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【コミカライズ】異世界帰りの元勇者ですが、デスゲームに巻き込まれました【本編完結】  作者: 空地 大乃
第九章 様々なデスゲーム編

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番外編⑧ その一 戻ってきたら終わってた男

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

 とある日曜日――杉崎は自宅のパソコンで配信を見たり、ゲームをしたり、ついでにデスゲームの情報を(あさ)ったりして、のんびり過ごしていた。


「ふぁ~、そろそろ昼かぁ」


 時刻を確認しながら欠伸(あくび)を漏らす杉崎。昼飯はどうしようかと考えていると、部屋のチャイムが鳴った。


「なんだ? 楽ゾンの配達かな?」


 楽ゾンは世界的にも有名なネット通販サイトだ。ここに頼めばゲーム、食べ物、パソコン、初心者用デスゲームセット、猿でも始められるデスゲームなどの関連書籍、委員長のデスカレー(コラボ企画)など、大概の物は手に入るので重宝している。


『いやいや後半におかしなの一杯混じってるから! 特に最後は世界を破滅しかねない代物だよ! 誰だよこんなコラボ申し込んだの!』


 妙なツッコミがポップアップで表示されたが、杉崎は華麗にスルーして玄関のドアを開けた。すると、そこには中学生ぐらいの男子が笑顔で立っていた。


「……えっと、誰?」


 配達員が来たと思い込んでいた杉崎は、突然の来訪者に面食らう。一方の少年は「ヨッ」と軽く右手を上げて――。


「いやぁ、お前は変わらないなぁ。元気な姿を見られてパパは嬉しいぞ」

「……あ、そういうの間に合ってるんで」


 真顔でドアを閉める杉崎。だが次の瞬間、鬼のような連打でチャイムが鳴り響いた。


「おい! いいかげんにしろよ。子どもの悪戯でもやっていいことと悪いことがあるんだからな」

「本当なんだ息子よ! 私はお前のパパなんだよ。名前は杉崎(すぎさき) 泰斗(たいと)! 妻は病気で他界、俺はジャーナリストをやっていた頃、デスゲームを調査中に組織に気づかれて殺された。だけどそのあと異世界転生したんだ!」

「……おい! お前なんで親父のことを知ってるんだ!」

「だから本人なんだって!」


 必死に訴える少年に杉崎は眉を(ひそ)めた。


「……お前、それを証明できるのか?」

「初恋は幼稚園の頃。クラスメートのゆいちゃんだったな。おねしょ連続記録保持者で十日連続で――」

「待て待て待て待て!」


 杉崎は慌てて少年の口を塞ぎ、周囲を確認してから部屋へ引きずり込む。


「自分の父親を部屋に連れ込むなんて、お前も頼もしくなったものだな」

「誤解を招くようなこと言うなよ! てか本当に親父なのかよ……」


 ため息混じりに呟く杉崎。改めて見ても、中学生にしか見えない。だが冷静に考えれば、海渡も異世界帰りだし、虎島は異世界の幼馴染を連れ戻し、その星彩(きらら) (けい)も転生者だ。


「いや、今さら信じないほうが不自然か」

「うん? どうした息子よ」

「いや、まぁ……信じるよ」

「おお! これが親子の絆ってやつか!」


 どちらかというと“周囲の影響力”が大きい、と苦笑する杉崎である。


「それで、異世界で親父は何をしてたんだ?」

「うむ。信じてもらえないかもしれんが――世界を救うため、魔王討伐にな」

「へぇ、すごいじゃん」

「……お前、信じてないだろう?」

「いや、ぜんぜん信じてるよ。マジで、ありえるし」


 杉崎が真顔で答えると、泰斗は拍子抜けした表情を浮かべた。


「それで、異世界転生していた親父がどうして戻ってこられたんだ?」

「魔王を倒したら、神様に『もう帰っていいよ』って言われてな」

「あっさりだなおい!」


 適当すぎる神もいたもんだ、と呆れつつ、何故かサマヨの顔が浮かび上がり妙に納得してしまう杉崎だった。


「息子よ――お前には苦労をかけたな」

「何だよ、急に真顔になって」

「本気でそう思っているんだ。お前一人を残して()ったことを後悔していた。だが――俺はまだ諦めきれていない」


 神妙な面持ちで語る泰斗に、杉崎は胸騒ぎを覚える。


「諦めてないって、何を?」

「デスゲームのことだ。俺はあと一歩というところまで黒幕に迫っていた。追っていたのはデッド博士というマッドサイエンティスト――運営の中でもトップクラスにヤバい奴だ。異世界で得た力で、今度こそ追い詰めようと思う!」

「あー……ごめん。その組織、もうとっくに潰れてるわ」

「そうか、潰れてるか。だが分かって――って、え? 今なんて?」

「だから、とっくに壊滅してる。俺の親友達がな」

「は? はぁああぁああああぁああッ!?」


 こうして無事(?)帰還を果たした“父”の絶叫が、平和な日曜の昼下がりにこだましたのであった――。

発売中の月刊コミックREX8月号にて本作のコミカライズ版の最新第37話が掲載中です!

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