第八十三話 神は捕まりゲームは終わりそしてスキルは残った
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「何はともあれ海渡様には色々と妹もお世話になっているようですし何かお礼を差し上げなければいけませんね」
「いや、別にいいよ」
「いえいえ、それでは大神界の女神として示しがつきません。そうですね……あ! そうだ! チート特典付きでどこかの異世界に転生や転移いたしましょうか?」
「いや、それは間に合っているからいいやぁ」
海渡はやんわりと断った。なにせ既に妹のサマヨによって一度異世界を救っている。
「そうですか……なら異世界なしでチートだけ上げましょうか?」
「お姉ちゃん、正直勇者様は既に規格外の強さだからそういうのいらないと思う」
サマヨがアテナに伝える。確かに海渡は無自覚だがその強さは下手なチートが霞むほどだ。
「確かにあのゴンベイを倒したぐらいですからね。普通、神闘力を有す神は同じ神闘力に目覚めていないと攻撃が通用しないのですが、人間でこれに目覚めているのは実に凄いです」
アテナが感心する。
「それってそんなに凄いの?」
「それはもう。異世界あたりに召喚されるイキリ勇者程度では神闘力1に達することもまれなのですよ?」
女神アテナがにっこり微笑みながら答えてくれるが、例えに出るのがイキリ勇者ではあまり参考にならない気もする海渡である。
「ちょっと興味が湧きました。海渡様の神闘力を見てみても?」
「見れるの?」
「はい。私の右の神眼は相手の神闘力を計測できますので」
「そうなんだ。別に構わないよ」
「ありがとうございます」
海渡が許可するとアテナがじっくりと海渡を見定め始める。
「こ、これは神闘力5000、50000、53万、まだ上がる、そ、そんな」
――ボンッ!
「キャッ!」
なんとアテナの右目が爆発した。手で目を押さえながら驚きに満ちた顔を見せる。
「驚きました。まさか私の神眼でも計測出来ないなんて」
「そんなことより目は大丈夫なの?」
海渡が心配して尋ねた。なにせ神眼が爆発したのだから何が驚きかと言えばそっちの方が驚きだ。
「うふふ、こんなこともあろうかと目は自動再生されるようにしてますので」
「それなら良かったけど、自動再生より爆発しないようにしたほうが良くないかな?」
海渡が言った。確かに計測の上限を超えるたびに目が爆発していては大変である。アテナもちょっぴり涙目であるし。
「それにしてもここまでお強いとは。そこに転がっているゴンベイでは神不足な筈です」
「神の間だとそうなるんだ」
恐らく力不足的な言い回しなのだろう。
「それにしても困りましたね。ここまでお強いと確かにチートなんていりませんよね。あ、そうだガブリエルをあげましょうか?」
「それ貰ったら絶対アテナ様が困るよね?」
勿論海渡も貰う気はないが、これまでの話を聞いている限りアテナはガブリエルにおんぶにだっこである。いなくなったら間違いなく自分の首をしめることになるだろう。
「う~んお礼かぁ……そういえばあのゴンベイはどうなるの?」
どうしてもお礼がしたい様子のアテナに海渡が尋ねる。
「あのまま大天界の裁判所に連れていきます。ほぼ間違いなく神の資格は剥奪、その後はフフフッ――」
アテナが黒い笑みを浮かべた。詳細はわからなかったがそれはそれは恐ろしい未来が待っているのだろう。
「ゴンベイが捕まった後はこれまでのスキルはどうなるのかな?」
「それは勿論消失します。流石に過ぎた力なので。それに関する記憶もある程度改変することになるでしょうね。できればやりたくない手なのですが特に一度改変した人がいた場合はあまり――その、サマヨは私にとって大事な妹でもあるのですが、改変の力もあまり上手くないので、以前やった方への重ねがけはできれば避けたいのです」
「うぅ、ご、ごめんなさい」
どうやらサマヨはアテナからすると女神としてまだまだ未熟なようである。神闘力5では色々至らない点もあるのかもしれない。
