番外編⑧ その五 海渡は杉崎に確認する
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「ねぇ杉崎。ちょっと聞きたいことあるんだけど」
放課後、海渡が教室に残っていた杉崎に声をかけると、近くでカバンを詰めていた虎島も手を止めてこちらを見た。
「うん? 何だよ改まって」
「えっと。最近――変わったこと、無かったかなって」
「な! か、変わったことって、そ、それは……」
途端に狼狽する杉崎。虎島は首を傾げ、何が始まるのかと様子見モードである。
「えっと、もしかしてもう知ってる?」
「まぁ、なんとなくだけどね」
わざわざ海渡が確認してくる時点で、何かを察している――杉崎もそこに思い至ったらしい。
「そうか。だったら隠しても仕方ないよな。実は……親父が帰ってきたんだ」
「え! 杉ちゃんのパパが!」
反応したのは花咲。久々の登場でテンションが若干高い。
「余計な事を言ってんじゃないわよ! ぶっ飛ばすわよ!」
「え! な、なんだよ俺、何か怒らすことしたか?」
「……あ、ごめんなさい、つい」
テヘッと舌を出す花咲。いつもの流れである。
「というか杉崎の親父さん、確かデッドチャンネルの運営を追ってて、その……」
そこまで言って虎島が言い淀む。亡くなった経緯に触れるのをためらったのだろう。
「気にしなくて大丈夫。なんなら、その親父が転生して戻ってきたまであるから」
「マジか! そんなことありえ――いや、ここじゃ十分ありえるな」
海渡の顔、そして虎島の視線に気がつき手を振る景を確認し、虎島は自然に納得した。このクラスに常識は通用しない。
「それにしても海渡。どうして突然、親父のことを?」
「あぁ、そうだった。親父さん、菜乃華たちと一緒に“こっち”に向かってる」
「本気かよ! どうしてそうなった!」
杉崎が両手で頭を抱える。想定外にもほどがある。
「そもそも、どうして杉崎の親父さんが海渡の妹と一緒に?」
「なになに~? 何の話~?」
話に加わってきたのは鈴木と委員長。話が広がる未来を感じ取り、杉崎は額を押さえたが、この場でごまかしても後が面倒だと判断し、これまでの経緯を手短に説明した。
「転生して子どもになって戻ってくるって、漫画みたいな話よね」
「そんなことが現実に起きるんだね」
鈴木と委員長は驚きつつも、カードを具現化して戦えたり、和の料理人風の魔法少女になれたりする自分たちを思い出し、最終的に頷いた。今さらである。
「で、杉崎のお父さんは田中に用事があるみたいなんだよ」
「田中に? 一体何の用事が?」
「親父が、田中に? あッ!」
小首を傾げる虎島の横で、杉崎の表情が強ばる。思い当たる節があった。
「しまった……“あそこ”には真弓ちゃんがいたんだった。だからかぁ~」
杉崎が机に突っ伏して、低い声でうめいた。
「もしかして、お父さん、まだデスゲームのことを?」
「あぁ。親父は今もデッドチャンネルを追ってる。俺から説明はしたけど、信じてもらえなくてさ。しかも“あの”デッド博士に息子がいたっぽいんだ。余計にややこしくなってる」
苦笑まじりに吐露する杉崎。海渡としても「やっぱり面倒なことになってるな」という感想しか出てこない。
「とにかく、先ずは田中をどうにかしよう」
海渡の提案に、一同がうなずく。そのまま外に向かうと、校門前では当の田中がご機嫌に鼻歌まじりで掃除中――この平和感が逆に腹立たしい。
「田中、ちょっといい?」
「おや? 私になにかご用で?」
のんきな笑顔の田中に向け、全員がそろって歩を進めた――。
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