。ストライク連発じゃん黒瀬すげーな」

「すっご~い黒瀬く~ん」


 こうして黒瀬きゅんのスコアはパーフェクトで終わったっぺ。妙に張り切っている気がしたっぺ。でも気をつけるっぺ! 貴子の笑顔は男を騙す悪魔の笑みだっぺ!

 

これにて第六章は終了となります第七章の更新再開は近日中に!


ここまでお読み頂き少しでも気に入ったいただけたならこの下の☆で評価を頂けると嬉しく思いますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[一言] ボウリングで鉄球を使う剛腕女子ってばwww
[一言] どうあがいても対決まで行かない何時もの黒瀬くんwww
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