第六十九話 デスゲームの終わり?
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「虎島、無事無事だったんだね」
「何だよその無事無事って。まぁ勿論元気だよ」
海渡がそう伝えると、虎島が微妙そうな顔を見せはしたが、すぐに元気そうに答えた。
「チッ」
「おま、今フォワード舌打ちしただろ!」
「しらな~い」
虎島が無事なのを見て残念がるフォワードにツッコむ虎島である。ちなみに景や異世界からやってきた女の子たちも無事だ。そもそもただ触手の生えた程度の相手に負けるわけもなく、女の子たちはちょっとベトベトしていただけだった。
虎島も蓋を開いてしまえば楽勝だったようだ。田中はほぼほぼ死んでたがキャラットに回復してもらった。
「キュッキュ~」
「おお! ミラクも元気だったか!」
元気そうなスライムのミラクにマックスが喜び抱きしめた。ぷにぷに感が実に気持ちよさそうだ。
「それで、黒幕はどうなったんだ?」
「殴ったから宇宙の果てまで飛んでいったと思う」
「相変わらず無茶苦茶だな海渡は……」
目を細めた後、虎島が嘆息した。異世界で散々鍛え巨人みたいな化物にも勝てるようになった虎島だが、それでも海渡に並べる気が全くしないようだ。
「あ、あの、虎ちゃん、それで言いたかったことって?」
ふと、景が虎島に近づきそんなことを尋ねた。そう確かに虎島はここに残った時、無事戦いが終わったら伝えることがあると言っていた。
虎島が真剣な顔を見せ、景の肩に手を乗せ、るまえに腕を引っ込めた。振り下ろされた大剣が地面に溝を作る。
「ま、マックスお前何してんだよ! 腕が斬れるところだっただろ!」
「無論、そのつもりだった」
「何でだよ!」
「フッ」
マックスが金色の髪を掻き上げ、凛々しい碧眼を虎島に向け言う。
「男の汚らわしい手などキラ様に近づけてたまるか!」
剣を虎島に突きつけながらマックスが叫ぶ。虎島が呻いた。
「だ、だったらこのまま話してやるよ!」
「それは駄目ですよ」
虎島がそう宣言するが何故かキャラットが制してきた。
「いや、だから、何でお前に止められないといけないんだよ……」
腕を組み、若干苛ついた顔で虎島がぼやく。だが、キャラットはフフンっと腕を組み胸を張った。腕を組んだおかげで大きな胸が強調される。僧侶服の上からでもわかるだけにその破壊力は絶大だなと海渡は思った。
「貴方は生きて帰った。つまりフラグは達成出来なかった。である以上、その約束は無効なのです」
「フラグが達成されたら俺は死ぬってことだろうが!」
「だから生きてるからその約束は無しってことよ。そんなこともわからないの?」
フォワードがビシッと指を突きつけて言う。あまりに無茶苦茶な理論に虎島は身悶えた。
「と、虎ちゃん」
「景! お前は聞いてくれるよな!」
「え~と、その、ただ、今じゃないかなって。みんな心配してるだろうし」
はは、と頬を掻きながら景が答えた。そうなのである。海渡が場所を突き止めサクッと来てしまったが、別の場所に残した杉崎や佐藤や鈴木などのこともある。あと、正直言ってこの戦いにはついてこれない、と置いてきた女神のことも。
こうして解決したのだから出来るだけ早く戻って教えてあげた方がいいだろう。
「うぅ、また言えなかった」
「どんまい」
「キュッ~」
ぽんっと海渡が虎島の肩を叩き、スライムのミラクは、んしょんしょっと虎島の体をよじ登り頭の上で満足気に体を光らせた。
「キュピ~ン♪」
「楽しそうだなミラク」
そして改めて海渡の魔法で皆の下へ戻った。
そしてデッドチャンネルの元締めが倒されたことを伝える。
「だけど、杉崎は良かったのか? 結局海渡が解決してしまったけど」
「いいんだよ。俺なんて皆からすれば普通の高校生なんだって気がついた。俺だけじゃ絶対解決できなかったしな」
杉崎がそう言って笑った。自虐などではなく、どちらかといえば開き直ったようでもある。
それから田中が買ってきた缶コーヒーなどを飲みながら会話を続ける。
「それに親父はデスゲームだけじゃなく他にも未知の出来事についても追っていたしな。今後俺はそっちを調べたりするさ」
「うん、杉ちゃんはきっとそっちの方がいいよ」
花咲も杉崎の考えには賛同してるようだった。
