番外編⑤ その二十六 天羅大闘制覇の終わり
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「ごめん無理だったわ」
「無理だったって突然消えたかと思えばどこに言ってたんだよ海渡」
戻るなり謝罪してきた海渡に杉戸が聞いた。異世界帰りの面々が狩人を連れて立ち去った後、海渡もまたその場から消え失せたのだ。
心配した杉戸だったが結局海渡は5分足らずで戻ってきた。故に心配するほどでもなかったが忽然と姿を消したのも事実なので気になって聞いているようである。
「ちょっとセカイを終わらす存在に話をしにいってみたけどまだ思考中みたいなんだよね」
「海渡はサラッととんでもないことを言っているの理解しているか?」
虎島が呆れ顔でツッコんだ。だが海渡としてはそこまでとんでもないことだとは思っていない。
「海渡、あんたねぇ……それで相手を怒らせたらどうするつもりだったのよ?」
「逆にその程度で怒るぐらいの相手ならよかったんだけどね」
鈴木が呆れ顔で述べるが、海渡としてはそれぐらい短気な相手の方が対応が楽だったのである。相手の強さはその言動からもある程度察せられる。ちょっと顔出した程度でキレるような相手なら実力もそれなりでしかない。
「はぁ海渡様流石です。セカイの為に危険を承知で敵地に飛び込むなんて。もう大好き!」
目をハートにして飛び込んできたサマヨを海渡は軽く躱した。勢いのままずっこけて鼻をぶつけるサマヨが何か怒鳴っていたが海渡は無視した。なおそんなサマヨの姿も可愛いと何人かの生徒の心を鷲掴みにしたがサマヨの目には海渡しか見えていない。
「――お前の行動には肝を冷やされる。それでこれからどうするつもりだ?」
黒瀬が海渡に聞いた。じっと海渡を見据えその動向を探っているようでもある。
「とりあえずは待つしかないかな。少なくとも現状はセカイを終わらせるという決断までは至ってないようだからね」
「なんだそれは。つまり奴らが嘘をついていたということか?」
「やっぱり男ってクソね!」
「そうですわね。もしかしたらあの立川ちゃんも騙されている可能性もありますわ」
海渡の話を聞きマックスが眉間に皺を寄せ、フォワードは怒りを顕にしていた。キャラットなどは立川の心配までしている。やはり三人にとって男は悪、しかし女性は別、なのだろう。
「彼らが嘘を言ってるようには思えなかったけど」
「景の話に同意だな。あいつらの言葉にはどこか緊迫したものを感じた。それに嘘をついてまで狩人を連れて行く理由がない」
「キュ~」
景の言葉に同調する虎島。その頭の上ではミラクがポンポンっと弾んでいた。その姿に金剛寺が目をキラキラさせている。
「スライムサ可愛いですの! セカイが終わるならその前に欲しいですわ!」
「あ、まだロボットだと思ってたんだ」
金剛寺の発言に苦笑する鈴木である。彼女の中ではまだミラクはAI搭載のロボットなのである。
「主君がそう申すのであれば間違いないのだろうが虎島の発言には納得いかん!」
「そうよ虎島のクセに!」
「俺も言ってること一緒だろうが!」
「キララちゃんの発言をパクっていい気になって、そんなにもがれたいのかしら?」
「もぐって何を!?」
キャラットの過激な発言にたじろぐ虎島であった。
「彼らが嘘をついているわけじゃないよ。彼らにも根拠があることだろうし何れそういう決断に至るんだと思う。ただ今はまだ決まってないだけでね」
「中々に複雑な話なんですね」
委員長も目を点にして聞いていた。話が大きすぎてどこか現実感がないのかもしれない。
「ま、とにかくその日が来るまではこれまで通り過ごそうよ」
「呑気だな海渡は。でも海渡がそう言うとなんか安心できるな」
「とんでもない状況の筈なのにな」
「フッ」
「そこが海渡様のいいところなのです!」
「よっしゃ! 話がまとまったなら天羅大闘制覇も無事閉会したしこのまま呑みに行くぞ!」
「いや、高校生を飲酒に誘うなよ……」
海渡の発言によって皆が笑った。そして何故か呑みに誘いだす矢田と冷静にツッコミを入れる鮫牙であった。
「ってツッコミ取られた! というかこの回で僕一つもツッコんでなくない!」
『ツッコまないなぁ』
最終的に自分で自分にツッコミを入れるシンキチであった。こうしてこの後は全員で焼肉店に行き天羅大闘制覇を締めくくった一行であった――
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