番外編⑧ その二 現実を受け入れられない父親
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「……はは、あははははははッ」
杉崎から衝撃の事実を聞かされた泰斗は、額を抱えたまま大口を開けて哄笑した。漫画でしか見ないようなポーズが現実化された瞬間である。
「お、おい親父、どうしたんだよ」
「いいんだ息子よ。その気持ち、パパは痛いほど分かっている」
額を押さえた姿勢のまま右手をビシッと突き出す泰斗。そのドヤ演説モーションに?マークを浮かべる杉崎。
「お前はパパを慮ってそんなことを言っているのだろう? 折角転生までして戻ってきたのに、危険な目に遭ってほしくないと!」
「えっと――」
“分かった顔”で語り出す泰斗を前に、杉崎は正直に戸惑う。なにせ嘘などついていない。泰斗が追っていたデスゲーム運営は事実、海渡たちの手で壊滅済みなのだ。
――もっとも、その余波で神々全面協賛のデスゲームやら、現在進行形で世界の命運ギャンブルが開幕しかけているが、それを説明すれば話は何十倍もややこしくなる。なので黙っておく。うん、黙秘は正義。
「息子よ、安心しろ。パパは強い。さっき神妙に語ってしまったが、実は自信満々だ。もうDr.デッドなどにやられはしないさ!」
「そんなに強くなったのか……?」
話題を逸らす方向で質問を投げる杉崎。はぐらかし、有耶無耶にしようという作戦である。
「勿論だ。聞いて驚け――私のレベルは53だ!」
ドーン! と効果音が聞こえそうなドヤ顔。だが杉崎の脳内では“53”という数字がピンと来ず、ピコーンとも来ず、ただフリーズ。
これが53万なら多少は驚きもしたかも知れないが、周囲には既に規格外の友人が山ほどいる。ぶっちゃけ自分も異能解放済み。ゲーマー的感覚では「せめてカンストしてから帰国してください」案件である。
「ハッハッハ、驚きすぎて声も出ないか?」
「いや、正直よく分からないんだよ。その数値、どれくらい強いんだ?」
「フフッ、驚くなよ? 異世界を蹂躙していた魔王四天王――その平均レベルが50だ!」
「お、おう……」
どうだ!と言わんばかりのドヤ顔。杉崎は乾いた相槌しか打てない。
「一応聞くけど、魔王本体のレベルは?」
「60だ!」
「親父より高ぇじゃねぇか!」
思わずツッコミ炸裂。まさかあれだけ鼻高々で語っておいて魔王のレベルの方が泰斗より上だとは。
「ふふん、しかもそれは第一形態の話だ。魔王は変身を――十二回する!」
「多すぎだろ!」
百でも千でもなく十二という、微妙にリアリティを伴う面倒な多さ。もしこの世界がゲームならレビュー欄が炎上必至だ。
「ちなみに最終形態の魔王のレベルは80だ」
「うわぁ……」
十二段変身して上昇する数値がたったの20。ただの引き伸ばしにしか感じられず、杉崎の中では『この異世界を作ったのは誰だ~~!』案件である。
「でも、親父の方がレベル低いのによく倒せたな」
「ふふん。仲間の存在が大きかったのだ。特に遊び人から転職して大賢者になったポロリ・モアールのレベルは102!」
「親父より高ぇじゃねぇかよ!」
二度目の絶叫。しかも名前のインパクトが強すぎる。
『というか元遊び人でポロリ・モアールって名前が酷いな! それで強いってギャップありすぎでしょう!』
『ようやくツッコめたかぁ~』
ツッコミ担当のシンキチは今日も元気そうで何よりなのであった――
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