「それで、その出来事ってなんなんだ?」
「あぁ、何でもこことは違う異世界があるとか魔法が実在するとかそんなとこだ」
「ブっ!」
虎島がコーヒーを吹き出して田中の顔面に掛かった。
「ちょ、何で私に!」
「ゲホッゲホッ」
「お、おいおい虎島大丈夫か?」
むせる虎島を心配する杉崎である。一方田中は特に誰も気にしてない。
「い、いや、な、中々好奇心旺盛な父親だったんだな」
「はは、バカバカしいとも思えるけど、何か信憑性ありそうなことも書いてたからゆっくりやってみるよ」
「う、うぅ、あまり異世界のことを調べられるのはちょっと――」
そんな会話を聞いていた女神がヤキモキしていた。地球の人間が他の世界について知ることはあまり好ましくないようだ。海渡についても誰にも知られまいとわざわざ天界からやってきたほどだ。全く何の役にも立たず寧ろ邪魔なぐらいだったが。
「でも何か今回も私、海渡くんに助けられちゃったね」
「私も海渡様には助けられました!」
「あ、あの気になっていたんだけど田中ちゃん、その様というのは?」
「はい、だって海渡様は私にとっての王子様だし!」
「お、王子様!」
「はは、委員長もこれは中々大変かもね」
慌てる委員長を見ながらニヤける鈴木である。一方で海渡は意味がわかってないが。
「うぅ、勇者様こっちでも女の子が、うぅ……」
そして何故か女神も不安そうにしていた。
「あぁ、赤王様、今はどこに……」
「が、ガウゥ……」
そして金剛寺のつぶやきに困った顔を見せるアカオであった。こっちはこっちで中々面倒なことになったものである。
何はともあれ、これで地球で行われている一般的なデスゲームは壊滅させられたようだが――
◇◆◇
「どうやらここ最近、地球が面白いことになっているようだな」
「あんな辺鄙な世界にある星など、全く気にも止めてませんでしたがな」
「だが、少し見直す必要もあるかもな。どうやら一部の神も興味をもったようだし」
「今後次第では神々のゲームに加えることになるかもしれませんね」
「ふふ、場合によっては今回のゲームは楽しくなりそうね――」
とある真っ白の空間では、円卓を囲んだ神々しい存在達が、そんなことを語っていたという……
◇◆◇
言うまでもなく黒瀬 帝は完璧な人間だ。芸術は勿論、頭脳でも成績は常にトップ。顔もよく料理も得意だ。女の子にも密かなファンは多い。カラオケも得意でちょっとしたモノマネから宴会芸までそつなくこなすそれが黒瀬 帝という男である。
そんな彼は当然武道やスポーツにも精通し天才的な腕前も持ち合わせ達人さえも唸らせた。だが、その力が発揮できることは中々なかった。今回など結構長いことあれこれやっていたのにクッキングにもスポーツにも出番がなかった。
許せないと思った生かしてはおけないと思った。
だからいつでも黒瀬は海渡を殺すタイミングを図っている。そしてその日は来た。
今日は体育の授業で野球が行われることとなった。野球は黒瀬の得意とするスポーツの一つだ。
そして黒瀬はピッチャーだった。バッターボックスには海渡が立っていた。チャンスだと思った。ここしかないと思った。
黒瀬の投げる球はジャイロ回転が特徴であり、しかも球速は余裕で100マイルを超える。つまりこの速度のジャイロなボールを海渡の頭に投げれば海渡は死ぬ。
そう思い黒瀬がピッチングフォームに入る!
「あ、しまった」
だが黒瀬は思い出したようにコイントスをした。クルクルと回転するコインを待ち構える黒瀬。
「ボーク! 海渡は一塁に」
「おいおい何やってんだよ黒瀬ー!」
「ルール知らないのかよ」
「ピッチャー交代」
「……」
結局黒瀬はすぐにマウンドを降ろされた。だが頑張れ黒瀬、落ちてきたコインは天使だったがきっとどこかで出番はあるさ。
これにてデッドチャンネル編は終了です。そして地球が基本のデッドゲームも基本的には終わりです。
そして次からは違った形のデスゲームが?
というわけで次の章へ続きますが、次の更新までは少しお時間をいただくかもしれません。
何か緊急事態宣言もあるそうで大変ですよね。自分もエリアです(汗)
しかし頑張って出来るだけ早くに更新できればと思います。
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