「なら前に改変された皆には俺の方でもごまかしたりしておくよ。ただお礼についてだけど、杉崎だけスキルを残しておくことは出来る?」
「え? 勿論可能ですがそれで宜しいのですか?」
「うん。流石に杉崎には俺のことも話す必要あるだろうし。どうせなら能力そのままのほうが理解しやすいかなって」
杉崎も今の力は気に入ってそうというのがある。無くなると悲しみそうだ。
「わかりました。そうだ、レベルアップも熟練度で上がるように調整致しますか?」
「ありがとう。ならそれで」
こうして杉崎の知らぬ間にスキルが熟練度制にかわったのだった。
「それにしてもゴンベイみたいな面倒な神もいるんだね」
「お恥ずかしながら神だからと言って全てが正しいわけではないのです。中には本妻がいながらも馬やら牛やらに変身して他の女に手を出したりする女性にだらしない神もいれば、自分の夫が無理やり行為に及んだ方の女に嫉妬して殺害を企てる女神なんかもいるのです」
「中々神様も自由だね」
アテナの話を聞く限り神だからと清廉潔白というわけでもなさそうだ。
「ただ、最近神の間で地球が注目され始めているとも聞きます。海渡様に話しても仕方のないことかもしれませんがどうかお気をつけください」
「うん、わかったよ」
「それでは、私はこの愚神を連れていきますので。あ、サマヨたまには遊びに来てね♪」
「私が気軽に遊びに行ける場所じゃないような……」
「大丈夫よ。それで文句を言うのがいたら例え神でも消すから」
「さらっと怖いこといってるなぁ」
アテナはやはり妹が大切で仕方ないようだ。そしてアテナは痛がり続けるゴンベイをつれて大天界へと戻っていった。
そんなアテナを見送りながら海渡が思うのはガブリールファイトという励ましである。
「ただいま」
「海渡! 無事だったんだな!」
「流石だな海渡。それで相手はどうなったんだ?」
女神サマヨを連れて戻った海渡は、当然虎島や杉崎から質問攻めを受けた。ただ、女性陣は景など十分そのままでも強い面々を除いてほぼいなかった。
何でも金剛寺も駆けつけてくれたようで、すぐにヘリを呼んでもらい戦う力を持たない面々は安全なところまで送り届けてもらったらしい。
「とりあえず危険はもうないよ。このゲームを配信していた神は女神様のお姉さんにつれていかれたから」
「え? お、お姉さん?」
「か、神? いま神といったのか?」
虎島や杉崎が話に食いついてくる。なので海渡はこれまでのことをその場にいる皆に説明してあげた。
「まさか、海渡が異世界に行ったことのある勇者で女神サマヨ先生が実際に女神でサマヨが本名だったとは……ちょっと待て頭がおいつかないぞ!」
杉崎が頭を抱えた。確かにいきなりこんな話されても脳の処理がおいつかないだろう。
「そんなに難しく考えることでもないよ。ザックリ言えばここにいる皆はなにか変わった力持っているってことだから」
「本当にザックリだな!」
杉崎が叫んだ。
「というか虎島は知っていた上、転生した景さんを助けにいったりとやっぱり異世界に行ってたんだな」
「悪いな。女神様の手前もあったし話すわけにはいかなかったんだ」
「私も自分のこともあったので」
「私は何故秘密にしているのか不思議だったのだがな」
「これで心置きなく消し炭に出来るわね!」
「いや、それはやめておけ」
「お腹減りましたぁ」
「キュッキュッ~」
景も含めた女性陣も話に加わってきた。スライムのミラクも楽しそうにしている。
「ミラクも本物のスライムだったなんてな。それで俺のこのスキルもそのままってことなのか?」
「う~ん、正確にはアテナ様が気を遣ってくれて熟練度制に変わったというのはあるけど」
「マジで!?」
それを聞いた杉崎はどことなく嬉しそうだった。
「ま、何はともあれ、これで杉崎も人外仲間ってことだな」
「……え?」
「こちらの世界へようこそ」
「え?」
虎島と景から迎え入れられる杉崎である。こうしてなし崩し的に皆と同類扱いされる杉崎であった――
これにてスキルホルダー編の本編は終了となります!
後はちょっとした話を挟んで次の章に入ることになると思います。




