番外編⑤ その二十五 ソレに会いに行ってみた
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「しかしセカイを終わらせる存在とか随分と話が大きくなったな」
「何か普通に話しているけどヤバいことだよねこれって?」
杉崎と鈴木が若干焦った様子で話していた。とは言え実際のことの重大さと比べればまだまだ余裕がありそうである。
「奴らの言ったことは事実だろう。わざわざここまで来てあの男を連れ去っていたんだ。嘘を言う理由もない」
淡々と黒瀬が語った。大魔王の黒瀬はセカイを終わらせる存在についても知っていた。故に彼の言うことに間違いはなさそうである。
「海渡これからどうするんだ? まさかあの狩人って男に任せるってわけにはいかないだろうな?」
「そうだね。だからちょっと挨拶しに言ってみるよ」
「へ? 海渡様挨拶とは一体、て! もういない!?」
不思議そうに問いかけるサマヨであったが海渡の姿は消えていたのだった――
◇◆◇
「……何だ貴様?」
「伊勢 海渡。ただの普通の高校生さ」
海渡が移動した先には執事服の男が一人立っていた。姿は人間に近いが頭には湾曲した角が二本生えている。
「ちょっとセカイを終わらせる存在というのに興味があってね。挨拶しに来たんだけどいる?」
「不躾な奴だ。消えろ」
刹那――海渡の上半身と下半身が離れ離れになった。だが執事服の男は不快そうに眉根を寄せる。
「これを避けるか」
「いきなり攻撃とは物騒だね」
海渡は男の後ろに立っていた。一方で切り裂かれた筈の海渡は丸太に変化していた。
「あれは何の茶番だ?」
「いやそれっぽいかなって」
丸太を指さした男の質問に軽い口調で答えた。海渡としては代わり身の術を再現したつもりなのである。
「俺としては普通に話ができると嬉しいんだけど」
「約束もなく突然やってきた不審者が何を世迷い言を」
「それもそうだったね。じゃあこれどうぞ」
言って海渡が手土産を差し出した。温泉まんじゅうだった。
「……こんなもので私がつれると思っているのか?」
「美味しいよ?」
「――おかしな奴だ」
結局執事服の男は奥に引っ込みティーセットを準備して戻ってきた。
「意外と律儀だね」
「少し興味を持っただけだ」
「見た目といいわりと人間っぽいよね」
「なるほど貴様にはそうみえるわけだな」
「あぁ~」
男の返しに海渡はなるほどと思った。どうやら見るものによって姿が変わるタイプらしい。
「人間、その中でも貴様ははaxlajllajrlajla2575424faaseri7854asara1221番目のセカイの人間か」
「表現が独特だねぇ」
とは言え仕方がないセカイの数はそれだけ膨大なのである。
「ふむ――中々美味いな」
「気に入ってもらえてなにより」
まんじゅうを頬張りながら海渡が微笑んだ。だが海渡の意図を完全に理解してるのかどうかもわからない。
「貴様は我が主と話がしたいのだったな」
「あぁやっぱりそういう関係なんだね」
執事服なのもあいまってなんとなくそんな気はしていた海渡である。
「だがそれは無駄なことだ。主は現在思考の海に浸っている。この間は私でも近づくことは出来ない」
「それでも近づいたらどうなるの?」
「問答無用で消される」
「それは怖いね」
男の答えを聞き海渡は苦笑した。
「今考えているのってセカイを終わらせるかどうかってこと?」
「主の大いなるご意思は私には到底計り知れない物――セカイをどうするかについてもまた主のご意向次第だ」
「なるほどね」
男ははっきりとは答えなかったが否定もしなかった。それが一つの答えでもありそうだが海渡は少し考えた後にスッと立ち上がり。
「よくわかったよ。急に来てごめんね。ここで失礼するよ」
「いやに素直だな」
「まぁまだ何をするかも決めてない相手に手を出すわけにはいかないからね。意向とやらが決まった頃にまた来たいけど、そうだせっかくだから連絡先交換しない?」
「断る」
「やっぱり駄目か~」
あちゃ~と海渡は天を仰いだ。
「ま、仕方ないね。それじゃあ次はまた手土産でも持参してくるよ」
そう言って海渡が手をヒラヒラさせてその場から消え失せた。残された男は海渡を見送った後、やれやれと零したが、直後視線がソレに向けられる。
「――この反応、まさか主があの人間に関心を――まさかそんなことが……」
男は一瞬目を見開くもすぐに表情を戻した。だが口元だけはわずかに緩んでいた――
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