番外編⑧ その三 親父をガッカリさせない為に
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死んだと思っていた父親が生きて帰ってきたと思えば、なんとレベルが53だった。
何を言っているのかわからないかもしれないが、どうやら本当らしい。仕方がない。とにかく杉崎の父である泰斗のレベルは53なのであった。
「こうして親父は平和になった日本で、レベル53であることを誇りに生きていくことになるのだった」
「なんで急に締めたのだ!?」
杉崎が窓の外を見ながら遠い目で語るのを見て、泰斗が激しくツッコんだ。
「言っておくがパパの物語はまだ終わってないぞ! もっともっと続くのだ!」
「今でも色々と手一杯なのに勘弁してくれよ」
いい加減うんざりだと言わんばかりの顔で杉崎が答えた。
「とにかく、パパにはデスゲームを終わらせる義務があるのだ。デッド博士を駆逐してやる!」
「いやだから――」
もうとっくに倒されてると再度伝えようと思った杉崎だが、思いとどまった。
よく考えてみれば泰斗はデッド博士へのこだわりが強い。殺されたのだから恨むのは当然だが、それ以上の執念も感じられる。
そんな泰斗に真実を伝えることが本当に正しいことなのか――もしかしたらこのまま泰斗の好きなようにさせたほうが良いのかもしれない。
なにより、折角の生きがいを失えば、もしかしたら抜け殻のようになって真っ白に燃え尽きてしまうかもしれない。そんな嫌な予感がして、杉崎は考え直したのだ。
「わかったよ親父。確かに俺も親父が心配だったのもある」
「やっぱりそうだったか。だが安心していいぞ。今のパパはナンディ、テヤンディ、ミンナディの魔法も使いこなせるのだから」
「どんな魔法なんだよそれ」
正直、聞いてもさっぱりだが、それなりに強いのは確かなのだろう。
(……適当なデスゲームでも探して叩かせるか)
杉崎はそう考え、ネットで検索をかけてみることにした。デッド博士がいなくなりデッドチャンネルもなくなったが、まだまだ世の中にはデスゲームが多い。
ちょっと検索をかければ小学生でも見つけられるぐらいだ。
『なにそれ怖い! そんな簡単に調べて見つかるとか世紀末がすぎるだろう!』
そんなツッコミもどこからともなく聞こえてきたが、事実なのだから仕方ない。
「何をしているのだ息子よ」
「あぁ、親父の為に情報を見つけようと思ってさ」
「ははは。息子よ、確かにパパはお前にいろいろと教えてきたが、パパでも苦労したのだから、そう簡単には――」
「マジかよ。デッド博士って息子がいたのかよ」
「嘘! そんなのパパ知らない!」
泰斗が目玉が飛び出さんばかりに驚いた。どうやらデッド博士に息子がいたことは、泰斗でも知らなかった新事実のようだ。
「とりあえず、これを調べていくとしてさ。ただ、詳しくとなるとちょっと時間かかりそうだから少し時間をくれよ」
「う~ん。本当はパパが異世界の力であっさり見つけて片付けるつもりだったのに……」
「急がば回れだぜ親父。とはいえ、今の親父の姿で過ごすとなると、いろいろと考えないといけないな。う~ん」
そして杉崎は泰斗の今後について考えたのだが――
◆◇◆
「え~皆さんには、これから転校生を出迎えてもらえます」
「先生。デスゲームみたいに言うの、流行ってるんですか?」
「あらあら、そんなことはないですよ~」
生徒からのツッコミじみた問いかけに、夢魅 教子は笑顔で答えた。確かにデスゲームじみた言い方だったが、これも親友である矢田 郁代の影響が大きいのかもしれない。
とはいえ、転校生が来たのは事実なので、教子がクラスに一人の生徒を招き入れたのだが――
「今日からお世話になる杉崎 泰斗です! 趣味はデスゲーム運営を追うことだ! よろしく!」
「って! あんたがこっちに来るんか~い!」
『ツッコむなぁ』
こうしてシンキチのツッコミが届く中、泰斗は中学生として過ごしていくことになったのだった――
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